不毛だと言われても、百年先まで君が好き

 ミオちゃんと和解? したあと、僕達はまた昔みたいによく一緒にいるようになった。相変わらず、ミオちゃんは、テキパキしていて、何でも一人でやっちゃう人だから、ついでに僕の面倒もみてくれる。

 「なに、また傘を電車に忘れたの? もーーサッちゃんてばどうしてそう、ぼやぼやして生きてるかなぁ、いいよ一緒に帰ろ」
 「うん、ありがとう」

 ミオちゃんは、折り畳み傘をさっと出すと、僕に押し付けるように渡した。

 「サッちゃんが、罰としてさして」
 「うん」

 僕は素直に傘をさし、ミオちゃんの隣に立った。折り畳み傘は小さくて、ほっそりしてるミオちゃんの肩が濡れそうで、傘を斜めにしながら歩いた。

 「サッちゃん濡れてるよ」
 「大丈夫だよ」
 「はぁ……サッちゃん、優しくていい男なんだけど、なんでかな私、サッちゃんのこと恋愛相手として見れないの惜しいよね」

 ミオちゃんが心底がっかりしたみたいな声をだすから、僕も同じなんだけどと思った。

 「それは僕もだけど」
 「は?」
 「あ、いや、ミオちゃんは可愛いけど、なんか先生みたいで」
 「よく言われる!」

 ゲラゲラ笑うミオちゃんの顔が面白くて、僕も笑った。僕達の間になぜか生まれなかった恋。

 「やっぱり海君は凄いね」
 「まぁ、学校一のモテ男だからね、あんたがそばに居なくなってから、女子の間では海君の話ばっかよ、あんた、あんまりぼんやりしてると、海君誰かに取られちゃうよ、はやく仲直りしなって」
 「うん……」

 仲直りというけど……僕は海君のこと好きだって、気づいたけど、海君はもう僕のことを好きじゃない。じゃぁ、どうしたら良いんだろう。どうしたら海君にまた好きって思ってもらえるかな。海君が言ってたことを思い出す。

 海君は僕のことを『ゆっくりしてて可愛い』とよく言ってた。ゆっくりしててていうのは、僕がいつものろのろ何かをしてるってことだよね、それを可愛いと思うのは、不思議だった。普通は、のろのろしたら怒られるのにな。

 少し考えたあと、そうだ、ミオちゃんに聞いてみよう、と閃いた。

 「どうしたら、好きになってもらえるかな」
 「それを私に聞くとこなんだよなぁ……いいよ、もう、ハイハイ。どうせ私なんて海君はアウトオブ眼中でしょうよ、好きになってもらえる方法知ってたら、私がやるっーの」
 「そっか」

 ミオちゃんはまた、はーーっと溜め息。そして、チラッと僕をみた。

 「髪型を変えてみるとか? サッちゃんずっとこのキノコ頭だし……うちの美容院きなよ」
 「良いの?」
 「サッちゃんに合う髪型考えてあげる」

 僕の髪を触りながら、ミオちゃんが呟く。ミオちゃんの家は美容院だから、ミオちゃんも将来は美容師さんになるのかな。

 「ミオちゃん美容師さんになるの?」
 「なるよ、跡継がなきゃだし」
 「すごいね」
 「サッちゃんは、東大学受けるの?」

 東大学なんてレベルの高いところ無理だ。僕は首をこてっと寝かした。

 「そんなとこ、受けないよ?」
 「海君はそこ狙ってるってさ、推薦入試」
 「そーなの……凄いね」
 「サッちゃんも目指しなよ」
 「えーー無理だよ」

 僕の学力じゃとてもそんなところ無理だし、困ったな。ミオちゃんは、僕を見つめて、だよねぇと普通なら失礼な感じで呟いた。

 「じゃぁ、その隣の西大学にしたら? あそこなら頑張ればサッちゃんでも行けるかも」

 ミオちゃんの名案に僕は思わず傘を放り投げて万歳をしたい気持ちになった。

 「それはそうだね! ありがとねミオちゃん」
 「まぁ……頑張れ」

 ただ、気になったことがあって、僕はミオちゃんをじっと見つめた。

 「なに?」
 「ミオちゃんはもう、海君のこと諦めたの?」
 「あーーそんなのとっくの昔、だってあんた達みてたら、入り込む隙なかったし、むしろ海君はあんた以外本当にどうでもいいみたいだったよ、誰が告白しても好きな人がいるってキッパリ断ったらしいし」
 「そう……だったの」

 全然気付いていなかった。海君は僕のこととても大切にしてくれていたんだ。海君はモテるもんね、今もたくさんの人に想いを寄せられて……そのうち誰かと付き合うのかな。僕にしてくれたみたいに、優しくその人にするのかな。

 僕がしょんぼりと俯いたので、ミオちゃんは僕の背中を容赦ない力でバシッと叩いた。

 「イタッ!」
 「海君はまだ断ってるって、昨日告白した子が言ってた」
 「本当に?」
 「本当に。だから、明日告白してみ」
 「え」

 戸惑って、ミオちゃんの顔をまじまじと見てしまった。

 ──告白をする? 明日?