ユキイロノセカイ

 氷点下のすきま風に、容赦なく叩き起こされる。
 しばらくボーッと呆ける。
 数秒かけて、ボロっちい天井の木目を見上げていることに気づいた。

「あれ、あたし……」

 いつもの朝……のはずが、胸に居座る違和感。
 その正体は、枕もとのスマホを目にしたとたん判明。
 布団をはねのけ、飛びついたディスプレイへ釘づけになる。

「12月、1日……おいおいおい、ちょっと待って……?」

 ホント待ってよマジ。
 あたし、トラックに跳ねられなかったっけ?
 アレは夢?
 仮に壊滅的な疲労が溜まっていたとして、何日か丸々寝過ごすとかならわかるよ。
 けどさ、どこをどうしたら、あの夜――
 23日より3週間以上もさかのぼるわけ?

 さっきからつねってる頬は痛いし、右手のスマホは、つい最近契約したばかりの相棒である。
 1ヶ月とたたずお役御免なんざ、あってたまるか。
 おまけにだよ、枕もとに大事に大事に置いてあった相棒のとなりで、悠々と寝そべっていたものは。

「――っ!?」

 はじかれたようにカーテンを開く。
 朝陽がにじむそこは、一面の銀世界。

「……大雪。たしかに、1日は降ってたな」

 そうだ、この日はあいにくの積雪で、バイト先の喫茶店が臨時休業になった。
 店長から連絡をもらい、よろこんで二度寝にふけったものだけど……

 ピコン。

 スマホが光る。
 だけど通知画面を確認するまでもなく、立ち上がる。
 あの日は出かけなかった。
 だから、今度は出かけてみよう。
 根拠なんてない期待を胸に、あたしは枕もとに寝かされていたもの――
 クリスマスカラーの傘を、拾い上げるのだった。