祈りを紡ぐ明日から

そして十一月になった。朝陽と夕燈は、今年が大学受験の年だ。朝陽は医学部、夕燈は法学部を志望している。二人ならきっと大丈夫。そんな確信が持てるほど、誰よりも努力している姿を私は知っていた。


十一月十三日。ひよりちゃんの誕生日。そして、朝陽と夕燈の誕生日も一緒に祝う日。今年も食卓には、小さなショートケーキが三つ並んでいた。
「お誕生日おめでとう」
母と父の声。いつもと変わらない光景。朝陽と夕燈の表情は今までみた誕生日会の中で一番穏やかにみえた。誰も無理に笑っていない。きっと、ひよりちゃんを想いながら、それでも今を大切に笑えている。そんな穏やかな空気が、この家を包んでいるような気がした。

そして——十一月二十一日。私の誕生日。お母さんと買い物を終え、夕暮れの商店街を歩いていると、お母さんがふと足を止めた。
「日和……ここ、寄ろうか」
指さした先には、いつものケーキ屋さん。
「うん」
ガラス越しに並ぶ色とりどりのケーキを眺めながら、お母さんは少しだけ考えるように視線を巡らせる。そして、小さく微笑んだ。
「ショートケーキ……じゃないわね」
そうつぶやいてから、私のほうを見る。
「チョコレートケーキ、買って帰ろうか」
その言葉に、胸が小さく震えた。
——私の好きなもの。“ひよりちゃん”ではなく、“日和”が好きなケーキ。初めて、お母さんが私だけを見て選んでくれた。
「……うん」
声が少しだけ震えた。それでも笑うと、お母さんも照れくさそうに笑い返してくれる。店員さんから受け取った小さな箱を、お母さんが大事そうに抱える。その隣を歩く私は、そっと歩幅を合わせた。夕焼けに染まる帰り道。肩が触れそうなくらい近くを歩くその距離が、なんだか嬉しくて。冷たいはずの十一月の風が、不思議なくらいあたたかく感じた。