【短歌】
レース越し 鏡に映る 白い夢 隣で笑う 君を見つめる
【短歌をテーマにした物語】
休日の午後。
私は彼と一緒に、ウェディングドレスの店を訪れていた。
「緊張する?」
隣を歩く彼が聞いてくる。
「少しだけ」
「なんで?」
「だって……」
私は店内を見渡す。
白いドレスが、いくつも並んでいる。
「本当に結婚するんだなって、急に実感しちゃって」
そう言うと、彼は少し照れたように笑った。
「俺も同じ」
その一言だけで。
胸の奥が、ふっと温かくなった。
*
「こちらはいかがでしょう?」
スタッフさんに勧められたドレスを手に取る。
細かなレースが施されている。
触れると、とても軽かった。
「試着してみますか?」
「はい」
試着室へ入る。
カーテンが閉じられる。
スタッフさんに手伝ってもらいながら着替える。
鏡の前に立つ。
白いドレス。
普段の自分とは、まるで違う姿だった。
「……どうしよう」
思わず呟く。
「変じゃないかな」
カーテンの向こうから彼の声がする。
「見てもいい?」
「……うん」
カーテンが開く。
彼がこちらを見る。
一瞬。
彼が何も言わなかった。
「……どう?」
不安になって尋ねる。
すると彼は。
少しだけ笑った。
「似合ってる」
「それだけ?」
「それだけじゃないけど……」
彼は少し考えてから言った。
「なんか、綺麗だなって思った」
その言葉に。
頬が熱くなる。
「……ありがとう」
「うん」
私は鏡を見る。
鏡の中には、白いドレスを着た自分。
そして、その隣には彼がいる。
レース越しに見る彼の姿は、いつもより少しだけ遠く見えた。
でも。
その笑顔だけは、いつもと変わらなかった。
*
「次はこちらも試してみましょうか」
二着目。
三着目。
白いドレスにも、いろいろな形がある。
袖の長さ。
レースの模様。
裾のデザイン。
「どれが一番好き?」
彼に聞いてみる。
「うーん……」
彼は真剣な顔でドレスを見比べる。
「全部似合ってるから、分からない」
「それ、答えになってないよ」
「じゃあ、一番好きなのを選ぶ」
「うん」
「今着てるやつ」
「……ずるい」
思わず笑ってしまう。
そんな会話をしながら。
何着も試していく。
楽しかった。
でも。
ふと、思う。
今日選ぶのは。
ただの服じゃない。
いつか迎える、その日のための一着。
そう思うと。
少しだけ怖くなった。
*
最後に、最初に試着したドレスをもう一度着た。
レースの細かな模様。
裾に広がる白。
鏡の中に映る自分。
私は、しばらく黙っていた。
「どうしたの?」
彼が尋ねる。
「ううん」
私は首を横に振る。
「なんだか、不思議だなって」
「何が?」
「今までずっと、結婚式って遠い未来の話だと思ってた」
「うん」
「でも今、こうしてドレスを着てる」
鏡を見る。
そこには。
白いドレスを着た私と。
その隣で笑っている彼。
「本当に、これから一緒に生きていくんだね」
そう言うと。
彼は少し驚いたように私を見る。
「……今さら?」
「今さら」
二人で笑う。
そして彼は。
鏡の中の私を見ながら言った。
「これからも、こういう日が増えるんだろうね」
「こういう日?」
「一緒に何かを選んだり、迷ったりして」
「うん」
「最後には二人で決める」
「……それ、いいね」
私は笑った。
ドレスを選ぶだけの一日。
そう思っていた。
けれど。
本当は。
これから先の時間を、二人で選んでいく練習だったのかもしれない。
*
「これにします」
私は最初に着たドレスを指差した。
「本当にこちらで?」
「はい」
スタッフさんが嬉しそうに笑う。
隣を見る。
彼も笑っていた。
「決めたね」
「うん」
「楽しみだね」
「うん」
その言葉を聞いて。
胸の奥がいっぱいになった。
レース越し
鏡に映る
白い夢
隣で笑う
君を見つめる
鏡の中に映っていたのは。
白いドレスだけじゃなかった。
その隣にいる人と。
これから作っていく未来。
まだ見えない明日まで。
白い夢の向こう側まで。
二人で歩いていけたらいい。
「ねえ」
「ん?」
「このドレスにしてよかった」
「俺も」
「まだ式の日じゃないのに?」
「だからこそだよ」
彼が笑う。
私はもう一度、鏡を見る。
そこには。
白いドレスを着た私と。
隣で笑う君がいる。
その光景を。
私はきっと、ずっと忘れない。
レース越し 鏡に映る 白い夢 隣で笑う 君を見つめる
【短歌をテーマにした物語】
休日の午後。
私は彼と一緒に、ウェディングドレスの店を訪れていた。
「緊張する?」
隣を歩く彼が聞いてくる。
「少しだけ」
「なんで?」
「だって……」
私は店内を見渡す。
白いドレスが、いくつも並んでいる。
「本当に結婚するんだなって、急に実感しちゃって」
そう言うと、彼は少し照れたように笑った。
「俺も同じ」
その一言だけで。
胸の奥が、ふっと温かくなった。
*
「こちらはいかがでしょう?」
スタッフさんに勧められたドレスを手に取る。
細かなレースが施されている。
触れると、とても軽かった。
「試着してみますか?」
「はい」
試着室へ入る。
カーテンが閉じられる。
スタッフさんに手伝ってもらいながら着替える。
鏡の前に立つ。
白いドレス。
普段の自分とは、まるで違う姿だった。
「……どうしよう」
思わず呟く。
「変じゃないかな」
カーテンの向こうから彼の声がする。
「見てもいい?」
「……うん」
カーテンが開く。
彼がこちらを見る。
一瞬。
彼が何も言わなかった。
「……どう?」
不安になって尋ねる。
すると彼は。
少しだけ笑った。
「似合ってる」
「それだけ?」
「それだけじゃないけど……」
彼は少し考えてから言った。
「なんか、綺麗だなって思った」
その言葉に。
頬が熱くなる。
「……ありがとう」
「うん」
私は鏡を見る。
鏡の中には、白いドレスを着た自分。
そして、その隣には彼がいる。
レース越しに見る彼の姿は、いつもより少しだけ遠く見えた。
でも。
その笑顔だけは、いつもと変わらなかった。
*
「次はこちらも試してみましょうか」
二着目。
三着目。
白いドレスにも、いろいろな形がある。
袖の長さ。
レースの模様。
裾のデザイン。
「どれが一番好き?」
彼に聞いてみる。
「うーん……」
彼は真剣な顔でドレスを見比べる。
「全部似合ってるから、分からない」
「それ、答えになってないよ」
「じゃあ、一番好きなのを選ぶ」
「うん」
「今着てるやつ」
「……ずるい」
思わず笑ってしまう。
そんな会話をしながら。
何着も試していく。
楽しかった。
でも。
ふと、思う。
今日選ぶのは。
ただの服じゃない。
いつか迎える、その日のための一着。
そう思うと。
少しだけ怖くなった。
*
最後に、最初に試着したドレスをもう一度着た。
レースの細かな模様。
裾に広がる白。
鏡の中に映る自分。
私は、しばらく黙っていた。
「どうしたの?」
彼が尋ねる。
「ううん」
私は首を横に振る。
「なんだか、不思議だなって」
「何が?」
「今までずっと、結婚式って遠い未来の話だと思ってた」
「うん」
「でも今、こうしてドレスを着てる」
鏡を見る。
そこには。
白いドレスを着た私と。
その隣で笑っている彼。
「本当に、これから一緒に生きていくんだね」
そう言うと。
彼は少し驚いたように私を見る。
「……今さら?」
「今さら」
二人で笑う。
そして彼は。
鏡の中の私を見ながら言った。
「これからも、こういう日が増えるんだろうね」
「こういう日?」
「一緒に何かを選んだり、迷ったりして」
「うん」
「最後には二人で決める」
「……それ、いいね」
私は笑った。
ドレスを選ぶだけの一日。
そう思っていた。
けれど。
本当は。
これから先の時間を、二人で選んでいく練習だったのかもしれない。
*
「これにします」
私は最初に着たドレスを指差した。
「本当にこちらで?」
「はい」
スタッフさんが嬉しそうに笑う。
隣を見る。
彼も笑っていた。
「決めたね」
「うん」
「楽しみだね」
「うん」
その言葉を聞いて。
胸の奥がいっぱいになった。
レース越し
鏡に映る
白い夢
隣で笑う
君を見つめる
鏡の中に映っていたのは。
白いドレスだけじゃなかった。
その隣にいる人と。
これから作っていく未来。
まだ見えない明日まで。
白い夢の向こう側まで。
二人で歩いていけたらいい。
「ねえ」
「ん?」
「このドレスにしてよかった」
「俺も」
「まだ式の日じゃないのに?」
「だからこそだよ」
彼が笑う。
私はもう一度、鏡を見る。
そこには。
白いドレスを着た私と。
隣で笑う君がいる。
その光景を。
私はきっと、ずっと忘れない。



