余命半年の君と、一冊分の恋をした


僕の行きたいところに行こうと言われ、彼女を連れてきたのは、彼女と放課後に会った本屋。

彼女が行きたいところについて行くつもりだったというのは、胸の内に閉まっておこう。


「木目君のおすすめは?」
「んー……。この辺りかな」


僕が指を指したのは、僕もお世話になっている出版社本がずらりと並んだ棚。

こんな僕でも、一応後輩と呼べる作家はいるわけで、先輩作家の本も沢山あるから、僕は基本この棚の前から動かない。

僕が勧めると彼女は少し屈み、本のタイトルを順番に見ていく。

その横顔を、何故か撮りたくなった。


「今、撮った?」
「……ごめん。なんか、撮りたくなって」
「素直か!……でも、いいよ。寧ろ、いっぱい撮って欲しい!」


そう言いながら本を眺めるも、結局買うものが決まらなかった彼女は、少し不貞腐れながら店を出た。


「僕の家から持っていくよ。病院に。結構あるし」
「ほんと!?それで検査も頑張れそうだっ」


検査。その言葉を聞くと、どうしても現実味を帯びてしまう。

彼女は病人で、でも何故かこんなに明るくて。明るくしてるだけかもしれない。

彼女の元からの性格を知らないから。本当はもっと、怖がりだったりするかもしれないのに。


「君は体が冷えるから、冷たいものはやめたほうがいいと思うけど」
「えー、いいじゃん。ちょっとだけ!」
「……じゃあ、僕のひとくちあげるから、それで我慢して」
「えへへ。ありがとっ!」


その笑顔を見た瞬間、僕は不覚にも可愛いと思ってしまった。

この笑顔を失いたくない。ずっと見ていたい。

そんな気持ちになる気持ちの正体が分からないほど、僕は鈍感でもない。


『好きになっちゃダメだからね』


その言葉の意味を、今ようやく理解した。