ラブレターの差出人は、同じクラスの『姫』だった。

 体育祭後に控えていた期末試験も終わると、世間も教室もクリスマスに浮き立つ連中で溢れ返った。
 かく言う初もその一人で、今年のクリスマスはあわよくば勇助と二人で過ごせちゃったりしないだろうかと密かに胸を躍らせていた。

「はじめさん。……あの、終業式後の二十五日の午後って、お暇だったりしませんか?」
「え。超ひま」

 そこに渡りに船のような誘いが来たら、当然乗らない手はない。そう思っていた。

 …………ついさっきまでは。

「ようはじめ! あいかわらずきょうもひまそうだな。おれがあそんでやるよ」

 やっぱり妹(こいつ)が一枚噛んでたか。
 待ち合わせ場所が近所の公園という時点で、早々に気付くべきだった。
 折角この日のために買った、お高めのモッズコートとスニーカーが泥んこ確定じゃねーか。
 小憎らしいじゃじゃ馬を睨みつけると、隣にいた勇助がぺこりと頭を下げた。
 今日も、学校で着用しているものと同じ薄っぺらい中綿コートを羽織っている。細い体躯と相まって、相変わらず軽装備で寒そうだ。

「はじめさん、今日はお時間頂きありがとうございます。
 和が『どうせはじめはひまだから、ゆーすけがさそったらほいほいついてくる』と何度も言ってきたものですから」
「和が失礼なのは今に始まったことじゃねーが、勇助も最近露骨に言うようになったな。少しはオブラートに包まねぇとブ」
「ぶちおかされて、しまいますか?」

 唐突に被せられた爆弾発言に目を剥くが、勇助は「ビンゴですね!」と、なぜか嬉しそうだ。

「最近、『ぶちおかす』がはじめさんの口癖になってるみたいなので、ちょっと言い当ててみました」

 そんなに多用していたのか。
 眉間を押さえて黙りこくると、背中にそっと手が添えられた。

「……ごめんなさい。悪ふざけが過ぎましたね。
 でも、はじめさんがたくさん素を見せてくれるようになったのが、嬉しくて。
 和もあんな言いぶりですが、今日はじめさんとお会いできるのをとっても楽しみにしてたんですよ。家にも呼ぶ気満々で、僕と一緒にツリーの組み立てと飾り付けを頑張ってました。
 公園で遊び終わったら、ささやかですが、うちでクリスマスを祝いましょう。
 はじめさんの好きなミックスベジタブル入りのハンバーグも作りますので、良かったら召し上がっていきませんか」

 勇助の手で、背中が温かい。

「……オレ、いつからハンバーグが好きってことになったんだよ」

 背中以上に温かな熱が、胸いっぱいに広がっていく。

「えっ!? どうしよう……早とちりしてごめんなさい、お嫌いでしたか?」

 慌てふためく勇助に、初は顔を綻ばせた。

「いや……大好きだ」

 たった今、大好きになった。