ラブレターの差出人は、同じクラスの『姫』だった。

 いつものように登校し、いつものように靴箱から上履きを取り出すと、同じ場所から白い封筒が一通、はらりと床に落ちた。

「なんだろう? これ」

 上履きをプラスチック製の青い(すのこ)に置き、封筒を拾い上げる。

 封筒は横型でハガキより一回り大きく、表には『鈴木へ』と、やや丸みを帯びた癖のある字で自分の苗字が書かれていた。
 封筒を持つ手をくるりと返して裏を見ると、右下に記名がある。

 もしかして、これは。

「……ラブレターだ」

 人生で初めて手に取ったラブレターの差出人は、姫嶋(ひめじま)(はじめ)——同じクラスの『姫』だった。

『姫』といっても、ここは男子校。無論、彼も例外なく男子だ。一瞬驚いたが、すぐさまそういうことかと納得し、うんうん、と二回頷いた。

 姫嶋くん、桜慈(おうじ)くんの靴箱と間違えちゃったんだ。

 中身を確認するまでもない。学校一の人気者である『王子』こと鈴木桜慈(すずきおうじ)と自分は、同じクラスで同じ『鈴木』姓だから、うっかり入れ間違えてしまったのだろう。
 おっちょこちょいな差出人の顔を思い浮かべて微笑むと、一つ上の段にある桜慈の靴箱に、ラブレターをそっと入れ直した。

 ……はずなのに。

鈴木(すずき)勇助(ゆうすけ)、オレの……こ、恋人になってくれ!!」

 まって、姫嶋くん。

 ——きみが好きなのは、桜慈くんじゃなかったの……?