君と僕だけの星空


 都内の小さな喫茶店。






 週刊誌の記事を書き上げた記者、藤原は、店内のテレビ画面を見つめていた。









 番組は悪意を持って二人を貶めようとしたわけではない。むしろ、残された遺族の悲しみに寄り添い、視聴者に事件の痛ましさを伝えようと、真面目に、丁寧に作られていた。









 だが、その「丁寧な取材」と「思いやり」によって組み上げられたのは、やはり『恵まれた光の青年と、孤立した影の青年』『信じていた友人に裏切られた悲劇』という綺麗な構図だった。
 







周囲の証言が集まれば集まるほど、遺族や同僚が涙を流せば流すほど、事実は「分かりやすい物語」として整理されていく。











藤原は冷めたコーヒーを飲み干した。












 遺族も、工場の同僚も、テレビの出演者も、みんな真剣に悲しみ、心配し、自分なりの言葉で彼らを思って発言している。
 だが、その善意の言葉が集まれば集まるほど、肝心の当事者二人の「本当の感情」からは、遠く離れていっているような気がした。












 あの夜、公園の向かいのコンビニで、同じ缶ビールを並んで買っていた二人。











 あの静かな乾杯の意味を語れる者は、スタジオにも、茶の間にも、そして取材した自分の中にもいない。









 スマホが鳴った。デスクからだった。







『藤原、テレビ見たぞ。かなり大きく取り上げてくれたな。番組を見た読者から編集部にも反響が来てる。「辛すぎる」「どうして友人を裏切ったのか」ってな。世間の関心は最高潮だ』





「……そうですね」







『よし、次はネットの反応だ。若者たちがこの事件をどう受け止めているか、SNSや掲示板の動きをまとめろ』












「了解しました」










 藤原は電話を切り、静かに立ち上がった。










 外野の人間たちがどれほど涙を流し、どれほど悲劇として語り合おうと、容疑者の男は取調室で固く口を閉ざしたままだ。











 世間がどれほど納得のいく「物語」を作り上げようとも、当事者しか知らない真実の領域には、誰も踏み込むことができないでいた。