祈りを紡ぐ明日から

進みたい道がはっきりして、それを朝陽と夕燈に伝えたとき、朝陽は短く「頑張れよ」と言い、夕燈は「応援する」と柔らかく笑った。その言葉だけで胸が熱くなったのに、二人はそれ以上に本気だった。
二人が実家に帰って来て私の部屋でテーブルいっぱいに大学のパンフレットを並べ、ページをめくるたびに真剣な顔になる。私よりも私の未来を考えてくれているようで、胸がぎゅっとなる。オープンキャンパスにも三人で行った。広いキャンパスを歩くと、周囲の学生たちがざわつく。
「え、双子?」
「イケメンすぎない?」
きゃーきゃー騒がれて目立ってて大変だったけれど、二人が左右にいてくれるだけで、不思議と心強かった。

「児童福祉司目指すなら、社会学と教育学、心理学は必須だろ。ここの心理学部は全国でも有名だよな」
朝陽がパンフレットを指で叩く。
「ここもいいよ。社会福祉学科が児童相談所と連携してる。
実習の現場研修も手厚い」
夕燈がページをめくりながら言う。
「でも、ここだと少し遠いね」
夕燈が顎に手をあてて考える。
「ならこっちは?オープンキャンパスの雰囲気も良かったし俺のアパートから電車で三十分。夕燈のアパートからも近い」
朝陽が別の大学を差し出す。
「それいいね。でも共学か……心配だなぁ」
夕燈が眉をひそめる。
「それは仕方ねぇだろ」
朝陽が肩をすくめる。二人に囲まれながら、私は未来を選んだ。志望大学も決まり、本格的に受験勉強が始まった。
そして夏がやってきた。

ひよりちゃんのお墓には、朝陽と夕燈と三人で訪れた。蝉の声が響く中、線香の煙がゆらゆらと空へ昇る。母はまだ足が進まないようだったけれど、私たち三人は静かに手を合わせた。
今年の夏は、夏期講習がぎっしり詰まっている。毎日勉強。
さらに朝陽と夕燈が勉強を教えてくれるのだが——まあ、厳しい。ちょっとサボろうとすると、朝陽からすぐ睨まれる。夕燈からはニコニコしながら圧をかけられる。優しい顔で追い詰めてくるタイプだ。……厳しい。

そんな合間を縫って、約束していたかき氷に吉川と恵那も一緒にやってきた。
「いやぁ、毎日勉強しんど」
思わず頭を抱える。
「だなー。それにしても掛上、結構いい大学目指してるんだな」
吉川がいちご練乳のかき氷を一口食べる。美味しそう。
「いやぁ、兄達二人に相談したら、私以上に真剣に選んでくれて……結果的に少し偏差値高い大学になってた」
「はは、愛されてんな〜」
吉川が笑う。
「羨ましい〜」
恵那は桃のかき氷を食べながら目を輝かせる。私は宇治抹茶のかき氷を口に含む。ふわふわで、冷たくて、ほろ苦い味がする。
「でもさ、養子って聞いても吉川そんな驚いてなかったよね?
やっぱり私似てないから?」
首を傾げる。
「いやぁ、前はさ、一緒に登下校したりして過保護だな〜とは思ってたけど。去年の今頃、二人でいたときにさ。朝陽さんと夕燈さん、すごい心配してただろ?」
吉川はスプーンを私に向ける。
「なにを?」
夕燈のことは言ってないし。胸が少しざわつく。
「妹以上というか……はじめから妹として見てねーなって。
特に夕燈さん」
ケラケラ笑う。バレてる。
「私はめっちゃびっくりしたよ!
でも、血が繋がってないなら恋人として見れるってことでしょ!?最高じゃない!?」
恵那が鼻息荒くして言う。
「はは、どうだろね」
私は曖昧に誤魔化しながらかき氷を口に含む。ほんのひとときの休息。アブラゼミの声が、夏の空に響いていた。