なかたかなげーむ

 【なかたかな→】

 モニターの文字の上には、また。
 カウントダウン。
 
 【30】
 【29】

 モニターを見つめる私の視界の端を。
 放物線を描き、前へ飛んでいく。
 『カナ』の頭。
 爆風。熱。のためか。
 皮が爛れ。皮が捲れ。
 表情は、もう、見えない。

 【28】

 カウントダウンを、ちらと確認して。
 モニターの中でなく、現実の方。
 前も後ろも上も下も。
 赤黒くなった球体が。
 落下して。
 危ない。
 人に。
 ぶつ、

 ごっ。
 ぼんっ。

 肩の所に、頭がぶつかって。
 首輪が、光った。
 頭に降られた人の頭が、また。
 飛んだ。

 【30】
 【なかたかな→なかたかな→】
 【29】
 【なかたかな→なかたかな→】

 真ん中のモニターが一瞬光り。
 画面が切り替わる。
 モニターの一つ、今飛んだばかりの頭の。 
 断面が鮮やかな、『華菜』のゼッケンをした体を映す。
 『華菜』の頭は、肩にぶつかられたせいか。
 低い弾道を描いて。また。
 別の人の首元に。

 がっ。
 ぼんっ。

 【30】
 【なかたかな→なかたかな→なかたかな→】

 飛んだ三人目の頭は、頭突きの玉突き。

 ぼんっ。
 ぼんっ。

 【なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→】

 『佳那』と『花成』の首切り死体が。
 モニターに映る。
「うわああああん」
 『カナ』が死んだことを理解したのか。 
 『かな』が泣いたのを皮切りに。
 ここでやっと。堰が切れた。

「きゃあっ」「いやっ」「やだっ」「どいてっ」
 逃げる人と惑う人との混沌の中。
 ぶつかりあい、倒れる人。
 床に頭を打ちつけた、人の頭は。
 首輪が衝撃を受けたせいか。

 ぼんっ。
 
 地面すれすれを飛ぶ頭に、足をすくわれ。
 よろける人。掴まられ転ぶ人。

 ぼんっ。
 ぼんっ。

 見えていない背中の方でも騒乱。

 ぼんっ。
 ぼんっ。

 【なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→なかたかな→】

 モニターの【なかたかな→】と。
 現実の『なかたかな』の死体が。
 積み上がっていく。
 私は逃げた。
 飛び交う頭と頭と頭の中を。

 そして。真っ白な壁。

 壁を背にして頭が飛んでこないか備える。
 モニターには、また。
 【なかたかな→】
 が増えている。
 カウントは、
 【26】
 を見る前に。
 【30】
 に戻る。
 自分の呼吸する音が聞こえる。
 『奏音』と書かれたゼッケンが。
 大きく上下している。
 爆発音。また飛んだ。
 元いた場所に目をやると。
 『かな』と書かれた子供に誰かが。
 声をかけ。手を取り、抱き上げ。
 逃げていくのが見えた。
 【27】が【30】に。
 【28】が【30】に。
 数字が切り替わるのに。
 何秒もかかる気がした。
 息を整える。

 誰か。どこかのなかたかなが叫んだ。
「同じ名前の人がいるっ。同じ漢字の人がいるっ」
 漢字?
 名前?
 ゼッケン!
 私は見まわした。
 いた。

 『佳奈』と『佳奈』が。
 いた。