僕は、海君がどうして離れて行ってしまったのか解らないまま、仕方なくミオちゃんに話しかけた。
「海君……いっちゃったね」
「サッちゃんて、どうしてそんなに無神経なの? ほんと、最低」
「え……」
何故、ミオちゃんまで怒るのか解らなかった。僕がびっくりしていると、ミオちゃんは、ぷぃっと顔を逸らせ帰ってしまった。僕は、海君を追いかけて海君の家に行くべきか、それとも、ミオちゃんを追いかけるべきか、それとも自分の家に帰るべきか迷って……しばらくその場に立っていたけれど、何だか疲れてしまって、家に帰ることにした。
海君、どうして怒ったのかな。
僕が鈍感で、海君の好きな人覚えて無かったせいで、怒らせちゃったのかな。明日謝ったら許してくれるかな。
今まで心の中のほとんどが海君ばっかりだったから、それが急に消えて、心が空っぽになってしまった。
次の日、学校へ行くと海君は僕を見て目を伏せた。しっかりと目が合って、いつもだったら海君がすぐに近くに来てくれて、おはようって言ってくれるのに。伏せた目は二度と僕を見ることなく、そのまま遠くへいってしまった。
一限目が終わっても、二限目が終わっても、海君は僕に話しかけてこなかった。そっか、僕、今まで話しかけられるばかりだったから……どうやって話しかけたら良いのかわからなくなっちゃった。
明日になったら、明後日になったら、明々後日になったらって、いつの間にかどんどん日が経って。もう一ヶ月も海君と話さない日が過ぎていった。
僕が海君の好きな人を覚えていなかったから。怒ってる。でも、どうしてそんなに怒るんだろう。
僕はとっても悲しくて、毎日しょんぼりとして過ごした。あんなに楽しかった高校生活。あと半年で卒業なのに、僕は海君がどこの大学へ行くのかも知らない。
このままもうずっと話せないのかな。
そう思ったら、寂しくて悲しくて、もう我慢できなくて海君に謝ろうと思った。
放課後、海君が部活へ行ってしまう前に、教室から出ていく寸前、僕は海君の腕を掴んだ。
「待って、海君」
「……なに」
前なら笑ってどうしたの? って言ってくれた海君は、僕が話しかけたら迷惑そうな、低い小さな声を出した。それだけで、たったそれだけで、僕はもう何も言えなくなってしまった。
掴んだ腕を離すと、海君は一瞬眉をひそめて、何かを言おうとしたけど、しばらくの沈黙の後「部活だから」と一言だけ言って、教室から出ていってしまった。
「ごめんね」が言えなかった。
たった一言が、言えなかった。なぜなら、海君はそんなことを言っても許してくれないと思ったから。僕がそのごめんに込めた薄っぺらな気持ちを、見抜かれて、僕が何に対して謝るべきなのか本当は分かっていないことを……見透かされたようだったから。
言葉だけで、許してもらおうとした醜い僕の気持ちを、海君は嫌だと思ったに違いない。
「あぁ……僕、もう海君に嫌われてたのか、そっか、気づいてなかった。謝れば前みたいに戻れるって思ってた……バカだなぁ、戻れないんだ、だって海君は僕のこと嫌いになっちゃったんだもん」
なんで、許してもらえるなんて思ったんだろう。あんなに全身で、僕を拒絶してる海君に、どうして簡単に許されるなんて甘いこと思ったんだろう。
「そっか……もう、無理だったんだ、そっか」
僕は一人で納得した。砂漠を歩く人みたいに喉がカラカラだった。指先が震えてて、恥ずかしいくらい震えてて、こんな怖いことが有ることを知った。
海君は僕をもう嫌い。
僕ももう海君を好きでいちゃいけない。
もうこれから先、僕が海君と話すことはないのだと思ったら……怖くて怖くて怖くて怖すぎて……震えが止まらなかった。
「海君……いっちゃったね」
「サッちゃんて、どうしてそんなに無神経なの? ほんと、最低」
「え……」
何故、ミオちゃんまで怒るのか解らなかった。僕がびっくりしていると、ミオちゃんは、ぷぃっと顔を逸らせ帰ってしまった。僕は、海君を追いかけて海君の家に行くべきか、それとも、ミオちゃんを追いかけるべきか、それとも自分の家に帰るべきか迷って……しばらくその場に立っていたけれど、何だか疲れてしまって、家に帰ることにした。
海君、どうして怒ったのかな。
僕が鈍感で、海君の好きな人覚えて無かったせいで、怒らせちゃったのかな。明日謝ったら許してくれるかな。
今まで心の中のほとんどが海君ばっかりだったから、それが急に消えて、心が空っぽになってしまった。
次の日、学校へ行くと海君は僕を見て目を伏せた。しっかりと目が合って、いつもだったら海君がすぐに近くに来てくれて、おはようって言ってくれるのに。伏せた目は二度と僕を見ることなく、そのまま遠くへいってしまった。
一限目が終わっても、二限目が終わっても、海君は僕に話しかけてこなかった。そっか、僕、今まで話しかけられるばかりだったから……どうやって話しかけたら良いのかわからなくなっちゃった。
明日になったら、明後日になったら、明々後日になったらって、いつの間にかどんどん日が経って。もう一ヶ月も海君と話さない日が過ぎていった。
僕が海君の好きな人を覚えていなかったから。怒ってる。でも、どうしてそんなに怒るんだろう。
僕はとっても悲しくて、毎日しょんぼりとして過ごした。あんなに楽しかった高校生活。あと半年で卒業なのに、僕は海君がどこの大学へ行くのかも知らない。
このままもうずっと話せないのかな。
そう思ったら、寂しくて悲しくて、もう我慢できなくて海君に謝ろうと思った。
放課後、海君が部活へ行ってしまう前に、教室から出ていく寸前、僕は海君の腕を掴んだ。
「待って、海君」
「……なに」
前なら笑ってどうしたの? って言ってくれた海君は、僕が話しかけたら迷惑そうな、低い小さな声を出した。それだけで、たったそれだけで、僕はもう何も言えなくなってしまった。
掴んだ腕を離すと、海君は一瞬眉をひそめて、何かを言おうとしたけど、しばらくの沈黙の後「部活だから」と一言だけ言って、教室から出ていってしまった。
「ごめんね」が言えなかった。
たった一言が、言えなかった。なぜなら、海君はそんなことを言っても許してくれないと思ったから。僕がそのごめんに込めた薄っぺらな気持ちを、見抜かれて、僕が何に対して謝るべきなのか本当は分かっていないことを……見透かされたようだったから。
言葉だけで、許してもらおうとした醜い僕の気持ちを、海君は嫌だと思ったに違いない。
「あぁ……僕、もう海君に嫌われてたのか、そっか、気づいてなかった。謝れば前みたいに戻れるって思ってた……バカだなぁ、戻れないんだ、だって海君は僕のこと嫌いになっちゃったんだもん」
なんで、許してもらえるなんて思ったんだろう。あんなに全身で、僕を拒絶してる海君に、どうして簡単に許されるなんて甘いこと思ったんだろう。
「そっか……もう、無理だったんだ、そっか」
僕は一人で納得した。砂漠を歩く人みたいに喉がカラカラだった。指先が震えてて、恥ずかしいくらい震えてて、こんな怖いことが有ることを知った。
海君は僕をもう嫌い。
僕ももう海君を好きでいちゃいけない。
もうこれから先、僕が海君と話すことはないのだと思ったら……怖くて怖くて怖くて怖すぎて……震えが止まらなかった。

