祈りを紡ぐ明日から

高校生になった。ひよがいると居心地がよかった。自然と笑えるようになった。ひよりを失った罪が消えるわけじゃない。それでも、少しずつ前を向けるようになったのは、ひよのおかげだった。


「ひよりが帰ってこないの」
母からの電話は震えていた。てっきり、もう家にいるものだと思っていた。今日は図書館で勉強すると言っていたし、帰りが遅くなるなら連絡くらい入れるはずだ。とりあえず電話をかける。……出ない。もう二十一時。いくらなんでも遅すぎる。胸騒ぎがした。もしかして、前に一緒にいた吉川ってやつといるのか。知り合いに電話をかける。
「もしもし。二年の吉川ってやつの連絡先、知らないか?……ああ、ありがとう」
教えてもらった番号へすぐに電話をかける。……出ない。学校。ゲームセンター。ショッピングモール。ラーメン屋。思いつく場所を片っ端から探し回る。そのとき、携帯が震えた。吉川からだった。
「一緒にはいません。今どこにいますか? 会えませんか?」
一緒じゃないのか。でも、何か知っている。そう確信した。指定した場所へ向かうと、
「朝陽さん!」
吉川が息を切らせながら駆け寄ってきた。
「悪いな」
「いえ……あの」
言いづらそうに視線を落とし、それでも意を決したように顔を上げる。
「八月の初めに、たまたま掛上と会って、一緒にかき氷を食べに行こうって駅へ向かったんです」
一度息をのみ込む。
「その途中で、喪服姿の朝陽さんたちを見かけました」
胸がざわつく。
「気になって……後をついて行ったんです」
嫌な予感が、現実になる。
「それで、自分が養子だって気づいて……。もしかしたら、それで」
頭を殴られたような衝撃だった。知ってしまったのか。自分が養子だということを。そして――。ひよりの代わりとして迎えられたと思い込んでしまったことを。
「ありがとう。あとは俺たちが探す」
そう言って背を向ける。
「俺も探します!」
吉川は迷わず走り出した。……いいやつだな。そんなことを思う余裕が、ほんの少しだけあった。ひよ。無事でいてくれ。今度こそ守る。もう二度と、大切な妹を失いたくない。その想いだけを胸に、俺は夜の街を駆け出した。