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「好きだよ、雪……大好き」
きれいな瞳、まっすぐな心に、どれだけぼくが駆り立てられたと思う?
手がふるえて、血が全身を駆けめぐって。
気づいたときには、自分のことを忘れてと言う唇をふさいでいたっけ。
皮肉だよね。
きみのためを想ってついた嘘だったのに、きみを傷つけていたと、無理に笑わせて気づくなんて。
「幸ちゃん……幸ちゃん……っ!」
……ごめんね、ごめんなさい。
忘れてないよ。
忘れられるはず、ないじゃないか。
きみはぼくの、すべてなんだから。
心を通わせるほど、きみに近づく感覚。
きみの体温だけじゃなく、寒さも感じるようになったんだ。
同時にきみへふれるたび走る頭痛が、警鐘を鳴らした。
(もう……時間がないっ……!)
寒空に白雪が舞い上がる。
腕の中のきみは、燃えるように熱い。
長引くその不調は、風邪なんかじゃない。
きみの生気を、ぼくが吸い取ってるせいなんだ。
このままじゃ、ぼくはきみを……殺してしまう。
「行くんだ、幸ちゃん!」
ただ守りたくて張り上げた声は、きみを泣かせてしまった。
ぼくのこと、好きになってくれてありがとう――
たった一言伝えればよかったのに、罪悪感が邪魔をした。
「幸ちゃん……すき……きみが……大好きだ」
いくら切望しようと、〝どちらも〟は選べない。
0は1になり得ないんだ。
ぼくが生きるか、きみが生きるか……
未来は、ひとつしかない。
(だからぼくは……人知れず、消えよう)
すべて納得の上で、深呼吸をした。
なのに……雪の降らない街で、きみが駆けて行った道をあの人が見つめていて。
――ゾクリと、肌が粟立った。
(守らなきゃ)
その想いだけが、ぼくの意識をつなぐ糸で。
人でも幽霊でもなくなったからだは、不安定すぎた。
鈍器で殴られたような頭を抱え、悲鳴を上げる足を引きずる。
「かえくん!」
「…………え? 雪、兄さん……?」
たどり着いた先には、あの子がいてくれた。
あの子もぼくのことが見えたみたいだ。
ぼくもだいぶ〝こちら側〟に近づいてきたんだろう。
視線を交わせたことは、残り時間があとわずかであることの証明であったけれど、この場では単純に安堵へとつながって。
「おねがいかえくん、力を貸して! 幸ちゃんを助けたいんだ!」
困惑する弟に頭を下げながら、神様へ懇願する。
どうか、幸ちゃんを連れて行かないでください。
彼女の運命は、ぼくが引き受けます――と。



