「私、もう行くね! ありがとう! 焼きそばとマフィン!」
そう言うと、
「うん、がんばれ〜」
夕燈はひらりと手を振った。私も笑って手を振り返し、そのまま文化祭本部へと急ぐ。廊下には楽しそうな笑い声が響き、模擬店の呼び込みやステージから流れる音楽が校舎中を包んでいた。どこも文化祭一色。そんな賑わいの中、私だけが少し早足になる。
そして、いよいよ文化祭最大の目玉イベント――今話題の人気歌手兼モデル・ララさんによるランウェイ&ミニライブの開始まで、あとわずかとなっていた。この日のために何か月も前から準備を重ね、体育館にはすでに大勢の観客が集まり始めている。絶対に成功させなきゃ。そう気持ちを引き締めた、その時だった。
「委員長、大変です!」
慌てた声に振り返ると、同じ文化祭実行委員の菅原くんが、眼鏡を押し上げながら息を切らして駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
嫌な予感が胸をよぎる。
「モデルさんが急病で、イベントに出演できなくなってしまったみたいで……!」
「えっ!? 本当に?」
思わず声が裏返る。
「はい……。お腹を壊したらしくて、今病院へ向かっているそうです」
「そ、そんな……」
血の気が引いていく。ランウェイのメインモデルが来られない。それは、このイベントの柱が一本なくなるのと同じことだった。どうしよう……。ここで中止なんて発表したら、楽しみにしてくれているお客さんも学生達もがっかりさせてしまう。頭の中で「どうしよう」が何度もぐるぐる回る。何か。何か方法はないの……?必死に考えていると、
「おい、またトラブルか?」
聞き慣れた声がして顔を上げる。
「ひよー、大丈夫?」
朝陽と夕燈が心配そうな表情で本部へ顔をのぞかせていた。
「あっ……二人とも」
張り詰めていた気持ちが少しだけ緩む。
「実はね……」
事情を説明すると、
「……今から代わりのイベントを用意するのは難しいよね」
夕燈が腕を組み、静かに考え込む。
「ああ。同じくらい盛り上がる企画なんて、急には思いつかねぇな」
朝陽も眉間にしわを寄せ、小さく息をついた。すると、
「日和〜!」
「掛上! 大丈夫か〜?」
明るい声とともに恵那と吉川がやってきた。恵那は鮮やかなチャイナ服、吉川は人気アニメのキャラクターのコスプレ姿で、二人ともいかにも文化祭を満喫している。思わず苦笑する。
「大丈夫じゃないよー。っていうか、何その楽しそうな格好」
「演劇部が衣装貸し出しやってるの! 着て写真も撮れるんだよ!」
恵那がその場でくるりと回る。
「そうそう。あとでやろうぜ」
吉川も楽しそうに笑う。
「でも、今はそれどころじゃなくて……」
事情を説明すると、吉川は「なるほどなぁ」と頷き、朝陽と夕燈へ視線を向けた。
「なら、朝陽先輩と夕燈先輩が出ればよくない?」
「「……は?」」
双子の声がぴたりと重なる。
「いや、だって先輩たち、かなり人気あるじゃん。二人がランウェイのトリを飾ったら、絶対盛り上がると思うけどな〜」
吉川は頭の後ろで腕を組み、あっけらかんと言った。
「それ、私も賛成です!」
恵那も勢いよく頷く。
「だって、お二人って伝説になるくらいモテてますよね!他校にもファンクラブあるし、プロマイドとかも出回ってますよ?」
「誰だよ、そんなことしているやつは」
朝陽が舌打ちして、夕燈は苦笑いしている。私はそんな二人を見比べた。……確かに。この双子は、とにかく顔がいい。背も高く、モデルのようにスタイルも整っている。朝陽は元生徒会長で、人望も厚く、男女問わず慕われる存在。夕燈は穏やかで誰にでも優しく、その柔らかな笑顔に惹かれる人は後を絶たない。本人はまったく自覚していないけれど、この二人が並んで歩くだけで周囲の視線を集めるほどの人気者だった。
そう言うと、
「うん、がんばれ〜」
夕燈はひらりと手を振った。私も笑って手を振り返し、そのまま文化祭本部へと急ぐ。廊下には楽しそうな笑い声が響き、模擬店の呼び込みやステージから流れる音楽が校舎中を包んでいた。どこも文化祭一色。そんな賑わいの中、私だけが少し早足になる。
そして、いよいよ文化祭最大の目玉イベント――今話題の人気歌手兼モデル・ララさんによるランウェイ&ミニライブの開始まで、あとわずかとなっていた。この日のために何か月も前から準備を重ね、体育館にはすでに大勢の観客が集まり始めている。絶対に成功させなきゃ。そう気持ちを引き締めた、その時だった。
「委員長、大変です!」
慌てた声に振り返ると、同じ文化祭実行委員の菅原くんが、眼鏡を押し上げながら息を切らして駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
嫌な予感が胸をよぎる。
「モデルさんが急病で、イベントに出演できなくなってしまったみたいで……!」
「えっ!? 本当に?」
思わず声が裏返る。
「はい……。お腹を壊したらしくて、今病院へ向かっているそうです」
「そ、そんな……」
血の気が引いていく。ランウェイのメインモデルが来られない。それは、このイベントの柱が一本なくなるのと同じことだった。どうしよう……。ここで中止なんて発表したら、楽しみにしてくれているお客さんも学生達もがっかりさせてしまう。頭の中で「どうしよう」が何度もぐるぐる回る。何か。何か方法はないの……?必死に考えていると、
「おい、またトラブルか?」
聞き慣れた声がして顔を上げる。
「ひよー、大丈夫?」
朝陽と夕燈が心配そうな表情で本部へ顔をのぞかせていた。
「あっ……二人とも」
張り詰めていた気持ちが少しだけ緩む。
「実はね……」
事情を説明すると、
「……今から代わりのイベントを用意するのは難しいよね」
夕燈が腕を組み、静かに考え込む。
「ああ。同じくらい盛り上がる企画なんて、急には思いつかねぇな」
朝陽も眉間にしわを寄せ、小さく息をついた。すると、
「日和〜!」
「掛上! 大丈夫か〜?」
明るい声とともに恵那と吉川がやってきた。恵那は鮮やかなチャイナ服、吉川は人気アニメのキャラクターのコスプレ姿で、二人ともいかにも文化祭を満喫している。思わず苦笑する。
「大丈夫じゃないよー。っていうか、何その楽しそうな格好」
「演劇部が衣装貸し出しやってるの! 着て写真も撮れるんだよ!」
恵那がその場でくるりと回る。
「そうそう。あとでやろうぜ」
吉川も楽しそうに笑う。
「でも、今はそれどころじゃなくて……」
事情を説明すると、吉川は「なるほどなぁ」と頷き、朝陽と夕燈へ視線を向けた。
「なら、朝陽先輩と夕燈先輩が出ればよくない?」
「「……は?」」
双子の声がぴたりと重なる。
「いや、だって先輩たち、かなり人気あるじゃん。二人がランウェイのトリを飾ったら、絶対盛り上がると思うけどな〜」
吉川は頭の後ろで腕を組み、あっけらかんと言った。
「それ、私も賛成です!」
恵那も勢いよく頷く。
「だって、お二人って伝説になるくらいモテてますよね!他校にもファンクラブあるし、プロマイドとかも出回ってますよ?」
「誰だよ、そんなことしているやつは」
朝陽が舌打ちして、夕燈は苦笑いしている。私はそんな二人を見比べた。……確かに。この双子は、とにかく顔がいい。背も高く、モデルのようにスタイルも整っている。朝陽は元生徒会長で、人望も厚く、男女問わず慕われる存在。夕燈は穏やかで誰にでも優しく、その柔らかな笑顔に惹かれる人は後を絶たない。本人はまったく自覚していないけれど、この二人が並んで歩くだけで周囲の視線を集めるほどの人気者だった。

