祈りを紡ぐ明日から

翌日。地元の図書館に朝からやってきた。優秀な兄二人に、私は凡人。腑に落ちた……。通りで似てないわけだ。だって血が繋がってないんだもん。私が養子になったのは〇年五月、六歳のころ。そして吉川が言っていた、八月末から小学校一年で転校してきたこと。時期は合う。ひよりちゃんが亡くなった日も、お墓に書いてあった。名前も、歳もわかっていたので、新聞はあっさりと見つかった。
――〇〇年八月六日。掛上ひより(五歳)。一人で河川敷近くの祠に遊びに行き、誤って窪みに足を滑らせて溺死。前日の大雨の影響で、普段は水が溜まらない場所に水が溜まっていた、と記載がある。
「事故……」
待って。事故現場って、夕燈と行った祠……あそこだったんだ。だから夕燈は花を添えて、供物も交換していた。朝陽があの場所に反応したのも、今なら頷ける。小学校に上がる前の女の子。桃色のランドセル。あれを背負うのは私ではなく彼女だったんだ。どれほど将来を楽しみにされていたんだろう。どれほど大切にされていたんだろう。その未来は、この先も続くはずだったのに。書斎から持ってきてしまった写真を見つめる。返さないとバレる……かな。両親が笑って、朝陽は不機嫌で、夕燈は控えめな笑顔。そしてその中心に写っていたのは、髪が長くて色白の可愛い女の子が満面の笑みで、ピンクの花柄ワンピースを着ている。
「大事にされるはずだったのに……」
写真をそっと撫でる。私は、この子の代わりだったんだ。いままで心配されて、大事にされてきたのは、私自身じゃない“ひより”の方だった。
私は何者なんだろう。実の母は生きてる?確か…施設の名前が書類にあった。写真を撮っていたのでスマホに残っている。住所もわかる。図書館で行き方を調べて、メモをする。行ってみよう。そうじゃなければ、きっと後悔する。まだ昼前。財布もスマホもある。私は荷物をまとめて、足早に図書館を出た。
電車で片道二時間。私は電車に乗り込む。夏休み中の車内は学生たちで賑やかだ。お祭りでもあるのか、浴衣姿の子もいる。
最寄り駅に着く。施設へはバスで行けるらしい。
「ここだ……」
木漏れ日の家。木造の建物で外観は古いけれど、子どもたちの声が聞こえる。なんて声をかければいいんだろう。急に来るなんて、今考えたら相当だめだよね。ちゃんと連絡するべきだったかも……。でも、ここまで来てしまった。