沈んだ気持ちを立て直せないまま学年末試験に臨んだ勇助は、入学以来二十位以内を維持していた総合順位を、五十位台まで落とした。
初は今回、どうだったのだろうか。
灰がかった桃色が髪に戻ることのないまま、根元から地毛が伸びていく後頭部を眺めているうちに、修了式の日を迎えることになった。
修了式後の大掃除とホームルームを終え、桜慈と一緒に教室を出ると、廊下でたくさんの生徒達に囲まれて号泣する一人の男子生徒の姿が目に留まった。
「彼……どうしたんでしょうか」
ふっと湧いた疑問を漏らすと、隣にいた桜慈が答えた。
「彼は素行不良と成績不振によって強制退学が決まり、単位制の高校に転校することになったんだ。
……うちの高校には留年制度がないから、毎年こうして進級できずに学校を去っていく生徒が、どの学年にも必ず何人かいる。
本人達にとっては不名誉な事だから、学校側から表立って伝えることはないけどね」
「そうなんですか……」
「……泣くほど離れ難かったのならば、日頃から真面目に取り組んでいれば良かったのに」
両目を細めた桜慈が、「行こうか」と勇助に声を掛けて再び歩き始めた。
勇助は男子生徒を見つめて唇を噛みしめると、桜慈の後を追った。
素行不良、成績不振、強制退学、……転校。
鮮烈な言葉が頭に残ったまま、勇助は和を迎えに行き、家族全員分の夕食を作り、和を風呂に入れ終えると、キッズケータイに一通のショートメールが届いていることに気が付いた。
帰宅が遅れている父からだろうか。
メールを開いた瞬間、勇助は言葉を失った。
『直前の連絡になってごめん
明日から京都に行く
今までありがとな』
差出人の名前は、姫嶋初。
しばらく呆然とした後、我に返った勇助は、震える指で初に電話を掛けた。しかし電話は繋がることなく、ツー、ツー、と無機質な話中音を鳴らして切れた。
『オレのスマホ、登録してる番号以外から掛けると通話中になって切れる設定にしてあるから』
連絡先を交換した日、初が語った言葉を思い出した勇助は、全てを悟るとその場に崩れ落ちた。
——実父がいる京都の学校への転校が決まった初が、勇助の連絡先を消したのだ。
初は今回、どうだったのだろうか。
灰がかった桃色が髪に戻ることのないまま、根元から地毛が伸びていく後頭部を眺めているうちに、修了式の日を迎えることになった。
修了式後の大掃除とホームルームを終え、桜慈と一緒に教室を出ると、廊下でたくさんの生徒達に囲まれて号泣する一人の男子生徒の姿が目に留まった。
「彼……どうしたんでしょうか」
ふっと湧いた疑問を漏らすと、隣にいた桜慈が答えた。
「彼は素行不良と成績不振によって強制退学が決まり、単位制の高校に転校することになったんだ。
……うちの高校には留年制度がないから、毎年こうして進級できずに学校を去っていく生徒が、どの学年にも必ず何人かいる。
本人達にとっては不名誉な事だから、学校側から表立って伝えることはないけどね」
「そうなんですか……」
「……泣くほど離れ難かったのならば、日頃から真面目に取り組んでいれば良かったのに」
両目を細めた桜慈が、「行こうか」と勇助に声を掛けて再び歩き始めた。
勇助は男子生徒を見つめて唇を噛みしめると、桜慈の後を追った。
素行不良、成績不振、強制退学、……転校。
鮮烈な言葉が頭に残ったまま、勇助は和を迎えに行き、家族全員分の夕食を作り、和を風呂に入れ終えると、キッズケータイに一通のショートメールが届いていることに気が付いた。
帰宅が遅れている父からだろうか。
メールを開いた瞬間、勇助は言葉を失った。
『直前の連絡になってごめん
明日から京都に行く
今までありがとな』
差出人の名前は、姫嶋初。
しばらく呆然とした後、我に返った勇助は、震える指で初に電話を掛けた。しかし電話は繋がることなく、ツー、ツー、と無機質な話中音を鳴らして切れた。
『オレのスマホ、登録してる番号以外から掛けると通話中になって切れる設定にしてあるから』
連絡先を交換した日、初が語った言葉を思い出した勇助は、全てを悟るとその場に崩れ落ちた。
——実父がいる京都の学校への転校が決まった初が、勇助の連絡先を消したのだ。

