(――まただ、どうして僕はダメなんだろう……)
今日も教室に入った瞬間、クラス中の視線が痛くて呼吸が止まりそうになった。
新学期の朝、高校三年生の教室の戸を開けた瞬間から、僕――天野遥の脳内は非常事態を告げる警報音が鳴り響いていた。
既にそれぞれのグループを作って盛り上がっているクラスメイトたちの中心を、まるで地雷原でも歩くような形で歩いていく。
一目散に向かったのは教室の最果て、一番端っこ、一番後ろの窓際(と言う隅っこ)と言う、ボッチにとっての絶対安全圏だった。
(頼むから誰もこっちを見ないでくれ……! 存在を消してくれ……!)
心の中で盛大に土下座をしながら、机に愛用の鞄をドンと乱暴に置きつつ、即座にカバンから英語の教科書を取り出して広げる。
そのまま無意識に背筋をピンと伸ばし、微動だにしない完璧な、偽りの自分を作り上げたのである。
だが、その内実は冷や汗まみれだ。
周囲のクラスメイトたちは、僕のこの引きこもり気味な挙動を勝手に言ってくる。
「天野っていつも冷静だよな?」
「一匹狼って感じで、なんかクールでカッコよくね?」
周りの人間たちはそのように、都合のいいように美化して噂している。
全く持って、ふざけた話だ。
僕の内心はこうだ。
——誰かこっちを向いたらどうしよう
——もし声をかけられたら、絶対声が裏返って一生の笑いものになる。
そのように内心自分の中では恐怖に満ちたパニック状態なのだから。
僕は別にクールでも一匹狼でも何でもない。
ただの重度の人見知りによる生存戦略にすぎないというのに、誰もその真実に気づいてはくれない。
視界の端で、クラスのグループがスマホを見せ合いながらキャッキャと笑い合っているのが見えた。
僕も、あんな風に自然に輪に入れたならどれほど楽だろうと考えてしまう。
けれど、僕の足は、そして喉は、恐怖でガチガチに固まったままだ。
(今日も一日、何事も起きませんように……)
僕は誰にも聞こえない声で小さく祈りながら、引き攣りそうな頬を必死に教科書の影に隠した。
そうしているうちにいつの間にか朝のホームルームが終わり、最初の短い休み時間がやってきた。
周りを見渡せば、生徒達の会話が聞こえてくる。
どうやら昨日のアニメをしているらしい。
「昨日のお前のアニメ見たか?」
「マジ神回だったよな!」
あちこちで華やかなスクールカーストの会話が飛び交っており、そんな青春のど真ん中から切り離された僕の周囲半径二メートルだけは、なぜかぽっかりと空気が凍りついていた。
いや、正確に言えば、僕が放つ話しかけるなオーラ(※本体はただの怯え)のせいで、誰も近寄れないだけなのだが。
同時に、生徒達が話していたアニメの件で、気づかれないようい頷いてしまった。
(うん、僕もそのアニメ見た!最高だったよ、マジで神回だった……最高、最高なんだけど……その件について誰も話す相手がいないなんて……)
僕は静かに心の中で深いため息をつく。
人と話さなくていいのは救いだが、このまま高校最後の三年間を誰とも会話せずに卒業したら僕の青春と言うモノは一体どこへ消えるのだろう?
かといって、いざ誰かが話しかけてきたら、心臓が口から飛び出てそのまま気絶しかねない――つまり、詰んでいる。八方塞がりだ。
幼い頃から、このような性格だった。おかげで友達と言うモノなんて誰一人いない。
ああ、どうしてこんな性格になってしまったんだろう、僕は——そんな事を考えていると、喉がカラカラと乾いてきた。
僕はそのまま机のフックに掛けた水筒から、中の見えない金属の蓋を外してぬるくなった麦茶をちびちびと口に含んで、乾いた喉を誤魔化した。
誤魔化しながら、僕はこんな自分が嫌だと考えながら、再度深いため息を吐いた。
今日も教室に入った瞬間、クラス中の視線が痛くて呼吸が止まりそうになった。
新学期の朝、高校三年生の教室の戸を開けた瞬間から、僕――天野遥の脳内は非常事態を告げる警報音が鳴り響いていた。
既にそれぞれのグループを作って盛り上がっているクラスメイトたちの中心を、まるで地雷原でも歩くような形で歩いていく。
一目散に向かったのは教室の最果て、一番端っこ、一番後ろの窓際(と言う隅っこ)と言う、ボッチにとっての絶対安全圏だった。
(頼むから誰もこっちを見ないでくれ……! 存在を消してくれ……!)
心の中で盛大に土下座をしながら、机に愛用の鞄をドンと乱暴に置きつつ、即座にカバンから英語の教科書を取り出して広げる。
そのまま無意識に背筋をピンと伸ばし、微動だにしない完璧な、偽りの自分を作り上げたのである。
だが、その内実は冷や汗まみれだ。
周囲のクラスメイトたちは、僕のこの引きこもり気味な挙動を勝手に言ってくる。
「天野っていつも冷静だよな?」
「一匹狼って感じで、なんかクールでカッコよくね?」
周りの人間たちはそのように、都合のいいように美化して噂している。
全く持って、ふざけた話だ。
僕の内心はこうだ。
——誰かこっちを向いたらどうしよう
——もし声をかけられたら、絶対声が裏返って一生の笑いものになる。
そのように内心自分の中では恐怖に満ちたパニック状態なのだから。
僕は別にクールでも一匹狼でも何でもない。
ただの重度の人見知りによる生存戦略にすぎないというのに、誰もその真実に気づいてはくれない。
視界の端で、クラスのグループがスマホを見せ合いながらキャッキャと笑い合っているのが見えた。
僕も、あんな風に自然に輪に入れたならどれほど楽だろうと考えてしまう。
けれど、僕の足は、そして喉は、恐怖でガチガチに固まったままだ。
(今日も一日、何事も起きませんように……)
僕は誰にも聞こえない声で小さく祈りながら、引き攣りそうな頬を必死に教科書の影に隠した。
そうしているうちにいつの間にか朝のホームルームが終わり、最初の短い休み時間がやってきた。
周りを見渡せば、生徒達の会話が聞こえてくる。
どうやら昨日のアニメをしているらしい。
「昨日のお前のアニメ見たか?」
「マジ神回だったよな!」
あちこちで華やかなスクールカーストの会話が飛び交っており、そんな青春のど真ん中から切り離された僕の周囲半径二メートルだけは、なぜかぽっかりと空気が凍りついていた。
いや、正確に言えば、僕が放つ話しかけるなオーラ(※本体はただの怯え)のせいで、誰も近寄れないだけなのだが。
同時に、生徒達が話していたアニメの件で、気づかれないようい頷いてしまった。
(うん、僕もそのアニメ見た!最高だったよ、マジで神回だった……最高、最高なんだけど……その件について誰も話す相手がいないなんて……)
僕は静かに心の中で深いため息をつく。
人と話さなくていいのは救いだが、このまま高校最後の三年間を誰とも会話せずに卒業したら僕の青春と言うモノは一体どこへ消えるのだろう?
かといって、いざ誰かが話しかけてきたら、心臓が口から飛び出てそのまま気絶しかねない――つまり、詰んでいる。八方塞がりだ。
幼い頃から、このような性格だった。おかげで友達と言うモノなんて誰一人いない。
ああ、どうしてこんな性格になってしまったんだろう、僕は——そんな事を考えていると、喉がカラカラと乾いてきた。
僕はそのまま机のフックに掛けた水筒から、中の見えない金属の蓋を外してぬるくなった麦茶をちびちびと口に含んで、乾いた喉を誤魔化した。
誤魔化しながら、僕はこんな自分が嫌だと考えながら、再度深いため息を吐いた。



