君と僕だけの星空

深夜二時。冷えた蛍光灯の光が降り注ぐオフィスで、三十代半ばのサラリーマン・佐藤はカタカタとキーボードを叩いていた。











 デスクの脇には冷めきった缶コーヒーと、コンビニのサンドイッチの空き袋。連日の残業と上司からの理不尽な叱責で、頭の奥が重く痺れている。








「何やってんだろ、俺……」









 ため息をつき、作業の手を止めた。疲労でぼやける目を休めようとパソコンのブラウザを開き、なんとなくネットニュースのトップページをスクロールする。








 画面の隅に躍る見出し。









『郊外公園の薬物死事件——自首した容疑者の過去と黙秘の真相』










 連日話題になっているあの事件だった。記事を開くと、手取りの少ない中工場労働に耐えていた容疑者の男の生い立ちや、恵まれた環境で有名私立大学に通っていた被害者の対照的な境遇がまとめられていた。











 SNSのコメント欄を覗くと、世間の声は冷ややかだった。







『いくら苦しくても人を殺していい理由にはならない』



『嫉妬で友人を殺すなんて惨めすぎる』





 佐藤は画面を見つめたまま、自嘲気味に息を漏らした。











(世間様は、随分と立派だな……)












 記事に書かれた容疑者の男のプロフィールが、頭から離れなかった。手取り一五万円。頼れる家族もおらず、毎日同じ作業を繰り返し、ただ生きるためだけに働く日々。














 佐藤自身、学生時代に思い描いていた未来とは程遠い、過酷な労働環境で擦り減る毎日を送っていた。どれだけ真面目に働いても報われず、社会の片隅で誰にも気づかれずに消えていきそうな感覚。













 社会の「日陰」で息をひそめて生きる感覚を、佐藤は嫌というほど知っていた。