君が僕に光を与えてくれた。


その日はいつも通り仕事が終わり帰り支度をしていると声をかけられた。

「望琴。」

「はい。」

「少し時間あるか。」

「ありますけど。」

「少し歩かないか。」

珍しい。
そう思いながら隣を歩く。
いつもなら由城が前を歩いて、望琴が少し後ろ。
でもその日は違う。

隣を歩く。
しばらく歩いて。

人通りの少ない場所で翔が足を止める。

「……。」

「社長?」

「望琴。」

「はい。」

「今日は、社長として話すんじゃない。」

「……。」

「俺個人として聞いてほしい。」

ここで望琴も少し緊張する。

「俺は。」

翔は一度言葉を止める。
いつもなら迷わない人なのに。
珍しく迷っている。

「……。」

「?」

「お前と出会った時。」

「?」

「正直、面倒な奴が来たと思った。」

「え?」

「いや、悪い意味じゃない。」

「……。」

「ただ。」

翔は少し笑う。

「俺の想定していた人間とは違った。」

「最初は。」

「仕事ができる奴だと思った。」

「でも。」

「一緒にいる時間が増えるほど。」

「仕事ができるからじゃない。」

「お前自身を知りたいと思うようになった。」

「嬉しそうに笑っていると安心したり、他の誰かと楽しそうに話していると、なぜか落ち着かなくなったり、」

「お前がいない会社は、静かすぎると思った。」

望琴は黙って聞いている。

「初めは。部下として大切なんだと思っていた。」

「でも違った。」

「俺は。」

翔が望琴を見る眼差しはそれはそれは真っ直ぐだった。
逃げない覚悟がそこにはあった。




「坂城望琴という人間が好きだ。」





「仕事ができるからじゃない。」

「俺を頼ってくれるからでもない。」

「笑うところも。」

「人を大切にするところも。」

「自分より先に誰かを心配するところも。」

「全部。」

「好きだ。」



「俺と付き合ってほしい。」






「……。」

「すみません。」

翔の表情が少し曇る。

「……いや、違います。」

「?」

「嫌じゃないです。」

「……。」

「むしろ、嬉しいです。」

「でも、俺、社長のことを、同じ気持ちで見ているのか分からなくて。」


翔は少し黙る。

「分かった。」

「え?」

「待つ。」

「……。」

「急がせるつもりはない。」





告白を受けた数日後望琴からお時間いいですか?と呼び出された。

「社長、あの時の返事ですが、」

「俺、社長のことを好きっていう気持ちまだちゃんと言葉にできないです。」

「でも、社長が誰かと一緒になるって考えた時。」

「嫌でした。」

「社長が帰ってくる場所が俺じゃなくなるのが。」

「嫌だった。」

「だから。」

「俺も。」

「社長の隣にいたいです。」




「よろしくお願いします。」