恋愛短歌小説~三十一文字から始まる物語。この短歌、恋愛小説にしてみました~

【短歌】
返信を待つだけなのに忙しい何度スマホを見ればいいのか



【短歌をテーマにした物語】
 スマートフォンを見る。

 通知はない。

 私は画面を閉じる。

 十秒後。

 また見る。

 やっぱり、ない。

「……まだかな」

 小さく呟いて、スマートフォンを机の上に置いた。

 別に急ぎの連絡ではない。

 今日の放課後、君に送ったメッセージ。

『今日、一緒に帰らない?』

 たったそれだけ。

 送信してから、まだ十五分しか経っていない。

 なのに。

 十五分とは、こんなに長い時間だっただろうか。

 私は宿題を開いた。

 数学の問題を一問解く。

 答え合わせをする。

 もう一問。

 ……気になる。

 スマートフォンを見る。

 通知はない。

「まだ十五分しか経ってないし」

 自分に言い聞かせる。

 スマートフォンを伏せる。

 英語の教科書を開く。

 単語を三つ覚える。

 ……やっぱり気になる。

 スマートフォンを見る。

 通知はない。

「……なんで?」

 返信がないだけなのに、どうしてこんなに落ち着かないんだろう。

 もしかして忙しいのかな。

 部活かな。

 スマホを見てないのかな。

 それとも――。

 そこまで考えて、慌てて首を振る。

「考えすぎ」

 私は深呼吸した。

 そして、スマートフォンを鞄の中に入れた。

 これでいい。

 もう見ない。

 宿題に集中する。

 ……五分後。

 私は鞄を開けていた。

「一回だけ」

 スマートフォンを取り出す。

 通知なし。

「……一回だけって決めたのに」

 自分で自分に呆れてしまう。

 そのとき。

 ポン。

 小さな音がした。

「!」

 心臓が跳ねた。

 画面を見る。

 メッセージが届いている。

 送り主は――君。

『ごめん! 今、部活終わった。帰ろう!』

「……よかった」

 思わず声が出た。

 さっきまでの不安が、一瞬で消えていく。

 私は急いで返信する。

『うん! 待ってる』

 送信。

 そして時計を見る。

 待ち合わせまで、あと二十分。

「……二十分か」

 さっきまでの十五分より長く感じる。

 私は苦笑した。

 どうやら私は、君からの返信を待っているだけで、一日中忙しいらしい。

 待ち合わせ場所に着くと、君が走ってきた。

「ごめん、待った?」

「ううん。全然」

 本当は少し待った。

 でも、そんなことはどうでもよかった。

「じゃあ、帰ろう」

「うん」

 二人で歩き出す。

 学校の話をして、部活の話をして、くだらないことで笑う。

 ふと、私は思った。

 返信を待っている時間は、あんなに長かったのに。

 君と一緒に歩いている時間は、どうしてこんなに早いんだろう。

「何笑ってるの?」

「なんでもない」

「変なの」

「そう?」

 私は笑った。

 そして、隣を歩く君を見る。

 今日一日、何度スマートフォンを見ただろう。

 通知が来ていない画面を、何度確認しただろう。

 きっと、明日も同じことをする。

 君からの返信を待って。

 何度もスマートフォンを見る。

 そのたびに、一喜一憂する。

 忙しい。

 本当に、忙しい。

 でも。

 こんな忙しさなら、悪くないと思った。

 だってそれは。

 君のことを考えている時間なのだから。

 私はスマートフォンをポケットにしまった。

 今は画面を見る必要なんてない。

 だって、君はちゃんと隣にいる。

 それだけで十分だった。