ラブレターの差出人は、同じクラスの『姫』だった。

「うおおああぁぁあ!」
「『姫』、よくやった!!」

 組別対抗リレーを制し、一躍ヒーローとなって帰還した初は、クラスメイト達から熱烈な歓待を受けていた。

「やめろ、抱きつくな暑苦しい!」

 そう言いつつ、初の表情はどこか嬉しそうだ。
 そして桜慈は、上級生達によって初以上に歓待……というよりも揉みくちゃにされているせいだろうか、無の境地で明後日を見つめているような表情を浮かべていた。

 そこへ、怪我の手当てを終えた瀬形が戻ってきた。膝が包帯でぐるぐるに巻かれている。

「瀬形くん! 大丈夫……なわけないですよね」
「いや、大丈夫。転んじゃってごめんな。
 やたら重装備にされたけど、ちょっと派手めに擦りむいただけだから」
「そうでしたか……いずれにせよ、早く治りますように。リレー、お疲れさまでした」
「ありがと。
 俺はもう十分だから、そろそろ旦那のほうを労ってやってよ」

 だんな……? と首を傾げると、瀬形は親指をくいっと初に向けてニヤリと笑った。すると、こちらを見ていた初と思いっきり目が合った。

「勇助」

 初がこちらに近づいてきた。

「はっ、はじめさん……! は、はじけ、はや……っ、すごっ」
「おーい、日本語でいいぞ」

 溢れんばかりの感情に脳の処理が追いつかず、うまく言葉が出てこない。
 ふと、初の胸元に下げられたお守りが目に入った。まさかとは思ったが、やはりインターハイの予選前に勇助が渡した手作りのお守りだった。

「それ、まだ持っていてくれたんですね」

 初は形のよい大きな目を瞬かせながらお守りを手に取ると、「まともな第一声がそれかよ」と言って笑い出した。

「持ってるに決まってんだろ。
 こいつが俺を全国に連れてってくれたんだから」
「でも、ペンダントみたいにぶら下げるのは……走るとき邪魔だったと思うし、鍵っ子の小学生みたいです」
「誰が小学生だコラどつき回すぞ」

 いつもの調子で脅してくる初に、勇助の頬が自然と緩む。すると、初は唐突に表情を曇らせて、手に取ったお守りに視線を落とした。

「これ……本戦に行った時に、一度失くしかけて。
 結局初戦で負けるわ、見つけるの大変だわで散々な目に遭ったんだからな。お前のせいだぞ」
「えっ、それは大変申し訳ございませんでした」
「何謝ってんだよ、冗談に決まってんだろ。
 とにかく、もう失くすのはごめんだから、こうやってぶら下げてんの。
 今日だって見てただろ? 
 ……お前のくれたお守り、効果覿面なんだよ」

 お守りを握りしめる初の手に、自分の心臓まで握りしめられるような心地がすると、実行委員の『それでは、各組の総合得点の発表です』というアナウンスが流れてきた。

「はじめさん、いよいよですね」
「……ああ、いよいよだな」

 勇助は初とともに、各組の得点板が掲げられたバックネットに視線を向けた。