ラーメンを食べ終わり、店を出る。満腹で、体の芯までぽかぽかしていた。
「美味しかったー」
「だな」
朝陽が自然と隣に並ぶ。
「ひよ」
「なに?」
急に名前を呼ばれて横を見る。
「お前、最近寝れてないのか?」
じとっとした目でこちらを覗き込む。
「なーに?心配してくれてるのー?」
わざと茶化すように言う。
「ああ」
真っ直ぐな声に、思わず胸が跳ねた。
「別に、ちょっと面白い動画があって見てただけ」
そう言って前を向く。——朝陽かもしれない人に殺される夢なんて、言えるわけがない。口は悪いけど、ラーメン奢ってくれるし、割れなかった割り箸も交換してくれるし、意外と優しい。朝陽は何か言いたげな顔をしたけれど、すぐに口を閉じた。
「あ、朝陽!ゲーセン寄って行かない!」
あえて明るい声で、キラキラしたネオンのゲームセンターを指さす。
「…仕方ねぇーな」
頭をかきながらも、ちゃんと付き合ってくれる。ゲーセンに入ると、大音量の音楽、ギラギラした光。学生や仕事帰りの人で賑わっていて、空気が少し熱い。ふとクレーンゲームが目に入る。
「朝陽!みて!これ可愛い」
指さした先には、青虫のぬいぐるみ。丸っこくて、妙に愛嬌がある。
「青虫?可愛いか?」
「可愛いよ。やろうよ」
「よし、お兄様が取ってやる」
朝陽は自信満々にスティックを握る。だが——スカッ。アームは虚しく空を切った。
「ふふっ、センスない。交代」
「なんだよ」
私は軽く笑ってスティックを操作する。アームが青虫をしっかり挟み、ぽとん、と落とし口へ吸い込まれた。
「はい、これ朝陽に」
「お前が欲しいんじゃないのかよ」
受け取りながら、どこか照れたように眉を寄せる朝陽。私はにこっと笑った。
「朝陽が青虫持ってたら面白いじゃん」
「は?なんだその理由」
そう言いながらも、朝陽は青虫を手のひらで転がし、どこか嬉しそうに口元を緩めていた。
「これ、なんか折り返しある」
朝陽が青虫のぬいぐるみの布地を指でつまみ、くるっと折り返す。
「お……すげぇ。蝶々になった」
青虫の背中がぱっと開き、紫色の羽を持つ蝶のマスコットに変わった。ゲーセンのライトに照らされて、その羽がきらっと光る。
「かわいいね!あ、夕燈の分も取ってあげようよ」
そう言ってコインを入れようとした瞬間——
「俺がやる」
朝陽がすっと前に出た。さっきまでの軽い雰囲気とは違う、妙に真剣な横顔。アームが動き、景品をつかみ、落とし口へぽとん。
「よかったね、とれて」
「……ああ。これはひよに」
差し出されたのは、さっきの青虫と同じシリーズのぬいぐるみ。受け取ると、指先にふわっと柔らかい感触が伝わる。ひっくり返すと、淡い水色の蝶に変わった。
「ありがとう」
蝶の羽をちょんちょんと触りながら微笑む。朝陽はほんの少しだけ視線をそらした。
「でも、まさか三千円も使うとは思わなかったけど」
「だって悔しいだろ。俺だけ取れないの」
頬をかきながら言う朝陽。照れ隠しのように口元がゆるむ。
「意外と負けず嫌いだよね」
「まあな」
朝陽は笑う。その笑い方が、いつもより幼く見える。——そのせいか、あの悪夢が嘘みたいに感じてしまう。
「美味しかったー」
「だな」
朝陽が自然と隣に並ぶ。
「ひよ」
「なに?」
急に名前を呼ばれて横を見る。
「お前、最近寝れてないのか?」
じとっとした目でこちらを覗き込む。
「なーに?心配してくれてるのー?」
わざと茶化すように言う。
「ああ」
真っ直ぐな声に、思わず胸が跳ねた。
「別に、ちょっと面白い動画があって見てただけ」
そう言って前を向く。——朝陽かもしれない人に殺される夢なんて、言えるわけがない。口は悪いけど、ラーメン奢ってくれるし、割れなかった割り箸も交換してくれるし、意外と優しい。朝陽は何か言いたげな顔をしたけれど、すぐに口を閉じた。
「あ、朝陽!ゲーセン寄って行かない!」
あえて明るい声で、キラキラしたネオンのゲームセンターを指さす。
「…仕方ねぇーな」
頭をかきながらも、ちゃんと付き合ってくれる。ゲーセンに入ると、大音量の音楽、ギラギラした光。学生や仕事帰りの人で賑わっていて、空気が少し熱い。ふとクレーンゲームが目に入る。
「朝陽!みて!これ可愛い」
指さした先には、青虫のぬいぐるみ。丸っこくて、妙に愛嬌がある。
「青虫?可愛いか?」
「可愛いよ。やろうよ」
「よし、お兄様が取ってやる」
朝陽は自信満々にスティックを握る。だが——スカッ。アームは虚しく空を切った。
「ふふっ、センスない。交代」
「なんだよ」
私は軽く笑ってスティックを操作する。アームが青虫をしっかり挟み、ぽとん、と落とし口へ吸い込まれた。
「はい、これ朝陽に」
「お前が欲しいんじゃないのかよ」
受け取りながら、どこか照れたように眉を寄せる朝陽。私はにこっと笑った。
「朝陽が青虫持ってたら面白いじゃん」
「は?なんだその理由」
そう言いながらも、朝陽は青虫を手のひらで転がし、どこか嬉しそうに口元を緩めていた。
「これ、なんか折り返しある」
朝陽が青虫のぬいぐるみの布地を指でつまみ、くるっと折り返す。
「お……すげぇ。蝶々になった」
青虫の背中がぱっと開き、紫色の羽を持つ蝶のマスコットに変わった。ゲーセンのライトに照らされて、その羽がきらっと光る。
「かわいいね!あ、夕燈の分も取ってあげようよ」
そう言ってコインを入れようとした瞬間——
「俺がやる」
朝陽がすっと前に出た。さっきまでの軽い雰囲気とは違う、妙に真剣な横顔。アームが動き、景品をつかみ、落とし口へぽとん。
「よかったね、とれて」
「……ああ。これはひよに」
差し出されたのは、さっきの青虫と同じシリーズのぬいぐるみ。受け取ると、指先にふわっと柔らかい感触が伝わる。ひっくり返すと、淡い水色の蝶に変わった。
「ありがとう」
蝶の羽をちょんちょんと触りながら微笑む。朝陽はほんの少しだけ視線をそらした。
「でも、まさか三千円も使うとは思わなかったけど」
「だって悔しいだろ。俺だけ取れないの」
頬をかきながら言う朝陽。照れ隠しのように口元がゆるむ。
「意外と負けず嫌いだよね」
「まあな」
朝陽は笑う。その笑い方が、いつもより幼く見える。——そのせいか、あの悪夢が嘘みたいに感じてしまう。
