「これ、みんなでお揃いなんだよ」
私は自分の青虫も胸の前でひょいっと掲げて見せた。
「朝燈めちゃくちゃクレーンゲーム下手でさ。三千円も突っ込んでやっと取れたんだよね」
思い出して、つい笑ってしまう。
「いうなよ」
朝陽はむすっとしながらも、耳がほんのり赤い。夕燈はそんな二人を見て、くすっと喉を鳴らした。賑やかに笑い合う空気が、部屋の中にふわっと広がる。
「そうなんだ。
その朝燈の蝶は、オオムラサキだね。」
夕燈が朝陽のマスコットを指さす。
「これ国蝶だろ?」
朝陽がつまんでひらひらさせる。
「じゃあ私のってなに?」
私は自分の蝶のマスコットを差し出す。淡い青の羽が綺麗だ。
「これはアサギマダラだね。」
「へぇー」
夕燈は嬉しそうに目を細め、少し身を乗り出して説明を続ける。
「日本で唯一の“渡り蝶”だよ。
春は南から北へ、秋は北から南へと、数千キロメートルを移動するんだ。」
「すごい、蝶々だ!」
思わず声が弾む。想像しただけで胸がわくわくする。夕燈はそんな私を見て、また柔らかく笑った。その笑顔は、まるで本物の蝶がひらりと舞ったみたいに、部屋の空気を明るくする。
コンコン、と扉を叩く音。
「夕燈、入るわよ」
ノックと同時に、母がそっと扉を開けた。部屋の空気が少しだけ引き締まる。
「夕燈、調子は?」
「大丈夫だよ」
夕燈は穏やかに微笑む。その笑顔だけで、部屋の空気がふわっと柔らかくなる。
「これ、生姜湯よ。お医者様もまだ夜は冷えるからちゃんと温かくしなさいって言ってたからね」
母が湯気の立つマグカップを差し出す。生姜の香りがふわっと広がり、夕燈は両手で丁寧に受け取った。
「ありがとう」
「……あら、朝陽もひよりもいたのね」
母は気づいたように目を細める。
「夕燈に負担かかるから、あまり長居しないでね。三人兄妹仲が良いのは良いけど」
頬に手をあててゆるりと笑う母。その言葉に、朝陽は一瞬だけ眉を動かした。だが何も言わずにすっと立ち上がった。背中越しに、少しだけ気まずさがにじむ。
「そうだね。じゃあ、おやすみ、夕燈」
名残惜しさを胸にしまいながら、私もベッドから立ち上がる。
「うん、おやすみ。ありがとう、ひよ、朝陽」
夕燈は優しく笑い、手を軽く振った。その笑顔があまりにも柔らかくて、扉を閉める瞬間まで目が離せなかった。
私は自分の青虫も胸の前でひょいっと掲げて見せた。
「朝燈めちゃくちゃクレーンゲーム下手でさ。三千円も突っ込んでやっと取れたんだよね」
思い出して、つい笑ってしまう。
「いうなよ」
朝陽はむすっとしながらも、耳がほんのり赤い。夕燈はそんな二人を見て、くすっと喉を鳴らした。賑やかに笑い合う空気が、部屋の中にふわっと広がる。
「そうなんだ。
その朝燈の蝶は、オオムラサキだね。」
夕燈が朝陽のマスコットを指さす。
「これ国蝶だろ?」
朝陽がつまんでひらひらさせる。
「じゃあ私のってなに?」
私は自分の蝶のマスコットを差し出す。淡い青の羽が綺麗だ。
「これはアサギマダラだね。」
「へぇー」
夕燈は嬉しそうに目を細め、少し身を乗り出して説明を続ける。
「日本で唯一の“渡り蝶”だよ。
春は南から北へ、秋は北から南へと、数千キロメートルを移動するんだ。」
「すごい、蝶々だ!」
思わず声が弾む。想像しただけで胸がわくわくする。夕燈はそんな私を見て、また柔らかく笑った。その笑顔は、まるで本物の蝶がひらりと舞ったみたいに、部屋の空気を明るくする。
コンコン、と扉を叩く音。
「夕燈、入るわよ」
ノックと同時に、母がそっと扉を開けた。部屋の空気が少しだけ引き締まる。
「夕燈、調子は?」
「大丈夫だよ」
夕燈は穏やかに微笑む。その笑顔だけで、部屋の空気がふわっと柔らかくなる。
「これ、生姜湯よ。お医者様もまだ夜は冷えるからちゃんと温かくしなさいって言ってたからね」
母が湯気の立つマグカップを差し出す。生姜の香りがふわっと広がり、夕燈は両手で丁寧に受け取った。
「ありがとう」
「……あら、朝陽もひよりもいたのね」
母は気づいたように目を細める。
「夕燈に負担かかるから、あまり長居しないでね。三人兄妹仲が良いのは良いけど」
頬に手をあててゆるりと笑う母。その言葉に、朝陽は一瞬だけ眉を動かした。だが何も言わずにすっと立ち上がった。背中越しに、少しだけ気まずさがにじむ。
「そうだね。じゃあ、おやすみ、夕燈」
名残惜しさを胸にしまいながら、私もベッドから立ち上がる。
「うん、おやすみ。ありがとう、ひよ、朝陽」
夕燈は優しく笑い、手を軽く振った。その笑顔があまりにも柔らかくて、扉を閉める瞬間まで目が離せなかった。
