君と僕だけの星空

「本当は、何があったんだ……」









 小坂は誰もいない取調室の方向を見つめ、低く呟いた。








 なぜ容疑者は自ら通報しておきながら、動機については堅く口を閉ざすのか。










 なぜ周囲からどれほど責められ、どれほど歪んだ物語を貼り付けられても、一切弁明しようとしないのか。








 怒りでも、反省でも、開き直りでもない、あの静かな無表情の裏に、男は何を隠しているのか。









 警察官としてどれだけ捜査を重ねても、彼が口を開かない限り、自分たちが辿り着けるのは「事件の表面」までだ。







 どれほど論理的な解釈を立てようと、それは週刊誌やテレビ、ネットの人間たちがやっている「勝手な妄想」と大差ないのかもしれない。










 事実は変わらない。









ひとりの青年が命を落とし、ひとりの青年が通報し、逮捕された。







だが、その事実にどんな意味があり、どんな感情が流れていたのか。










それを知る手立ては、捜査機関である警察にすら残されていなかった。








小坂は冷めきった缶コーヒーを飲み干し、静まり返った署内で、再び答えの出ない捜査書類へと視線を戻した。









夜空には月だけが優しく光っていた。