デート当日。
「夕燈じゃーん!これどう?」
くるりと回ってみせる。柔らかい黄色のワンピースがふわりと広がり、陽の光を受けて淡く輝いた。髪はハーフアップにまとめて、バレッタをひとつ。鏡の前で何度も悩んだ“デート仕様”。けれど夕燈は、困ったように眉を下げて笑った。
「すごい可愛いんだけど……動きやすい格好のがいいかな」
「え!?」
胸の奥が一瞬でしぼむ。
「探検にいくから」
「え?」
デートじゃないの?心の中で思わず叫んだ。渋々、シフォンのチュニックとズボンに着替える。鏡に映る自分は、さっきよりずっと“普通”で、ちょっとだけ悔しい。それでも夕燈と並んで歩き出すと、胸のざわつきは少しずつ薄れていった。
「調子は大丈夫?」
私は横目でそっと覗き込む。
「平気だよ。今日はすごい良い気分」
そう言って穏やかに笑う。良かった。
「そっか」
風が頬を撫で、二人の影が並んで伸びる。しばらく歩いたところで、夕燈が立ち止まった。
「ここなんだけどさ……」
「トンネル?」
川の石を渡った先、木々の間にぽっかりと口を開けた古いトンネル。昼間なのに、入口の奥は薄暗くて、ひんやりとした空気が流れてくる。
「そう、行ってみない?」
夕燈の声は、不安と期待が混ざったような響きだった。
「うん!いく!」
気づけば即答していた。探検でもなんでも、夕燈と一緒ならそれでいい。夕燈がほっとしたように微笑む。
「ありがとう……ひよ」
その声が、深く胸に響いた。川の石を、夕燈が軽やかに渡っていく。足元の不安定な石の上でも、彼の動きは驚くほど滑らかで、まるで重さを感じさせない羽のようだった。振り返った夕燈の髪が、ふわりと揺れる。
「はい、手」
当たり前のように差し出されたその手は、迷いもためらいもなく、ただ“迎えに来てくれる”手だった。
「うん!」
思わず声が弾む。そっと手を取ると、夕燈の指が自然に絡む。温かさがじんわりと伝わってきて、川の冷たい空気の中でそこだけひだまりみたいに柔らかい。石の上に足を乗せるたび、夕燈が少しだけ引き寄せて支えてくれる。
「滑るから気をつけて」
その声が近くて、胸の奥がくすぐったくなる。二人の影が水面に揺れ、手をつないだまま、ゆっくりと向こう岸へ渡っていく。
「夕燈じゃーん!これどう?」
くるりと回ってみせる。柔らかい黄色のワンピースがふわりと広がり、陽の光を受けて淡く輝いた。髪はハーフアップにまとめて、バレッタをひとつ。鏡の前で何度も悩んだ“デート仕様”。けれど夕燈は、困ったように眉を下げて笑った。
「すごい可愛いんだけど……動きやすい格好のがいいかな」
「え!?」
胸の奥が一瞬でしぼむ。
「探検にいくから」
「え?」
デートじゃないの?心の中で思わず叫んだ。渋々、シフォンのチュニックとズボンに着替える。鏡に映る自分は、さっきよりずっと“普通”で、ちょっとだけ悔しい。それでも夕燈と並んで歩き出すと、胸のざわつきは少しずつ薄れていった。
「調子は大丈夫?」
私は横目でそっと覗き込む。
「平気だよ。今日はすごい良い気分」
そう言って穏やかに笑う。良かった。
「そっか」
風が頬を撫で、二人の影が並んで伸びる。しばらく歩いたところで、夕燈が立ち止まった。
「ここなんだけどさ……」
「トンネル?」
川の石を渡った先、木々の間にぽっかりと口を開けた古いトンネル。昼間なのに、入口の奥は薄暗くて、ひんやりとした空気が流れてくる。
「そう、行ってみない?」
夕燈の声は、不安と期待が混ざったような響きだった。
「うん!いく!」
気づけば即答していた。探検でもなんでも、夕燈と一緒ならそれでいい。夕燈がほっとしたように微笑む。
「ありがとう……ひよ」
その声が、深く胸に響いた。川の石を、夕燈が軽やかに渡っていく。足元の不安定な石の上でも、彼の動きは驚くほど滑らかで、まるで重さを感じさせない羽のようだった。振り返った夕燈の髪が、ふわりと揺れる。
「はい、手」
当たり前のように差し出されたその手は、迷いもためらいもなく、ただ“迎えに来てくれる”手だった。
「うん!」
思わず声が弾む。そっと手を取ると、夕燈の指が自然に絡む。温かさがじんわりと伝わってきて、川の冷たい空気の中でそこだけひだまりみたいに柔らかい。石の上に足を乗せるたび、夕燈が少しだけ引き寄せて支えてくれる。
「滑るから気をつけて」
その声が近くて、胸の奥がくすぐったくなる。二人の影が水面に揺れ、手をつないだまま、ゆっくりと向こう岸へ渡っていく。

