狭い。暗い。怖い。苦しい。嫌だ、嫌だ——。スッと伸びてくる手が、また私の首にかかる。冷たい指先が皮膚に触れた瞬間、息が止まる。
「ひよ」
呼ぶ声は、やっぱり——。
「はぁ、はぁ……またか」
跳ね起きた体は汗でびっしょり。心臓が脈打つように早くて、胸の奥がぎゅっと痛む。首をそっとさすりながら、時計を見る4時か。二度寝も出来そうにないし、シャワー浴びよう。足音を立てないよう静かに階段をおりて脱衣所に入り服を脱ぐ。シャワーの蛇口を捻ると熱めのお湯が頭を少しスッキリさせてくれる。朝陽なのか、夕燈なのか……わからない。でも、あの感触は夢にしては生々しすぎる。顔を合わせたくない。身体を拭いて髪を乾かす。それから部屋に戻り制服に着替える。——先に行こう。
「おはよう。ひより、ずいぶん早いのね」
母が驚いたようにこちらを見る。
「うん、目覚めたから早めに行く」
「朝ご飯は?」
トーストと目玉焼き、サラダ、イチゴジャムののったヨーグルトが並ぶ。いつもなら嬉しいはずの朝ご飯なのに、今日は胸が重い。
「ごめん、食欲なくて……ヨーグルトだけでいい」
「大丈夫?学校休めば?」
母が心配そうに覗き込む。
「大丈夫。いただきます」
ヨーグルトを数口食べる。味はするのに、喉を通る感覚が薄い。
「ごちそうさま。もう行く」
「お兄ちゃん達と行かないの?」
背中越しに母の声が聞こえたが、
「うん、いい」
「悲しむわよ?」
母が困ったように笑う。
「いいよ」
短く言って、カバンを手に取る。今は顔を合わせたくない。悪夢のせいで眠れない日々。殺される夢——正直しんどすぎる。
学校について、机に突っ伏す。ひんやりとした机の感覚が気持ち良い。少しだけぼーっとしていると——
「おはよ、掛上。はやいな」
「おはー」
目の前の席に勝手に腰掛けるのは、吉川だ。
「珍しいな。兄貴達と来てないのか?」
頬杖をつきながらこちらを見る。
「まあ、顔合わせ辛くて」
そう言いながら、机の淵を指でなぞる。指先が少し震えているのが、自分でもわかる。
「なんで?喧嘩?」
吉川が目を丸くする。
「ちがう……なんか変な夢みるんだよね」
「変な夢?」
「うん、殺される夢」
吉川の表情が一瞬だけ固まる。
「もしかして……その殺してくる相手、双子の兄貴なの?」
「そう、でもどっちかわからない」
吉川はグーっと伸びをしながら、真剣な目でこちらを見る。
「でもただの夢だろ?兄貴達、めっちゃくちゃ掛上のこと可愛がってるじゃん」
「え?そう?」
思わず瞬きする。可愛いがられているという感覚はなかったな。でも朝陽は口悪いけど面倒見はいい。夕燈は穏やかで優しい。普通の兄妹がどういう距離感なのかはよくわからないけれど。
「そうそう。毎日一緒に来てるし、俺は妹にあんな優しくしてねーよ」
吉川は笑いながら言う。
「そうなんだけどさー」
優しくされている。それは嬉しいけれど。それでも胸の奥がざわつく。——だって、あの手の感触は夢にしてはリアルすぎる。まるで経験したことがあるようなそんな感覚。
「ひよ」
呼ぶ声は、やっぱり——。
「はぁ、はぁ……またか」
跳ね起きた体は汗でびっしょり。心臓が脈打つように早くて、胸の奥がぎゅっと痛む。首をそっとさすりながら、時計を見る4時か。二度寝も出来そうにないし、シャワー浴びよう。足音を立てないよう静かに階段をおりて脱衣所に入り服を脱ぐ。シャワーの蛇口を捻ると熱めのお湯が頭を少しスッキリさせてくれる。朝陽なのか、夕燈なのか……わからない。でも、あの感触は夢にしては生々しすぎる。顔を合わせたくない。身体を拭いて髪を乾かす。それから部屋に戻り制服に着替える。——先に行こう。
「おはよう。ひより、ずいぶん早いのね」
母が驚いたようにこちらを見る。
「うん、目覚めたから早めに行く」
「朝ご飯は?」
トーストと目玉焼き、サラダ、イチゴジャムののったヨーグルトが並ぶ。いつもなら嬉しいはずの朝ご飯なのに、今日は胸が重い。
「ごめん、食欲なくて……ヨーグルトだけでいい」
「大丈夫?学校休めば?」
母が心配そうに覗き込む。
「大丈夫。いただきます」
ヨーグルトを数口食べる。味はするのに、喉を通る感覚が薄い。
「ごちそうさま。もう行く」
「お兄ちゃん達と行かないの?」
背中越しに母の声が聞こえたが、
「うん、いい」
「悲しむわよ?」
母が困ったように笑う。
「いいよ」
短く言って、カバンを手に取る。今は顔を合わせたくない。悪夢のせいで眠れない日々。殺される夢——正直しんどすぎる。
学校について、机に突っ伏す。ひんやりとした机の感覚が気持ち良い。少しだけぼーっとしていると——
「おはよ、掛上。はやいな」
「おはー」
目の前の席に勝手に腰掛けるのは、吉川だ。
「珍しいな。兄貴達と来てないのか?」
頬杖をつきながらこちらを見る。
「まあ、顔合わせ辛くて」
そう言いながら、机の淵を指でなぞる。指先が少し震えているのが、自分でもわかる。
「なんで?喧嘩?」
吉川が目を丸くする。
「ちがう……なんか変な夢みるんだよね」
「変な夢?」
「うん、殺される夢」
吉川の表情が一瞬だけ固まる。
「もしかして……その殺してくる相手、双子の兄貴なの?」
「そう、でもどっちかわからない」
吉川はグーっと伸びをしながら、真剣な目でこちらを見る。
「でもただの夢だろ?兄貴達、めっちゃくちゃ掛上のこと可愛がってるじゃん」
「え?そう?」
思わず瞬きする。可愛いがられているという感覚はなかったな。でも朝陽は口悪いけど面倒見はいい。夕燈は穏やかで優しい。普通の兄妹がどういう距離感なのかはよくわからないけれど。
「そうそう。毎日一緒に来てるし、俺は妹にあんな優しくしてねーよ」
吉川は笑いながら言う。
「そうなんだけどさー」
優しくされている。それは嬉しいけれど。それでも胸の奥がざわつく。——だって、あの手の感触は夢にしてはリアルすぎる。まるで経験したことがあるようなそんな感覚。

