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はじめておとずれたとき、実家暮らしにしては、ひとけがなさすぎると不思議だった。
今となっては、納得だけどね。
そんな雪たち兄弟が暮らしていた家に、あたしはまねかれていた。
「ただいま……あれっ、ユキさん髪染めた? 黒髪もかわいいなー。てか和風美人!」
「……土に還れ」
「なんで!?」
「ふふっ、ありがとうだってー」
「意訳にも程があるぞ」
月森家にまねかれた夜、楓の帰宅と共に、お祝い会はスタートする。
「ユキさんの手料理、だと……っ!?」
「ヒマ人だったしね」
「すごいよねぇ。だれかの手料理って、何年ぶりかなぁ」
「バイト先で出してたのアレンジしただけ。あんまハードル上げないでよ」
きのこのクリームスープ、生ハムとアボカドのサラダに、モッツァレラチーズのオムライス。
デザートに、カシスソースのチョコレートケーキを用意して。
〝メイドさん手作り〟が最大のウリ。
だから、ホールに出ないメイドが実際に厨房に立つっていうのが、うちのスタンスで。
店以外で腕を振るうのなんてはじめて。変に気恥ずかしくなり、話題を逸らす。
「せっかくなんだから呑めばいいのに。パーッとお祝いするんでしょ?」
「うーん、ぼくはお酒弱くて……」
「好んで呑もうとは思わないな」
「見た目裏切らんな、あんたら」
「それなら、幸ちゃんが淹れたカフェモカ、飲みたいです!」
「あ、俺も俺もっ!」
「聞こえとるわ。大人しく座っとれ、甘党共」
あたしがカフェモカ得意だったって、どこ情報だ。
さては、楓のやろうが雪にチクリやがったな。
内心毒づくのは、照れ隠し。
手早く支度し、料理が冷めないうちに食卓を囲んで、いただきます。
「それじゃあ改めて。みんなおめでとう!」
「おめでとさんでーっす!」
「……おめでとう」
目の前の光景は、陽だまりの中へ放り込まれたみたいにまぶしくて、あたしにはまだむず痒い。
「この間といい今日といい、完璧に俺好みのふわとろ具合を熟知してるな、ユキさん」
「いやっ、たまたまです」
「うぅっ……オムライスって、こんなに感動するんだねっ……生きててよかったぁ~!」
「泣くな雪!」
……騒がしいのはいつものことだけど。
この風景が日常になるなら悪くないかも、なんてね。



