何度も、何度も鳴る着信音。止めるには、切るか出るかしかない。こんな時までのろまな僕はどっちにすべきか決められなくて……振り切るように、スマホを置いて外へ出た。
家の玄関の扉を閉じたら、着信音が聞こえなくなった。少しホッとする。答えを先延ばしにしているだけなのは、わかっていた。
とぼとぼとしばらく歩いて辿り着いた公園のベンチに座った。桜の季節でもない、枯れ木のような樹の下、ただぼんやりと空を見上げ、星をみた。僕は幸いにも、目だけは良かった。
ニュースで、流星群が見られるとかいってたっけ。
「サツキ?」
呼ばれて振り向くと、なんと海君が立っていた。そっか、この公園は海君の家の近くの公園だった。
「海君……あ、お帰り」
「うん、ただいま。スマホ持ってないの?」
「家に」
「出ないから心配した」
「ごめん」
良いよと、言いながら海君は僕の隣に座った。
「寒くない? 何してたの?」
「流星群……を見ようと思って」
「そっか」
嘘ばっかりつく。しばらく無言で空を見てた。流星群なんかちっとも流れない。海君が、沈黙を破った。
「俺さ、このままバスケ続けてプロになりたいけど、俺の未来の隣には、サツキにずっといて欲しいんだ」
「……」
「なんでか分かる?」
なんでかなんて、分からない。分からないから苦しくてどうしたらいいか分からなかった。僕はふるふると首を振った。海君は、僕の頭をそっと撫でた。
「好きだからだよ」
「でも……」
「好きなことって、どんなことがあっても続けられるって俺は知ってる。苦しくてもつらくても、もっと上手くなりたいとか、やれること増やしたいとか。サツキとの関係も、もっと深めていつか家族になりたいんだ」
「でも」
──僕では家族を作ってあげられないんだよ。
海君は、目を細めて僕の顔を覗き込んだ。優しい眼差しで見つめられると、大好きすぎて涙が出そうだった。僕の泣きそうな顔を見つめたまま、海君は穏やかな声で話してくれた。
「野村さんから、さっき電話があったんだ。サツキを傷つけたかもって、またかよって思ったけど……こういう問題って、いつかはぶつかるのかなって、じゃぁ今、考えようって思いながら歩いてたんだ」
なに、だんまりしてるんだよーって、ほっぺを軽く引っ張られる。そのまま、むにむにされて、海君は真剣な目をした。
「サツキとの未来を不毛なんて思わない」
「あ……」
「サツキは子供欲しいとか思う? 俺は自分のこと育てるので精一杯、あとはサツキのことだけ考えてたい。我が儘かもしれないけど、本音なんだ。だから、俺の未来に子供は要らない、サツキだけいればいい」
「海君」
僕の迷いを断ち切るその言葉に、僕は顔を歪めた。言わせてないだろうか、彼の未来を狭めてないだろうか。
「俺たちがまだ未成年だから未来に不安になるかもだけど、俺の気持ちは何年先も変わらないよ。五年後もきっとその先もサツキとバスケのことばっかり考えてる……好きだから。信じて」
「僕もだよ、僕も海君しかなくて、僕なんにもなくて、海君が幸せでいてくれたらよくて、別れたら幸せになるのかなとか、考えて、でも嫌で、電話でれなくて」
「やっと本音言ったな」
海君が僕をぎゅっと抱き締めてくれた。
「俺の好きなサツキが、俺のことばっかり考えててくれるなんて最高すぎる、嬉しい。でも、不安にさせてごめんね」
「あの綺麗なマネージャーさんとかのこと、ちっとも好きじゃないの?」
「マネージャー? あーー前田さんか。なんだ、サツキ、嫉妬までしてくれたの? 嬉しい。他の誰のこともサツキみたいに好きになれないよ、あの人のせいで嫌な気持ちになったなら距離もっと置く、ごめん意識してなさすぎて気づいてなかった」
びっくりすることに、海君はあんなにあからさまな好意に気づいていなかったらしい。
「海君って、意外と鈍感なんだね」
「そーーかも、なんせ、本命の気持ちにずっと気づかなかったからな……はぁ、サツキが俺のこと好きになってくれて良かった」
心底情けなそうな声でぼやくから、笑いを堪えきれなくて、笑ってしまった。
「海君、海君、じゃぁずっと一緒にいようね」
「もちろん。むしろ絶対離れない。サツキと居られるなら何だってできそう、ウィンターカップも頑張る、さ、帰ろ! 俺、もう腹ペコ」
「うん」
僕たちは、手を繋いで歩き出した。空には流星群が流れていたかもしれないけど、僕は海君の顔ばっかり見てて、ちっとも気づかなかった。
来年も、再来年も、その先も……何度星が瞬いて、月が沈んで太陽が昇っても僕はやっぱり海君ばかり見ているような気がする。三つ子の魂百までって本当なのかも。不毛な恋だって言われても百年先まできっと海君が好き。たぶんずっと永遠に──。
家の玄関の扉を閉じたら、着信音が聞こえなくなった。少しホッとする。答えを先延ばしにしているだけなのは、わかっていた。
とぼとぼとしばらく歩いて辿り着いた公園のベンチに座った。桜の季節でもない、枯れ木のような樹の下、ただぼんやりと空を見上げ、星をみた。僕は幸いにも、目だけは良かった。
ニュースで、流星群が見られるとかいってたっけ。
「サツキ?」
呼ばれて振り向くと、なんと海君が立っていた。そっか、この公園は海君の家の近くの公園だった。
「海君……あ、お帰り」
「うん、ただいま。スマホ持ってないの?」
「家に」
「出ないから心配した」
「ごめん」
良いよと、言いながら海君は僕の隣に座った。
「寒くない? 何してたの?」
「流星群……を見ようと思って」
「そっか」
嘘ばっかりつく。しばらく無言で空を見てた。流星群なんかちっとも流れない。海君が、沈黙を破った。
「俺さ、このままバスケ続けてプロになりたいけど、俺の未来の隣には、サツキにずっといて欲しいんだ」
「……」
「なんでか分かる?」
なんでかなんて、分からない。分からないから苦しくてどうしたらいいか分からなかった。僕はふるふると首を振った。海君は、僕の頭をそっと撫でた。
「好きだからだよ」
「でも……」
「好きなことって、どんなことがあっても続けられるって俺は知ってる。苦しくてもつらくても、もっと上手くなりたいとか、やれること増やしたいとか。サツキとの関係も、もっと深めていつか家族になりたいんだ」
「でも」
──僕では家族を作ってあげられないんだよ。
海君は、目を細めて僕の顔を覗き込んだ。優しい眼差しで見つめられると、大好きすぎて涙が出そうだった。僕の泣きそうな顔を見つめたまま、海君は穏やかな声で話してくれた。
「野村さんから、さっき電話があったんだ。サツキを傷つけたかもって、またかよって思ったけど……こういう問題って、いつかはぶつかるのかなって、じゃぁ今、考えようって思いながら歩いてたんだ」
なに、だんまりしてるんだよーって、ほっぺを軽く引っ張られる。そのまま、むにむにされて、海君は真剣な目をした。
「サツキとの未来を不毛なんて思わない」
「あ……」
「サツキは子供欲しいとか思う? 俺は自分のこと育てるので精一杯、あとはサツキのことだけ考えてたい。我が儘かもしれないけど、本音なんだ。だから、俺の未来に子供は要らない、サツキだけいればいい」
「海君」
僕の迷いを断ち切るその言葉に、僕は顔を歪めた。言わせてないだろうか、彼の未来を狭めてないだろうか。
「俺たちがまだ未成年だから未来に不安になるかもだけど、俺の気持ちは何年先も変わらないよ。五年後もきっとその先もサツキとバスケのことばっかり考えてる……好きだから。信じて」
「僕もだよ、僕も海君しかなくて、僕なんにもなくて、海君が幸せでいてくれたらよくて、別れたら幸せになるのかなとか、考えて、でも嫌で、電話でれなくて」
「やっと本音言ったな」
海君が僕をぎゅっと抱き締めてくれた。
「俺の好きなサツキが、俺のことばっかり考えててくれるなんて最高すぎる、嬉しい。でも、不安にさせてごめんね」
「あの綺麗なマネージャーさんとかのこと、ちっとも好きじゃないの?」
「マネージャー? あーー前田さんか。なんだ、サツキ、嫉妬までしてくれたの? 嬉しい。他の誰のこともサツキみたいに好きになれないよ、あの人のせいで嫌な気持ちになったなら距離もっと置く、ごめん意識してなさすぎて気づいてなかった」
びっくりすることに、海君はあんなにあからさまな好意に気づいていなかったらしい。
「海君って、意外と鈍感なんだね」
「そーーかも、なんせ、本命の気持ちにずっと気づかなかったからな……はぁ、サツキが俺のこと好きになってくれて良かった」
心底情けなそうな声でぼやくから、笑いを堪えきれなくて、笑ってしまった。
「海君、海君、じゃぁずっと一緒にいようね」
「もちろん。むしろ絶対離れない。サツキと居られるなら何だってできそう、ウィンターカップも頑張る、さ、帰ろ! 俺、もう腹ペコ」
「うん」
僕たちは、手を繋いで歩き出した。空には流星群が流れていたかもしれないけど、僕は海君の顔ばっかり見てて、ちっとも気づかなかった。
来年も、再来年も、その先も……何度星が瞬いて、月が沈んで太陽が昇っても僕はやっぱり海君ばかり見ているような気がする。三つ子の魂百までって本当なのかも。不毛な恋だって言われても百年先まできっと海君が好き。たぶんずっと永遠に──。

