不毛だと言われても、百年先まで君が好き

 翌日、学校へ海君と二人で登校した。これはもう僕達の仲が元に戻ったって宣言するようなもので……道ですれ違う女子達が『見た?』と顔を見合わす中歩く。海君は始終ご機嫌で、僕も嬉しさがこぼれていたかもしれない。

 教室に入ると、僕を見つけたミオちゃんが駆け寄ってきた。いかにも言いたいことが山ほどあるみたいな顔で、僕の襟首をつかまえ廊下の片隅に連行された。何をそんなに焦っているの? と聞こうと思ったら、振り返ったミオちゃんに先手を打たれた。

 「ちょっと、サッちゃん、どういう事か説明してくれる? あんたもう海君に告白しちゃったの? どうなの?」
 「う、うん。昨日、帰り道で海君と会っちゃって」
 「じゃぁ、両想いになれたのね? ならなんで、昨日のうちにメールくらいしないのよ、教えてくれてもよくない? いきなり二人のラブラブな姿を見る羽目になった私の気持ちも考えてよ、あんたってば本当に頭の中お花畑なんだから」
 「サツキを苛めないでよ」

 急に海君が、僕の頭の上に顎をおいて僕の背後から抱き締めてきた。独占欲強めな抱き締め方に、僕は赤面してしまう。ミオちゃんがムッとした顔をする。

 「苛めてなんかないわよ、ねぇ、サッちゃん」
 「う、うん、相談してただけだよ」

 あわあわと僕が焦ってミオちゃんを庇ったら、海君は少し面白くなさそう。

 「サツキは俺のだから、野村さんあんま連れ回さないで」
 「うわーーいきなり独占欲丸出し……まぁ、サッちゃんみたいなボケーっとしてるのには、それくらいグイグイいってもらわないとね、じゃ、もう行く。良かったね、サッちゃん」

 ミオちゃんがあっさり僕らと関わるのを止め、手を振って教室へ入っていった。彼女の清々しい退場を見送って、僕は背後の海君を見上げた。

 「海君、ミオちゃんとは本当になんでもないんだよ」
 「分かってるけど……昔っから、仲良いし、俺もうサツキと離れたくないから牽制しちゃった、ごめん」
 「んーん、離れたくないのは僕もだよ」
 「今は部活最後の試合に向けて厳しくなってて、帰り一緒に帰れないし」

 はーーっと、溜め息を吐いた海君は、誰も見てないのを良いことに僕の頬にちゅっと、一瞬キスをした。

 「う、海君、見られちゃうよ」
 「大丈夫、ポイントガードの視野の広さなめないで、確認済み、誰もいません」
 「ふふ、海君ってば……部活、ウィンターに出るの?」
 「うん」

 ずっと夢だった高校最後の晴れ舞台。バスケの試合ウィンターカップに向けて海君は日夜練習に励んでいるのだ。

 「海君はプロ、目指してるんだよね」
 「うん」

 凄いなと思う。小さな頃からブレないでずっと一つのことをやれるって、本当に尊敬する。

 「海君はすごいね、ずっとバスケしてて」
 「それ以外何をしたら良いか分からないから、それに期待にも応えたいし、キャプテンだし、やるしかないんだ」
 「責任感があるんだね」

 海君は優しいから応援してくれる人の為にも頑張るんだね。

 将来の夢に向かって着実に歩いている海君や、ミオちゃんが大人に思えた。

 ちょうどチャイムが鳴って、海君は名残惜しそうに僕を手放した。

 「じゃ、そろそろ教室行くか。お昼一緒に食べよう」
 「うん」

 海君は三組で、僕はミオちゃんと同じクラスの五組。階が違うから海君は階段を二段飛ばしで降りて行った。運動神経相変わらず抜群。

 教室に入って、窓際の席に座って窓の外の雲を見る。青空に薄いベールみたいな雲がゆっくりと流れていた。

 ──僕は将来の夢がなくて……

 そのことが何だか凄く不安になった。