【短歌】
届かない 距離を知るほど 近くなる 君への想い 空へ広がる
【短歌をテーマにした物語】
高校三年の春。
僕には、ずっと好きな人がいる。
名前は、朝倉遥。
明るくて、誰にでも優しくて、いつも周りに人が集まっている女の子。
僕とは住む世界が違う。
そう思っていた。
遥とは、同じクラスだった。
席は窓側と廊下側。
教室の端と端。
休み時間に話すことはあっても、二人きりで過ごすことはほとんどない。
僕は彼女の好きな音楽も、好きな食べ物も、休日の過ごし方も知らない。
知っているのは、笑った時に少しだけ目を細めること。
困った人を見ると必ず声をかけること。
そして、空を見るのが好きだということ。
ある日の放課後。
校庭で空を眺めている遥を見つけた。
「何してるの?」
思い切って声をかけた。
彼女は少し驚いてから笑った。
「雲を見てた」
「雲?」
「うん。同じ空なのに、毎日違う形になるから面白いんだよね」
その言葉を聞いて、僕は思った。
遥も、僕とは違う場所を見ているんだ。
僕には届かないくらい、高いところを。
それから僕は、少しずつ彼女を知っていった。
将来は海外で働きたいこと。
小さい頃から絵を描くのが好きだったこと。
困っている人を見ると放っておけない性格であること。
知れば知るほど、好きになった。
でも同時に、距離も感じた。
遥は夢に向かって進んでいる。
僕はただ、彼女の背中を見ているだけ。
告白なんて、できるはずがなかった。
卒業が近づいた頃。
遥が海外の大学を目指していることを知った。
「すごいね」
僕は笑った。
「頑張って」
本当は違う言葉を言いたかった。
行かないで。
もっと近くにいて。
好きだ。
全部伝えたかった。
でも、彼女の夢を邪魔したくなかった。
卒業式の日、校庭には春の青空が広がっていた。
遥が言った。
「ねえ、最後に一緒に写真撮らない?」
驚いた。
「僕でいいの?」
「何それ」
彼女は笑った。
「いつも空見てる時、隣にいたじゃん」
胸が熱くなった。
僕は気づいていなかった。
遠いと思っていた距離は、彼女から見れば違っていたのかもしれない。
写真を撮ったあと、僕は空を見上げた。
雲がゆっくり流れている。
届かないと思っていた。
遥は遠い存在だと思っていた。
でも、距離を知ったからこそ、彼女の大切さが分かった。
近づけない場所にいるからこそ、もっと大切に思えた。
それから、いくら時が流れても変わらないものがある。
あの日と同じ空。
でも、僕の隣にはもう遥はいない。
それでも、不思議と寂しくなかった。
遠く離れていても、同じ空を見ていると思えたから。
スマホを見ると、一通のメッセージが届いていた。
『元気にしてる? 今日の空、きれいだね』
僕は笑った。
そして空を見上げる。
届かない距離は、想いを消すものではなかった。
むしろ、その距離があるからこそ、
僕の想いは空いっぱいに広がっていった。
届かない 距離を知るほど 近くなる 君への想い 空へ広がる
【短歌をテーマにした物語】
高校三年の春。
僕には、ずっと好きな人がいる。
名前は、朝倉遥。
明るくて、誰にでも優しくて、いつも周りに人が集まっている女の子。
僕とは住む世界が違う。
そう思っていた。
遥とは、同じクラスだった。
席は窓側と廊下側。
教室の端と端。
休み時間に話すことはあっても、二人きりで過ごすことはほとんどない。
僕は彼女の好きな音楽も、好きな食べ物も、休日の過ごし方も知らない。
知っているのは、笑った時に少しだけ目を細めること。
困った人を見ると必ず声をかけること。
そして、空を見るのが好きだということ。
ある日の放課後。
校庭で空を眺めている遥を見つけた。
「何してるの?」
思い切って声をかけた。
彼女は少し驚いてから笑った。
「雲を見てた」
「雲?」
「うん。同じ空なのに、毎日違う形になるから面白いんだよね」
その言葉を聞いて、僕は思った。
遥も、僕とは違う場所を見ているんだ。
僕には届かないくらい、高いところを。
それから僕は、少しずつ彼女を知っていった。
将来は海外で働きたいこと。
小さい頃から絵を描くのが好きだったこと。
困っている人を見ると放っておけない性格であること。
知れば知るほど、好きになった。
でも同時に、距離も感じた。
遥は夢に向かって進んでいる。
僕はただ、彼女の背中を見ているだけ。
告白なんて、できるはずがなかった。
卒業が近づいた頃。
遥が海外の大学を目指していることを知った。
「すごいね」
僕は笑った。
「頑張って」
本当は違う言葉を言いたかった。
行かないで。
もっと近くにいて。
好きだ。
全部伝えたかった。
でも、彼女の夢を邪魔したくなかった。
卒業式の日、校庭には春の青空が広がっていた。
遥が言った。
「ねえ、最後に一緒に写真撮らない?」
驚いた。
「僕でいいの?」
「何それ」
彼女は笑った。
「いつも空見てる時、隣にいたじゃん」
胸が熱くなった。
僕は気づいていなかった。
遠いと思っていた距離は、彼女から見れば違っていたのかもしれない。
写真を撮ったあと、僕は空を見上げた。
雲がゆっくり流れている。
届かないと思っていた。
遥は遠い存在だと思っていた。
でも、距離を知ったからこそ、彼女の大切さが分かった。
近づけない場所にいるからこそ、もっと大切に思えた。
それから、いくら時が流れても変わらないものがある。
あの日と同じ空。
でも、僕の隣にはもう遥はいない。
それでも、不思議と寂しくなかった。
遠く離れていても、同じ空を見ていると思えたから。
スマホを見ると、一通のメッセージが届いていた。
『元気にしてる? 今日の空、きれいだね』
僕は笑った。
そして空を見上げる。
届かない距離は、想いを消すものではなかった。
むしろ、その距離があるからこそ、
僕の想いは空いっぱいに広がっていった。



