ラブレターの差出人は、同じクラスの『姫』だった。

 ——忘れもしない、入学試験の日。

 初めてその姿を見た瞬間、視線を剥がせなくなった。
 筆記用具を忘れて青ざめる隣の席の学生に声を掛け、鉛筆二本と一つの消しゴム——を躊躇なく半分に割ったうちの大きなほうをその学生に渡した、痩身で素朴な顔立ちの少年。
 まあ、少年と言っても同学年なのだが。

「桜慈。この後合格者のクラス分けを行うけど、この中に"配慮が必要な子"はいるかい?」

 極秘と銘打たれた合格者リストの中に少年の名前を見つけると、桜慈はゆっくりと口を開いた。

「おじい様。同じクラスにしてほしい子が、一人いるんだ」

 桜慈の見立て通り、少年は純朴で優しい心の持ち主だった。
 生まれ育った環境が違うせいか、時折驚かされるような言動もあるが、慣れてくるとそのズレも微笑ましく、好意的に受け止められるようになった。
 外見やステータスに眩み、擦り寄る有象無象とは違い、彼は一人の人間としての自分と友情を育み、全幅の信頼を寄せてくれる。
 唯一にして生涯の"理想の友"に、やっと出会えた。

 だから、

「びょフ」

 この友情は誰にも邪魔はさせないし、

「……ありがとう、ございます……」

 彼を(たす)ける友は、一人()だけでいい。