不毛だと言われても、百年先まで君が好き

 僕と海君は、そんな風に出会った。いや、もう出会っていたのだけれど、しっかりと出会ったのは、僕が海君の好きな人を聞き出した日だってこと。

 小学3年生の放課後。

 そこから、海君と僕は急激に仲良くなって、ミオちゃんと喋るより、海君とばっかり喋るようになった。僕が海君と遊ぶようになってから、ミオちゃんはあんまり喋りかけてこなくなった。ちょうど、男女で別れて遊ぶようになった時期とも重なって、なんとなく、ミオちゃんに海君の好きな人を教えないまま、時が過ぎた。

 海君は色んなことを知っていて、いつも遊ぶ皆がいる公園じゃなくて、少し遠い丘の上の見晴らしの良い公園に連れて行ってくれたり、飼ってる猫の写真を見せてくれたり、ボール遊びのコツも教えてくれた。

 僕がトロくさくて、いつも必死についてくるのを、ニコニコ笑顔で、手を貸してくれたり、ちゃんと待ってて、助けてくれて、僕たちは幸福な幼少期を平和で、安らかで、楽しく過ごした。

 その先にある中学時代も相変わらずで、海君はどんどんカッコ良くなっていったし、僕は相変わらずのんびりと海君のそばにいた。


 中学3年生のある時、教室の片隅で、海君が、僕に高校はどこへ行くのかと聞いた。

 「なぁ、サツキ、高校は何処へ行くんだ?」
 「んと、たぶん坂之上高校かなぁ……近いし」
 「そっか」
 「海君は?」
 「俺も同じ」
 「そうなの? 良かった」

 最近の海君は、小学生の時より背がぐーんと伸びて、クラスで一番背が高くなった。バスケで、背が高いと、ゴール下のセンターって役割を担うことが多いらしいけど、海くんは好きな漫画の主人公と同じポイントガードが良いんだって。前に、海君が出てる試合を見に行ったことがあるのだけれど、海君は遠い所から軽々とシュート決めてて凄くかっこ良かった。
 どうしてあんなことができるの? って聞いたら、毎日練習何回もやるからだよって、そっか天才だからできるのかと思ってたけど、努力の賜物だったんだね。

 「あれ?でも、海君、スポーツ推薦で私立とか行かなくていいの?」
 「んーーうち、そんな金ないし、受験するよ」
 「そうなんだ、じゃ一緒だね」

 海君みたいな人が、僕と同じ高校へ行くなんて不思議。また三年間、同じ道を歩いていけるのかと思うととってもワクワクした。ずっと一緒で嬉しいな。

 そう言えば、昔は海君、僕のこと好きっていっぱい言ってくれたけど、最近言わなくなった。僕はもちろん、海君のことずっと好きだけど、海くんはまだ僕を好きでいてくれるのかな?

 カッコいい海君。女子に人気の海くん。僕の自慢の友達の海くん。

 「どうした?」
 「ん、海君、カッコいいなって思ってた」
 「──っ、ばか」

 海君が、赤くなって、ふいってそっぽ向いちゃった。海くん、いつも注目されてるのに、意外と照れ屋さんなんだもん。真っ赤な耳が可愛いな。

 「サツキだって……」
 「ん?」
 「綺麗になった……と、思う」
 「綺麗? 僕が?」
 「うん、なんか、どんどん雰囲気とか、仕草とか、静かで落ち着いてて、俺みたいにガサツじゃなくて、もともとそうだったけど……最近は、ちょっと、なんか、お前といると変な気持ちになってくる」
 「ふーん、変な気持ち?」
 「なんか……閉じ込めたくなるっていうか」

 海君、僕を閉じ込めたりしないくない? 意地悪なんか一回もされたことないのに、変なこと言うなぁ。


 ふふって、笑うと、海君も、へへって笑った。僕たち、ずっと一緒に大きくなって、これから先もずっと一緒に居られたら良いのにな。キラキラしてる海くんずっと見てたいよ。テレビよりも、漫画や小説よりも、海君を見てるのは楽しい。僕にできないこと、なんでもひょいひょいできちゃう海君。

 そんな海君と友達なのが誇らしい。僕の唯一の自慢なんだ。