「桜慈くん……!?」
桜慈は勇助に一瞬だけ微笑みかけると、再び簗に鋭い視線を向けた。
「支部予選会の件、全て聞かせて頂きました。
透明性を保ちつつ実力で決めるべき出場者選考で、こんな罰ゲームじみた取引が行われていたなんて。
取引に乗った姫嶋も悪いですが、それに乗らざるを得ない状況を作り出した先輩方のほうが遥かに悪質だ」
「待って、"王子きゅん"!」
「……伊山先輩?」
突如、もう一人いた面長眼鏡の陸上部員が、パイプ椅子から勢いよく立ち上がった。
おうじきゅん……?
勇助がぽかんとしたのも束の間、伊山と呼ばれた陸上部員が簗を指差し、血相を変えて捲し立てた。
「先輩方って言ってたけど! 全てはコイツが一人でやった事だから!!
ボクは止めたのに部長権限だなんだって言って」
「あぁ?! 元はといえば姫嶋が休みの日に選考終わらせちまおーぜって提案したのはテメーだろ、伊山!
王子に告白させんのだって、テメーが言い出したんだろが!! 絶対成功しないしフラれたって噂流しまくってやろうって」
「そんな事言ってないもん!」
目の前で仲間割れが始まってしまい、ますます状況についていけなくなると、
「いい加減にしろ!!」
桜慈が怒声を張り上げた。
しん、と静まり返った部室に、びりびりと振動が走る。
「先輩方には大変失望しました。
この件は理事長に報告いたします。
……支部予選会への出場取消だけで済むなら、まだ甘いほうでしょうね」
冷たく言い放った桜慈は、伊山に蔑むような視線を向けて最後にこう付け加えた。
「それから……副部長の伊山先輩。
先日貴方から頂いた告白。お受けしなくて良かったと、今日あらためて思いました」
ひたすら呆然と状況を見守っていた勇助と初に、桜慈が「行こう」と促し部室を出ようとした瞬間、簗から"待った"が掛かった。
「姫嶋……と、鈴木なんとか。
お前ら本当に付き合う事になったんだよな?
だったら言いふらしても問題ないし、さぞかし相思相愛なんだろうな?」
今思えば、あれはただの売り言葉だったのだろう。
無視してしまえば良かったのに、勇助はそれを言い値で買い上げた。
「はい! 言いふらして頂いて一向に構いません!!
僕達、とってもラブラブですので!!」
絶句する初の腕をぎゅっと抱き寄せ、そのまま鼻息荒く引っ張りながら部室を出た。
十歩ほど進んだところで立ち止まった勇助は、ふう、と大きく息を吐いた。
「途中で桜慈くんが来てくれたおかげで助かりましたね。
桜慈くん、本当にありがとうございま……」
礼を述べながら視線を上げた先に映り込んだのは、額に手を当てて思い悩む桜慈の姿だった。
「桜慈くん、大丈夫? どこか具合が悪いんですか??」
「いや、具合が悪いわけじゃなくて……。
……勇助君、俺が陸上部の奴らにあんな啖呵を切ったのは、君が姫嶋とそうならなくてもいいようにと思っての事だったのに……」
「はえっ?! はじめさんと、そうならなくてもって?」
「おい勇助。オレでもプリンスの言わんとすることは理解できたぞ」
頬を赤らめ、ばつが悪そうに睨みつける初の顔を見て、
『僕達、とってもラブラブですので!!』
勇助はようやく、去り際に放った己の一言が完全に余計だったと悟った。
「あああ! ごめんなさい!!」
桜慈は勇助に一瞬だけ微笑みかけると、再び簗に鋭い視線を向けた。
「支部予選会の件、全て聞かせて頂きました。
透明性を保ちつつ実力で決めるべき出場者選考で、こんな罰ゲームじみた取引が行われていたなんて。
取引に乗った姫嶋も悪いですが、それに乗らざるを得ない状況を作り出した先輩方のほうが遥かに悪質だ」
「待って、"王子きゅん"!」
「……伊山先輩?」
突如、もう一人いた面長眼鏡の陸上部員が、パイプ椅子から勢いよく立ち上がった。
おうじきゅん……?
勇助がぽかんとしたのも束の間、伊山と呼ばれた陸上部員が簗を指差し、血相を変えて捲し立てた。
「先輩方って言ってたけど! 全てはコイツが一人でやった事だから!!
ボクは止めたのに部長権限だなんだって言って」
「あぁ?! 元はといえば姫嶋が休みの日に選考終わらせちまおーぜって提案したのはテメーだろ、伊山!
王子に告白させんのだって、テメーが言い出したんだろが!! 絶対成功しないしフラれたって噂流しまくってやろうって」
「そんな事言ってないもん!」
目の前で仲間割れが始まってしまい、ますます状況についていけなくなると、
「いい加減にしろ!!」
桜慈が怒声を張り上げた。
しん、と静まり返った部室に、びりびりと振動が走る。
「先輩方には大変失望しました。
この件は理事長に報告いたします。
……支部予選会への出場取消だけで済むなら、まだ甘いほうでしょうね」
冷たく言い放った桜慈は、伊山に蔑むような視線を向けて最後にこう付け加えた。
「それから……副部長の伊山先輩。
先日貴方から頂いた告白。お受けしなくて良かったと、今日あらためて思いました」
ひたすら呆然と状況を見守っていた勇助と初に、桜慈が「行こう」と促し部室を出ようとした瞬間、簗から"待った"が掛かった。
「姫嶋……と、鈴木なんとか。
お前ら本当に付き合う事になったんだよな?
だったら言いふらしても問題ないし、さぞかし相思相愛なんだろうな?」
今思えば、あれはただの売り言葉だったのだろう。
無視してしまえば良かったのに、勇助はそれを言い値で買い上げた。
「はい! 言いふらして頂いて一向に構いません!!
僕達、とってもラブラブですので!!」
絶句する初の腕をぎゅっと抱き寄せ、そのまま鼻息荒く引っ張りながら部室を出た。
十歩ほど進んだところで立ち止まった勇助は、ふう、と大きく息を吐いた。
「途中で桜慈くんが来てくれたおかげで助かりましたね。
桜慈くん、本当にありがとうございま……」
礼を述べながら視線を上げた先に映り込んだのは、額に手を当てて思い悩む桜慈の姿だった。
「桜慈くん、大丈夫? どこか具合が悪いんですか??」
「いや、具合が悪いわけじゃなくて……。
……勇助君、俺が陸上部の奴らにあんな啖呵を切ったのは、君が姫嶋とそうならなくてもいいようにと思っての事だったのに……」
「はえっ?! はじめさんと、そうならなくてもって?」
「おい勇助。オレでもプリンスの言わんとすることは理解できたぞ」
頬を赤らめ、ばつが悪そうに睨みつける初の顔を見て、
『僕達、とってもラブラブですので!!』
勇助はようやく、去り際に放った己の一言が完全に余計だったと悟った。
「あああ! ごめんなさい!!」

