不毛だと言われても、百年先まで君が好き

 ミオちゃんの爆弾発言に、僕は猛烈な勢いで首をふった。何を言ってるの? 明日告白なんて無理。

 「む、無理だよ」
 「大丈夫、今から可愛くしてあげるから」
 「でも」
 「はっきりいってね、このままモダモダしてられても、私まで悶々しちゃうのよ、元はと言えば私のせいでこうなってるし……絶対両想いだから信じろっての!」

 指をビシッと鼻先に突きつけられ、宣言されてしまうと、はいと答えるしかなかった。

 「はい」
 「よし! じゃ、うちにいくぞー!」

 僕の腕にミオちゃんが絡み付いてきて、嬉しそうに引っ張る。その子供じみた行為に、なんだかこっちまで、やればできるみたいな高揚した気持ちになって、一緒に走り出した。

 野村美容室へ着くと、ミオちゃんはお母さんに頼んでくれて、僕はすぐに椅子に座らせてもらえた。

 「こんにちは、サツキ君お久し振りね」
 「こんにちは、突然すみません」
 「良いのよ」

 僕にビニールの薄いカバーをかけながら、ミオちゃんのお母さんが挨拶をしてくれた。ミオちゃんは、自分の部屋に続く階段を上がっていったかと思うと、ダダダダダッと、雑誌をもって帰ってきた。

 「ね、ママ、サッちゃんの髪型、これどう?」
 「あーー可愛いわね、サツキ君に似合いそう」
 「でしょでしょ」

 二人で盛り上がってるけど、僕には見せてくれない。不安そうな僕に気づいた、お母さんが、雑誌を見せてくれた。

 「これなんだけど、ど? 前髪をセンターでわけて、ちょっとパーマかけて」
 「似合う……かな?」
 「似合う!似合う! サツキ君顔がこんなに可愛いんだもの何でも似合うけど、大人っぽくしたらがらりと変わるわよ」
 「そうよ、サッちゃん、あ、ママ、カットモデルだから安くしてね
 「はいはい」

 カットモデルとは? 僕の視線に気づいたミオちゃんは、テヘッみたいに舌を出した。いやいや、聞いてないんですけどーー。

 「カットモデルって」
 「大丈夫、後ろ姿と横顔撮るだけ!」

 ミオちゃんがお店の、カットモデル写真を見せてくれた。色んな人の髪型が載ってる。お母さんが、ハサミで僕の髪を切りながらだめ押し。

 「ありがとね、サツキ君、カットモデル助かるわ」
 「あ……はい」

 まぁ、別に良いか。目を閉じてあとはもうお母さんに任せることにした。ザクザクと鋏の小気味良い音、さらさらと髪がビニールの山を滑り落ちていく。

 くるくると何かを髪に巻かれ、しばらく放置された後に、シャンプーとリンス、良い匂いが充満していく。

 ボーッと熱風に煽られ、最後にまたチョンチョンと髪を切られた。
 お母さんが、鋏を置いて、僕に三面鏡を見せる。

 「どうかしら?」

 鏡に映っていたのは、芸能人みたいな髪型をした僕。センターで分けられた、栗色の髪は緩やかにウェーブして、カッコいい。僕の童顔に、ミスマッチな色気が加わったような垢抜けた感じが確かにあった。

 「わ、わぁ」
 「すんごーく、可愛いわ!」
 「ほらね、似合うって言ったでしょ、どんなアイドルよりサッちゃんの方が可愛い!」

 大絶賛してくれる二人に、頬を染めながらうなずく。自分でも素敵だと思う。海君はどう思うかな。

 「明日……頑張ってみる」

 僕は意気揚々と家に帰った。ずっとここのところ、元気が出なくて放任主義のうちの親も心配してくれてたから、帰ったらびっくりするかも。

 ルンルンと跳ねるように僕は、歩道を歩いていた。背後からタッタッタッと人が走ってくる足音が聞こえたので、ランニングをしているのだろうと、僕は歩道の端によった。だがその足音は僕の背後で止まった。

 「サツキ」
 「ん? え……海君……?」

 振り向くと、なんと驚くことに、海君が立っていた。部活帰りなのか大きな鞄を背負って、走ってきたせいで息が乱れているし、顔も赤い。