祈りを紡ぐ明日から

するとスマホが震えた。朝陽だ。
「もしもし!」
『もしもし。もう夕燈のアパートか?』
「うん、そうだよ! 朝陽も来るよね?」
『ああ、今向かってる。必要なものあるか?』
「さっき夕燈と買いに行ったから大丈夫だよ」
『わかった。じゃあ後でな』
通話を終えると、夕燈がキッチンから顔を覗かせる。
「朝陽、もう来るって?」
「うん、向かってるって」
「じゃあ野菜切っておこうか」
「うん」
夕燈が包丁を持った瞬間、私は思わず固まった。なんだその持ち方は…綺麗な手から血が出る予感がする。
「なに?」
「いや……なんか危なっかしい」
手、切りそう、絶対切りそう…怖い。
「え? あー、そうかなぁ」
夕燈は頬をかいて照れ笑いする。
「私やるよ。夕燈は野菜洗って。あと土鍋ある?」
そう言うと、夕燈はぱっと表情を明るくして棚を開けた。
「あるよ、じゃじゃーん」
可愛い効果音つきで取り出した土鍋は、思ったより立派だった。
「すごいね、一人暮らしなのに」
そう言うと、夕燈はふにゃりと笑う。
「朝陽とひよと鍋やろうって決めてて、すぐ買ったんだ」
胸がぎゅっとなる。変わらないな、この優しいところも、可愛いところも。
ピンポーン、とインターホンが鳴った。
「朝陽! 久しぶり」
「おう」
短く返事をして中に入ってくる。
「夕飯、何するの?」
キッチンの夕燈を見ながら朝陽が言う。
「鍋パーティーだよ」
「この時期に?」
朝陽が眉を上げる。
「だめ……かな?」
夕燈が困ったように笑うと、
「まあ、いんじゃねーの」
と朝陽は言いながら、ほら、と私に箱を差し出した。
「ん?」
「チョコレートケーキ」
「やった! ありがとう!」
私はそれをルンルンで受け取り、冷蔵庫にしまう。
「で、何鍋にするんだ?」
荷物を置いた朝陽がキッチンを覗き込む。
「……あれ、何鍋?」
「そういえば鍋の素買ってないね」
鍋の具材は買ったのに…何味にするか話をしてなかった。思わず夕燈と顔を見合わせると、朝陽が呆れたようにため息をついた。
「お前らなー」
手を洗い、冷蔵庫を開ける。
「豆乳と味噌あるな」
鶏がらスープ、水、塩、砂糖、ごま油、すりごま、朝陽は慣れた手つきでどんどん準備していく。さすが朝陽。要領が良すぎる。
完成した鍋を囲んで、一口。まろやかで優しい味が広がる。
「朝陽天才!! 美味しい!」
私はグーポーズ。
「うん、すごい美味しいね」
夕燈もほわっと笑う。
「良かったな」
朝陽は照れたように口元をゆるめた。