なんとか文化祭は無事に閉幕した。散々な目にあった。片付けがひと段落したところで一人屋上へ上がる。夕焼け色に染まる空を見上げながら、壁にもたれかかって座り込み大きく息を吐いた。
「疲れたぁ……」
今日は本当に色々ありすぎた。正直、実行委員長なんて引き受けるんじゃなかったとも思う。今度はちゃんと朝陽の助言を聞こうと心に誓った。それでも、大きなトラブルを乗り越えて最後まで終えられたことに、胸の奥がじんわり温かくなる。ぼんやり夕焼けを眺めていると、
「ひよ、ほら」
朝陽が缶ココアを差し出してきた。
「ありがとう、朝陽」
温かな缶を両手で包み込みながら笑う。
「それにしても、囲まれてなかった?」
ランウェイが終わった瞬間、朝陽も夕燈も後輩や来場者から「写真撮ってください!」と取り囲まれ、「芸能界に興味ありませんか?」とスカウトまでされていて身動きが取れなくなっていた。
「まいてきた」
朝陽は悪びれもせず答える。
「そっか……」
さすが人気者。そう苦笑していると、
「そういえば」
朝陽がこちらを見る。
「何でも言うこと聞くんだろ?」
「あ……」
そうだった。勢いで約束してしまったんだ。
「……お、おう。ど、どんとこい!」
何を言われるのかと身構える。すると朝陽は私の前まで来ると、
「膝、貸して」
「……え?」
次の瞬間、ごろんと私の膝へ頭を乗せた。
「ちょ、ちょっと! 重い!」
「昨日、遅くまで勉強してたから眠い」
目を閉じる朝陽は、どこか疲れた表情をしていた。そういえば朝陽は医学部を目指している。その進路を初めて聞いた時は、本当に驚いた。だって、今までそんなこと一言もいってなかったから。私はそっと朝陽の髪を見つめながら口を開く。
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
「ああ」
「なんで医者を目指そうと思ったの?」
朝陽はゆっくり片目を開け、夕焼け色の空を見上げた。
「……夕燈がさ。小さい頃、喘息でつらそうだっただろ」
「うん」
学校を休むことも多く、夜中に咳き込む声が聞こえてくるたび、胸が締めつけられた。
「だからさ」
朝陽は静かに笑う。
「医者になって、病気で苦しむ子どもたちの力になりたいって思ったんだ」
少し間を置いて続ける。
「子どもが元気になれば、その子の家族も笑えるだろ。だから少しでも、誰かの幸せを増やせたらって」
初めて聞く、朝陽の本当の想いだった。夕焼けに照らされた横顔は、いつもの悪戯好きな朝陽ではなく、誰よりも優しく、まっすぐ未来を見つめる一人の青年に見えた。
「疲れたぁ……」
今日は本当に色々ありすぎた。正直、実行委員長なんて引き受けるんじゃなかったとも思う。今度はちゃんと朝陽の助言を聞こうと心に誓った。それでも、大きなトラブルを乗り越えて最後まで終えられたことに、胸の奥がじんわり温かくなる。ぼんやり夕焼けを眺めていると、
「ひよ、ほら」
朝陽が缶ココアを差し出してきた。
「ありがとう、朝陽」
温かな缶を両手で包み込みながら笑う。
「それにしても、囲まれてなかった?」
ランウェイが終わった瞬間、朝陽も夕燈も後輩や来場者から「写真撮ってください!」と取り囲まれ、「芸能界に興味ありませんか?」とスカウトまでされていて身動きが取れなくなっていた。
「まいてきた」
朝陽は悪びれもせず答える。
「そっか……」
さすが人気者。そう苦笑していると、
「そういえば」
朝陽がこちらを見る。
「何でも言うこと聞くんだろ?」
「あ……」
そうだった。勢いで約束してしまったんだ。
「……お、おう。ど、どんとこい!」
何を言われるのかと身構える。すると朝陽は私の前まで来ると、
「膝、貸して」
「……え?」
次の瞬間、ごろんと私の膝へ頭を乗せた。
「ちょ、ちょっと! 重い!」
「昨日、遅くまで勉強してたから眠い」
目を閉じる朝陽は、どこか疲れた表情をしていた。そういえば朝陽は医学部を目指している。その進路を初めて聞いた時は、本当に驚いた。だって、今までそんなこと一言もいってなかったから。私はそっと朝陽の髪を見つめながら口を開く。
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
「ああ」
「なんで医者を目指そうと思ったの?」
朝陽はゆっくり片目を開け、夕焼け色の空を見上げた。
「……夕燈がさ。小さい頃、喘息でつらそうだっただろ」
「うん」
学校を休むことも多く、夜中に咳き込む声が聞こえてくるたび、胸が締めつけられた。
「だからさ」
朝陽は静かに笑う。
「医者になって、病気で苦しむ子どもたちの力になりたいって思ったんだ」
少し間を置いて続ける。
「子どもが元気になれば、その子の家族も笑えるだろ。だから少しでも、誰かの幸せを増やせたらって」
初めて聞く、朝陽の本当の想いだった。夕焼けに照らされた横顔は、いつもの悪戯好きな朝陽ではなく、誰よりも優しく、まっすぐ未来を見つめる一人の青年に見えた。

