【短歌】
夕焼けに 染まる横顔 見つめつつ 未来もきっと そばに寄り添う
【短歌をテーマにした物語】
放課後のチャイムが鳴った。
教室に残っていた生徒たちが、次々と帰り支度を始める。
「じゃあ、また明日」
「うん、またね」
そんな声が飛び交う中、私は窓の外を見ていた。
空が、夕焼けに染まっている。
赤とオレンジが混ざった空。
校舎の影が長く伸びて、その向こうにはいつもの帰り道が続いていた。
「帰らないの?」
声がして振り返る。
そこに、彼が立っていた。
「うん。今行く」
「今日は遅いな」
「ちょっとぼーっとしてた」
「夕焼け?」
「……うん」
彼が窓の外を見る。
「綺麗だな」
「ね」
二人でしばらく空を眺めた。
何度も見てきた景色なのに。
今日は、少し違って見えた。
二人で校門を出る。
いつもの帰り道。
並んで歩く。
「今日の数学、全然分からなかった」
「私も」
「テスト大丈夫かな」
「大丈夫じゃないかも」
「それ、笑って言うことじゃないだろ」
「だって今さら焦っても仕方ないし」
「それもそうか」
二人で笑う。
くだらない会話。
何でもない時間。
でも私は、そんな時間が好きだった。
彼とは、ずっと一緒だった。
同じクラスになったのがきっかけだった。
最初は、ただの友達。
宿題を教え合ったり、一緒に帰ったり。
気づけば、いつも隣にいることが当たり前になっていた。
だからこそ。
私は最近、少し怖くなる。
卒業したら。
進む道が変わったら。
今までのように会えなくなったら。
今みたいに、隣を歩けなくなったら。
そんな未来を考えるだけで、胸が寂しくなる。
「どうした?」
彼がこちらを見る。
「え?」
「さっきから静かだから」
「……なんでもないよ」
「本当に?」
「うん」
私は笑った。
言えなかった。
ずっと隣にいてほしい。
そんな簡単な言葉が、どうしても言えなかった。
坂道に差しかかる。
夕日が二人の背中を照らす。
彼の横顔が、夕焼けの光に染まっていた。
いつも見ているはずなのに。
今日は、その横顔がとても大切なものに見えた。
「ねえ」
「ん?」
「卒業したら……」
彼が立ち止まる。
「卒業したら?」
「……ううん。なんでもない」
また言えなかった。
彼は少し首を傾げた。
「変なの」
「そうかな」
「うん」
そう言って笑う。
私はその笑顔を見つめた。
夕焼けが少しずつ薄くなっていく。
もうすぐ夜が来る。
今日という日も終わる。
そして。
きっと明日も来る。
明後日も。
その先も。
でも、ずっと今と同じとは限らない。
「……ねえ」
今度は、私から彼を呼んだ。
「なに?」
彼が振り返る。
夕焼けに染まった横顔。
私はその顔をまっすぐ見つめた。
「これからも……」
喉が震える。
「これからも、一緒に帰ってくれる?」
彼は少し驚いた顔をした。
それから笑った。
「もちろん」
「……卒業しても?」
「卒業しても」
「学校が違っても?」
「学校が違っても」
「……忙しくなっても?」
「できるだけ時間作るよ」
その言葉を聞いて、胸の奥が温かくなった。
「そっか」
「うん」
「……よかった」
私は小さく笑った。
本当は。
もっと伝えたいことがある。
ただ一緒に帰ってほしいだけじゃない。
ただ友達でいたいだけでもない。
あなたと過ごす時間が好き。
あなたの隣が好き。
できるなら、これから先もずっと――。
でも。
今日は、これでいい。
今日一歩踏み出せたことだけで、十分だった。
「じゃあ、帰ろうか」
彼が歩き出す。
「うん」
私も隣に並ぶ。
夕焼けは、もうすぐ消えてしまう。
それでも。
二人の影は、並んで道の上に伸びている。
いつか、この道を歩けなくなる日が来るかもしれない。
別々の場所へ行く日も来るかもしれない。
それでも。
今日の約束がある。
また会おう。
また一緒に歩こう。
そう言ってくれたことが、今の私には何より嬉しかった。
夕焼けに 染まる横顔 見つめつつ 未来もきっと そばに寄り添う
【短歌をテーマにした物語】
放課後のチャイムが鳴った。
教室に残っていた生徒たちが、次々と帰り支度を始める。
「じゃあ、また明日」
「うん、またね」
そんな声が飛び交う中、私は窓の外を見ていた。
空が、夕焼けに染まっている。
赤とオレンジが混ざった空。
校舎の影が長く伸びて、その向こうにはいつもの帰り道が続いていた。
「帰らないの?」
声がして振り返る。
そこに、彼が立っていた。
「うん。今行く」
「今日は遅いな」
「ちょっとぼーっとしてた」
「夕焼け?」
「……うん」
彼が窓の外を見る。
「綺麗だな」
「ね」
二人でしばらく空を眺めた。
何度も見てきた景色なのに。
今日は、少し違って見えた。
二人で校門を出る。
いつもの帰り道。
並んで歩く。
「今日の数学、全然分からなかった」
「私も」
「テスト大丈夫かな」
「大丈夫じゃないかも」
「それ、笑って言うことじゃないだろ」
「だって今さら焦っても仕方ないし」
「それもそうか」
二人で笑う。
くだらない会話。
何でもない時間。
でも私は、そんな時間が好きだった。
彼とは、ずっと一緒だった。
同じクラスになったのがきっかけだった。
最初は、ただの友達。
宿題を教え合ったり、一緒に帰ったり。
気づけば、いつも隣にいることが当たり前になっていた。
だからこそ。
私は最近、少し怖くなる。
卒業したら。
進む道が変わったら。
今までのように会えなくなったら。
今みたいに、隣を歩けなくなったら。
そんな未来を考えるだけで、胸が寂しくなる。
「どうした?」
彼がこちらを見る。
「え?」
「さっきから静かだから」
「……なんでもないよ」
「本当に?」
「うん」
私は笑った。
言えなかった。
ずっと隣にいてほしい。
そんな簡単な言葉が、どうしても言えなかった。
坂道に差しかかる。
夕日が二人の背中を照らす。
彼の横顔が、夕焼けの光に染まっていた。
いつも見ているはずなのに。
今日は、その横顔がとても大切なものに見えた。
「ねえ」
「ん?」
「卒業したら……」
彼が立ち止まる。
「卒業したら?」
「……ううん。なんでもない」
また言えなかった。
彼は少し首を傾げた。
「変なの」
「そうかな」
「うん」
そう言って笑う。
私はその笑顔を見つめた。
夕焼けが少しずつ薄くなっていく。
もうすぐ夜が来る。
今日という日も終わる。
そして。
きっと明日も来る。
明後日も。
その先も。
でも、ずっと今と同じとは限らない。
「……ねえ」
今度は、私から彼を呼んだ。
「なに?」
彼が振り返る。
夕焼けに染まった横顔。
私はその顔をまっすぐ見つめた。
「これからも……」
喉が震える。
「これからも、一緒に帰ってくれる?」
彼は少し驚いた顔をした。
それから笑った。
「もちろん」
「……卒業しても?」
「卒業しても」
「学校が違っても?」
「学校が違っても」
「……忙しくなっても?」
「できるだけ時間作るよ」
その言葉を聞いて、胸の奥が温かくなった。
「そっか」
「うん」
「……よかった」
私は小さく笑った。
本当は。
もっと伝えたいことがある。
ただ一緒に帰ってほしいだけじゃない。
ただ友達でいたいだけでもない。
あなたと過ごす時間が好き。
あなたの隣が好き。
できるなら、これから先もずっと――。
でも。
今日は、これでいい。
今日一歩踏み出せたことだけで、十分だった。
「じゃあ、帰ろうか」
彼が歩き出す。
「うん」
私も隣に並ぶ。
夕焼けは、もうすぐ消えてしまう。
それでも。
二人の影は、並んで道の上に伸びている。
いつか、この道を歩けなくなる日が来るかもしれない。
別々の場所へ行く日も来るかもしれない。
それでも。
今日の約束がある。
また会おう。
また一緒に歩こう。
そう言ってくれたことが、今の私には何より嬉しかった。



