「……ただいま。」
その声が聞こえた瞬間。
自然と身体が動いた。
見えなくても分かる。
何年経ってもこの声だけは間違えない。
「おかえり、翔。」
いつものように。
玄関で待つ。
「また待ってたのか。」
「別に。」
「嘘。」
「……。」
「顔見たいからだろ。」
「……翔。」
「何。」
「うるさい。」
笑う声。
その声が聞こえるだけで今日も大丈夫だと思える。
失ったものはある。
戻らないものもある。
それでも俺には帰ってきてくれる人がいる。
だから今日も、明日も、明後日も
これから先もずっと
「おかえり。」
「ただいま。」
そんな当たり前を大切にしていく。
翔が光を与えてくれるから。
