……やっぱり、駄目だったか。
潰れそうな胸の痛みに奥歯を噛み締めた瞬間、
「ブチ犯すのはお前じゃなくて、オレだから」
予想外の言葉が、上から降ってきた。
驚きでいっぱいの勇助が顔を上げると、そこには耳まで真っ赤にして、かつてないほど真剣に勇助を見つめる初の姿があった。
「あの……さ。オレからも、ちゃんと言わせて。
勇助。オレはお前が好きだ。
……ブチ犯したいくらい、大好きだ。
お前の靴箱に手紙を入れた、あの日から……お前が必要なかった時なんて、一秒だってない。
だから……東京に戻ったら、オレのほんとうの『恋人』になって下さい」
初は恭しく頭を下げると、『何でも言うこと一つきく券』を——静かに受け取った。
くしゃくしゃの紙切れを手にした初が嬉しそうに頬を緩めた途端、緊張の糸が切れた勇助は再び泣き出した。
「うわあああん、よかったあああ」
「おい……どうした」
「絶対、断られると、思ったああぁ」
「なんでオレが断るんだよ」
「だって、はじめさん、だめって言った」
「だからそれは、お前がオレをブチ犯すのが駄目だって意味で!
ブチ犯すのはオレのほうで……って、ああ、何言ってんだオレ」
額に手を当てて俯いた初だが、泣きじゃくる勇助に視線を戻すと「泣くなよ」と、その手で勇助の頭を撫でた。
「それに……僕の電話番号も、連絡先から消したでしょう?」
「そんなことするわけないだろ!」
ぐっしょりと頬を濡らす勇助に、初は即座に否定した。
「嘘だ……さっき掛けたらすぐに話中音が流れて、切れた。
はじめさん、前に登録外の電話番号から掛けると通話中になって切れる設定にしてるって」
「ちょっと待てって。さっきって、いつだ?」
「ええと……四十分前くらい?」
「あー……それなら通話中になって切れるわ。だってオレその時間、母ちゃんと電話してたから」
「……へ?」
「ちょっと待ってろ……っつうか、いい加減中に入ろうぜ。外でやることじゃねーだろ」
「は……っ!!」
マンションの共用部分で一世一代の大告白をかました現実にようやく気付いた勇助は、瞬時に涙が引っ込み、顔が熱で爆ぜそうになった。
呆れたように息を吐いた初が、勇助の腕を引っ張り家の中へと連れ込んだ。そして、スニーカーを乱暴に脱ぎ捨てて部屋の中に消えたかと思うと、猛スピードで玄関に戻ってきた。
玄関口に佇む勇助に、初がスマートフォンを差し出す。
「ほらこれ、見ろ……って電源落ちたままだったわ。ちょっと待て」
画面を勇助に見せた状態のまま、初が電源を入れるとすぐに一件の不在着信通知が入った。
「悪い。本当に電話くれてたんだな」
初の指が画面をはじくと、着信が入った時間と、勇助の名前が表示された。
「えーと、通話履歴は」
「見なくて大丈夫です。……だって、待受が」
「……ああ」
初の待受画面は、初の母に会った帰りに和と三人で撮った『お揃い』のプリ画像のまま、変わっていなかった。
「お前と撮った写真、これしかないんだもんな。
……勇助。東京に戻ったら、一緒に写真を撮ってくれないか?
今度は二人で、目がデカくならないやつで」
写真はそれほど好きではない。けれど、初となら。
勇助は初と顔を見合わせて、微笑みながら頷いた。
「一応確認だけど、東京に戻ったら本格的にオレとお前は恋人同士、って事でいいんだよな?」
スマートフォンをジャージのポケットにしまいながら、初が訊ねてきた。
「? はい」
ポカンとしながら肯定すると、安堵したように笑った初が言った。
「じゃあ十日後からか」
「…………へ?」
潰れそうな胸の痛みに奥歯を噛み締めた瞬間、
「ブチ犯すのはお前じゃなくて、オレだから」
予想外の言葉が、上から降ってきた。
驚きでいっぱいの勇助が顔を上げると、そこには耳まで真っ赤にして、かつてないほど真剣に勇助を見つめる初の姿があった。
「あの……さ。オレからも、ちゃんと言わせて。
勇助。オレはお前が好きだ。
……ブチ犯したいくらい、大好きだ。
お前の靴箱に手紙を入れた、あの日から……お前が必要なかった時なんて、一秒だってない。
だから……東京に戻ったら、オレのほんとうの『恋人』になって下さい」
初は恭しく頭を下げると、『何でも言うこと一つきく券』を——静かに受け取った。
くしゃくしゃの紙切れを手にした初が嬉しそうに頬を緩めた途端、緊張の糸が切れた勇助は再び泣き出した。
「うわあああん、よかったあああ」
「おい……どうした」
「絶対、断られると、思ったああぁ」
「なんでオレが断るんだよ」
「だって、はじめさん、だめって言った」
「だからそれは、お前がオレをブチ犯すのが駄目だって意味で!
ブチ犯すのはオレのほうで……って、ああ、何言ってんだオレ」
額に手を当てて俯いた初だが、泣きじゃくる勇助に視線を戻すと「泣くなよ」と、その手で勇助の頭を撫でた。
「それに……僕の電話番号も、連絡先から消したでしょう?」
「そんなことするわけないだろ!」
ぐっしょりと頬を濡らす勇助に、初は即座に否定した。
「嘘だ……さっき掛けたらすぐに話中音が流れて、切れた。
はじめさん、前に登録外の電話番号から掛けると通話中になって切れる設定にしてるって」
「ちょっと待てって。さっきって、いつだ?」
「ええと……四十分前くらい?」
「あー……それなら通話中になって切れるわ。だってオレその時間、母ちゃんと電話してたから」
「……へ?」
「ちょっと待ってろ……っつうか、いい加減中に入ろうぜ。外でやることじゃねーだろ」
「は……っ!!」
マンションの共用部分で一世一代の大告白をかました現実にようやく気付いた勇助は、瞬時に涙が引っ込み、顔が熱で爆ぜそうになった。
呆れたように息を吐いた初が、勇助の腕を引っ張り家の中へと連れ込んだ。そして、スニーカーを乱暴に脱ぎ捨てて部屋の中に消えたかと思うと、猛スピードで玄関に戻ってきた。
玄関口に佇む勇助に、初がスマートフォンを差し出す。
「ほらこれ、見ろ……って電源落ちたままだったわ。ちょっと待て」
画面を勇助に見せた状態のまま、初が電源を入れるとすぐに一件の不在着信通知が入った。
「悪い。本当に電話くれてたんだな」
初の指が画面をはじくと、着信が入った時間と、勇助の名前が表示された。
「えーと、通話履歴は」
「見なくて大丈夫です。……だって、待受が」
「……ああ」
初の待受画面は、初の母に会った帰りに和と三人で撮った『お揃い』のプリ画像のまま、変わっていなかった。
「お前と撮った写真、これしかないんだもんな。
……勇助。東京に戻ったら、一緒に写真を撮ってくれないか?
今度は二人で、目がデカくならないやつで」
写真はそれほど好きではない。けれど、初となら。
勇助は初と顔を見合わせて、微笑みながら頷いた。
「一応確認だけど、東京に戻ったら本格的にオレとお前は恋人同士、って事でいいんだよな?」
スマートフォンをジャージのポケットにしまいながら、初が訊ねてきた。
「? はい」
ポカンとしながら肯定すると、安堵したように笑った初が言った。
「じゃあ十日後からか」
「…………へ?」

