最悪のタイミングでの勇助父との邂逅後、どうにか「カップルに扮しながら食器を洗うゲームをしていた」と非常に苦しい言い訳でお茶を濁した初は、勇助父にむき出しの敵意をぶつけられながら玄関へと追いやられた。
「良かったらまたいらして下さいね、はじめさん」
「もう二度と来るな、勇助を卑猥な目つきで舐め回す淫獣め!」
「何言ってんだおっさん」
「貴様に『お義父さん』と呼ばれる覚えはない!!」
そんなん、一言も言ってねーだろ!
言い終えぬうちに、玄関の扉が派手な音を立てて閉まった。
ハードウェアしかイケてないおっさんを筆頭に、この無礼千万な曲者揃いの環境でよく真っ当に育ったなと、初は勇助に対して思わずにはいられなかった。
「あいつ、きっと母ちゃん似なんだろうな……」
古びた木造の一軒家を見つめると、初はすっかり日の落ちた多摩響の夜を背に自宅へと戻っていった。
翌日以降、「体調ならもう大丈夫です」と苦笑する勇助を突っぱねて一人で勉強を続けたり、途中サボったりした結果——二百番台がデフォルトだった総合順位が、初めて百番台に乗った。
ドヤ顔で勇助に報告したら、
「えっ。百番台と言っても、百七十八位ですよね?
下から三十五番目で下位圏を全然抜けられてないじゃないですか。特に数Ⅱが酷いですね、白チャートを買って一ページ目から飛ばさずに解いてください」
相変わらず勉強に関しては辛辣にこき下ろされた。
初は凹んだ気持ちのまま、書店で白チャートを買った。
期末テストも無事……とは言えないが終わった週末、土曜日。
今日は初めて、休日に勇助と会う。母親の所在がわかったからだ。
祖父の遺品である手帳の連絡先の中には『初・母』という括弧書き付きで、一人の女性の名前が記されていた。ずっと見ないようにしてきたが、勇助に背中を押されて再び手帳を開き、そのページを撮った画像を勇助に見せると——
「僕、その方を知ってるかもしれません」
思わぬ言葉が返ってきた。
勇助は「目元や雰囲気が似ているので、ほぼ間違いないと思います」と言って、母と思しき人物とのアポを取り付けてきた。
服選びにやたら時間が掛かったが、これは断じて浮かれている訳ではなく、もう自分は被虐対象ではないのだという意思表明であって……って、何に対する言い訳だこれは。
気もそぞろに集合場所でスマートフォンを弄っていると、
「はじめさん! 遅くなってすみません」
「いや、オレもさっき来たばっかだ、し……?」
初は絶句した。
視線の先では——英文や十字架がプリントされた中二病風のネルシャツに、やたらポケットの多いズボンを着用した勇助が、昆虫が描かれたTシャツ短パン姿の妹を引き連れ、満面の笑みで手を振っていた。
「良かったらまたいらして下さいね、はじめさん」
「もう二度と来るな、勇助を卑猥な目つきで舐め回す淫獣め!」
「何言ってんだおっさん」
「貴様に『お義父さん』と呼ばれる覚えはない!!」
そんなん、一言も言ってねーだろ!
言い終えぬうちに、玄関の扉が派手な音を立てて閉まった。
ハードウェアしかイケてないおっさんを筆頭に、この無礼千万な曲者揃いの環境でよく真っ当に育ったなと、初は勇助に対して思わずにはいられなかった。
「あいつ、きっと母ちゃん似なんだろうな……」
古びた木造の一軒家を見つめると、初はすっかり日の落ちた多摩響の夜を背に自宅へと戻っていった。
翌日以降、「体調ならもう大丈夫です」と苦笑する勇助を突っぱねて一人で勉強を続けたり、途中サボったりした結果——二百番台がデフォルトだった総合順位が、初めて百番台に乗った。
ドヤ顔で勇助に報告したら、
「えっ。百番台と言っても、百七十八位ですよね?
下から三十五番目で下位圏を全然抜けられてないじゃないですか。特に数Ⅱが酷いですね、白チャートを買って一ページ目から飛ばさずに解いてください」
相変わらず勉強に関しては辛辣にこき下ろされた。
初は凹んだ気持ちのまま、書店で白チャートを買った。
期末テストも無事……とは言えないが終わった週末、土曜日。
今日は初めて、休日に勇助と会う。母親の所在がわかったからだ。
祖父の遺品である手帳の連絡先の中には『初・母』という括弧書き付きで、一人の女性の名前が記されていた。ずっと見ないようにしてきたが、勇助に背中を押されて再び手帳を開き、そのページを撮った画像を勇助に見せると——
「僕、その方を知ってるかもしれません」
思わぬ言葉が返ってきた。
勇助は「目元や雰囲気が似ているので、ほぼ間違いないと思います」と言って、母と思しき人物とのアポを取り付けてきた。
服選びにやたら時間が掛かったが、これは断じて浮かれている訳ではなく、もう自分は被虐対象ではないのだという意思表明であって……って、何に対する言い訳だこれは。
気もそぞろに集合場所でスマートフォンを弄っていると、
「はじめさん! 遅くなってすみません」
「いや、オレもさっき来たばっかだ、し……?」
初は絶句した。
視線の先では——英文や十字架がプリントされた中二病風のネルシャツに、やたらポケットの多いズボンを着用した勇助が、昆虫が描かれたTシャツ短パン姿の妹を引き連れ、満面の笑みで手を振っていた。

