祈りを紡ぐ明日から

たどり着いたのは、お墓だった。坂を登った先に広がる墓地は見通しがよい。
「さすがについていくと目立つから、ここの影で見送ろう」
吉川の提案に頷き、ベンチに腰を下ろす。
「…なんで、ここにきたんだろう」
手が震える。誰かのお墓?祖父母?だったら私と母に黙って来る理由はない。三人の共通の知り合い?だったら、隠れるように行く必要なんてないはず。だって三人とも朝は普通の私服だった。行く時間もまばらで、わざわざ着替えを持って行った。それって――隠したかったから?誰に?なにを?疑問がどんどん溢れていく。こわい。何か私の知らないことがある。嫌な汗が背中を伝う。
「きた、奥。かくれて」
吉川がそう言い、二人で慌てて身を隠した。
「…いったぞ」
「うん」
三人がお墓から出て行ったことを確認する。
「…行くか?」
吉川が不安そうに私を見る。
「もちろん。ここまできたんだもん。確認する」
「よし、行くぞ」
二人で三人が来た方向へ歩いていく。御線香が新しい墓を探す。お盆にはまだ早いし、すぐに見つかった。そして、私はその墓を見て固まった。
「うそ…これって…」
「…」
吉川も黙っている。灰色の石に刻まれた文字が、夕陽に照らされて淡く光っていた。正面碑には「御上家之墓」。その横の側面に、小さな文字が並んでいる。
「……ひより?」
胸がひゅっと縮まった。自分と同じ響き。思わず心臓が跳ねる。
「これ……私の?」
そう思ってしまった。だって、名前が同じだから。
「いや、違う」
吉川がすぐに否定し、刻まれた文字を指さす。
俗名:ひより
享年:五歳
没年:十一年前
私はゆっくりと目を見開いた。
「……五歳。十一年前……」
自分は今十六歳。これは、私ではない。本物の“ひより”の墓だ。ひよりってだれ?なんで私と同じ名前?それに御上って……膝が少しだけ揺れた。胸の奥で、何かが静かに崩れ落ちる。
「ねぇ、これって。だれなの?私は…一体何者なの?」
膝から崩れ落ちる。
「大丈夫か?」
吉川が私の横にそっと並ぶ。