「……ごめん」
「謝んないで……楓にだって、自分の気持ち大事にする権利があるんだから」
「俺……ユキさんのこと、好きでいてもいい?」
「楓の自由でしょ」
「ウゼェくらいいっしょにいたくって、隙あらばキスとかハグとか、なんなら押し倒したりとかもしたいって思ってるけど、いいの?」
「か……かえでの、自由デショ……」
思うだけなら、と付け足す前に、やられた。
「ユキさ――――ん!」
「待てコラ楓っ、どこさわって……!」
「胸にダイブしてます!」
「堂々と言うことじゃない!」
「だってユキさんが惚れ直させるから」
「あたしのせいかよ!」
「あー、ユキさんやわらけー……そろそろ手ぇ出してもいいですか? てか出すよ?」
「ただちに引っ込めろ変態!」
「じっとしてー」
「きゃあああ! さわんなばかぁ!」
楓はジタバタもがくあたしをいとも簡単に押さえ込み、ニィッと白い歯を見せる。
「ホント、かわいいなぁ」
「おいふざけんな。マジでそのニヤけ面ブン殴るぞ」
「大丈夫、なにもしないって。今日は」
「今日〝は〟!?」
「ユキさん、ケガ治ってないしね」
「理由が生々しい!」
「あはははっ」
なんだ、このやり込められてる感。
楓のやつ、雪に似てきてないか?
いろいろと吹っ切れたから?
もうやだこいつ……
「ユキさん、雪兄さんのこと好き?」
「えぇ好きですとも。あんたの何億倍もね」
「っへへ」
「……なんでうれしそうなのよ」
「俺が世界で一番好きなふたりが、すっげー仲良しなんだ。めっちゃうれしい」
ホント……なんでそういうこと、恥ずかしげもなく言えるのかね。
「ね、約束して。この先なにがあっても、雪兄さんのこと好きでいるって」
「言われなくとも、そのつもりだっつの」
なにを今さら。いぶかしげに見上げたときだった。真摯な瞳を前に、言葉を呑み込んでしまう。
「ユキさん、あのさ――」
「失礼します。楓くんはいらっしゃいますか?」
語尾と重ねて、病室のドアがスライドした。
口をつぐみふり返った楓の後ろから、ひょいと顔をのぞかせる。
すると、淡いブルーのナースウェアを着た男性と目が合った。
「あ、はい。ユキさんが目を覚ましたんで」
「あぁそれはよかった! はじめまして、佐藤さん。担当看護師の笹原です。なにかございましたら、遠慮なくお呼びくださいね」
中背で、どちらかといえばやせ型。
40代くらいだろうか。
柔和な笑みが印象的な看護師さんだ。
「……よろしくお願いします」
人の良さそうな男性――笹原さんを前に、ペコリ。
となりに座る楓がヘラッと笑ったので、肘鉄を食らわせておいた。
「おやおや、青春ですねぇ」
「いやぁそれが、なかなか落ちてくんなくって」
「まだ若いじゃないか。がんばりなさいな」
「もちろんです。ってか笹原さん、俺呼んでませんでしたっけ?」
「ああ、福園さんがいらしてね。きみを探していましたよ」
「……わかりました。すぐ行きます」
口早に返答した楓が、少し真顔だったような?
確認の意味を込めて見上げたときには、いつもの笑顔がそこにあった。
「今日はごちそうさま」
「……なっ!」
「また明日来るよ。じゃあね、ユキさん!」
絶句している間に、楓は颯爽と病室を後にする。
「……笹原さん、面会拒否ってできますか」
しばらくして漏れたつぶやきに、ペンを走らせていた笹原さんは手を止めて、くすっ。
「楓くんも、やるねぇ」
バインダー越しの笑顔に居たたまれなくなって、逃げるように布団を被る。
……明日は大雪になれ。
「謝んないで……楓にだって、自分の気持ち大事にする権利があるんだから」
「俺……ユキさんのこと、好きでいてもいい?」
「楓の自由でしょ」
「ウゼェくらいいっしょにいたくって、隙あらばキスとかハグとか、なんなら押し倒したりとかもしたいって思ってるけど、いいの?」
「か……かえでの、自由デショ……」
思うだけなら、と付け足す前に、やられた。
「ユキさ――――ん!」
「待てコラ楓っ、どこさわって……!」
「胸にダイブしてます!」
「堂々と言うことじゃない!」
「だってユキさんが惚れ直させるから」
「あたしのせいかよ!」
「あー、ユキさんやわらけー……そろそろ手ぇ出してもいいですか? てか出すよ?」
「ただちに引っ込めろ変態!」
「じっとしてー」
「きゃあああ! さわんなばかぁ!」
楓はジタバタもがくあたしをいとも簡単に押さえ込み、ニィッと白い歯を見せる。
「ホント、かわいいなぁ」
「おいふざけんな。マジでそのニヤけ面ブン殴るぞ」
「大丈夫、なにもしないって。今日は」
「今日〝は〟!?」
「ユキさん、ケガ治ってないしね」
「理由が生々しい!」
「あはははっ」
なんだ、このやり込められてる感。
楓のやつ、雪に似てきてないか?
いろいろと吹っ切れたから?
もうやだこいつ……
「ユキさん、雪兄さんのこと好き?」
「えぇ好きですとも。あんたの何億倍もね」
「っへへ」
「……なんでうれしそうなのよ」
「俺が世界で一番好きなふたりが、すっげー仲良しなんだ。めっちゃうれしい」
ホント……なんでそういうこと、恥ずかしげもなく言えるのかね。
「ね、約束して。この先なにがあっても、雪兄さんのこと好きでいるって」
「言われなくとも、そのつもりだっつの」
なにを今さら。いぶかしげに見上げたときだった。真摯な瞳を前に、言葉を呑み込んでしまう。
「ユキさん、あのさ――」
「失礼します。楓くんはいらっしゃいますか?」
語尾と重ねて、病室のドアがスライドした。
口をつぐみふり返った楓の後ろから、ひょいと顔をのぞかせる。
すると、淡いブルーのナースウェアを着た男性と目が合った。
「あ、はい。ユキさんが目を覚ましたんで」
「あぁそれはよかった! はじめまして、佐藤さん。担当看護師の笹原です。なにかございましたら、遠慮なくお呼びくださいね」
中背で、どちらかといえばやせ型。
40代くらいだろうか。
柔和な笑みが印象的な看護師さんだ。
「……よろしくお願いします」
人の良さそうな男性――笹原さんを前に、ペコリ。
となりに座る楓がヘラッと笑ったので、肘鉄を食らわせておいた。
「おやおや、青春ですねぇ」
「いやぁそれが、なかなか落ちてくんなくって」
「まだ若いじゃないか。がんばりなさいな」
「もちろんです。ってか笹原さん、俺呼んでませんでしたっけ?」
「ああ、福園さんがいらしてね。きみを探していましたよ」
「……わかりました。すぐ行きます」
口早に返答した楓が、少し真顔だったような?
確認の意味を込めて見上げたときには、いつもの笑顔がそこにあった。
「今日はごちそうさま」
「……なっ!」
「また明日来るよ。じゃあね、ユキさん!」
絶句している間に、楓は颯爽と病室を後にする。
「……笹原さん、面会拒否ってできますか」
しばらくして漏れたつぶやきに、ペンを走らせていた笹原さんは手を止めて、くすっ。
「楓くんも、やるねぇ」
バインダー越しの笑顔に居たたまれなくなって、逃げるように布団を被る。
……明日は大雪になれ。



