灰になったおじさんーーグルートライヒ帝国譚ーー

 窓から、華やかなラッパの音が聞こえてきた。
 リーリエはつい、執筆の手を止める。音の方を見やれば、青空の中に国旗の赤が眩しい。

 グルートライヒ帝国の、建国20周年の式典だ。鳴り響いた高い音色は、開幕の合図か。

 陛下が見たかった景色だと、リーリエはため息をついた。あの式典の中央にいるはずだった英雄王は、もういない。

 もしも、国にとっての真実が、この目で見た現実と違っていたとしたら。
 国を想う真実同士がぶつかり、片方が嘘にされてしまうとしたら。

 果たして、何を「真実」とするべきだろうか。

 国歌の演奏が始まった。軍楽隊と、学生合唱団が並んでいる。
 歌い慣れたその曲をつい口ずさみながら、リーリエは再び筆を動かした。

 彼女が見た英雄王の最期を、書き記すために。

 果たして彼女の記録を読み終えた時、貴方は何を「真実」だと感じるだろうか——。