ユキイロノセカイ

 最初の年は、おたがいバラバラ。

 2年目は、欲しがっていた本を、ドキドキしながらプレゼントした。

 3年目、いっしょにケーキを食べられるようになった。

 4年目はもう歓喜。
 クリスマスカードとプレゼントをもらえたんだ。

 そして今年、イルミネーションを観に行こうねと約束した。
 うれしいことに、毎年12月25日は、大切な人とすごすのが恒例になっていた。

「ただいまー」

 ドアを閉め鍵をかけたところで、あれ? と首をかしげる。
 オッスって、いつも出むかえてくれるすがたがないんだ。

「かえくん? お兄ちゃん帰ってきましたよー。かえくんの好きなチョコケーキ、買ってきましたよー」

 冷蔵庫にケーキをしまっても、返答なし。
 部活はとっくに終わってるはずだけど。

 そういえば、玄関にかえくん愛用のランニングシューズがなかった。
 ダッフルコートからスマホを出してみると、メッセージが1件。
 サイレントマナー解除するの忘れてた。
 気づかなかったなぁ。
 どうやら来月の大会のことでコーチと話し込んでしまったので、学校からそのまま行くとのこと。
 なるほど。

「毎日がんばってるもんねぇ、かえくん」

 了解です、とニコニコ返信。
 時刻は午後8時すぎ。
 予定の時間より10分のタイムロスだから、早く行ってあげなきゃね。
 きれいなイルミネーションを観たら、家で遅めの晩ごはん。
 スープでほかほか温まって、ケーキも食べて、プレゼントをあげよう。

 心おどらせながら、お気に入りの傘を手に取る。
 あの子からもらった誕生日プレゼントとは、いつもいっしょなんだ。
 そうして、しんしんと雪降る街へ、もう一度ふみ出していった。



 凍てつく空気が肌を突き刺す。
 気がつくとあたしは、コンクリートへうつ伏せに倒れていた。

「今のは…………った!」

 考えようとした矢先に痛みを催す。
 ズキズキと悲鳴を上げる頭を抱え、重いからだを引きずるように起き上がった。

「さっぶ……なに? ここ」

 ビュウ、と髪を舞い上げる冷風。
 少しして、屋外にいるのだと理解する。
 古びた手すりのすきまから見下ろせば、夜の帳が下りた街に、色彩豊かな光のアートが煌々と明滅していた。

「とても美しいでしょう? この時期でしか目に出来ない、特別な景色よ」

 別の意味で寒気が走る。案の定、目前には入り口を背にした美女が、余裕の笑みでたたずんでいた。
 とっさに立ち上がり、身構える。