【短歌】
小さくて 光る指輪に 込めるのは これから続く 君との未来
【短歌をテーマにした物語】
休日の夕方。
駅前の小さな公園で、彼女はベンチに座っていた。
「遅いなあ……」
スマートフォンを眺めながら、彼女が小さくつぶやく。
今日は二人で夕食を食べる約束をしていた。
付き合い始めてから、もう何年になるだろう。
最初の頃は、会うだけで緊張していた。
何を話そうかと悩んだり、帰ったあとに「あのとき、変なこと言わなかったかな」と考えたり。
けれど今では、沈黙さえ心地よかった。
同じ景色を見て、同じことで笑う。
そんな時間が、いつの間にか二人の日常になっていた。
「ごめん、待った?」
息を切らして彼がやってくる。
「ううん。今来たところ」
「絶対嘘だろ」
「ふふ」
彼女が笑う。
彼も笑う。
それだけのことなのに、彼は胸の奥が温かくなるのを感じた。
二人は公園を出て、いつもの道を歩いた。
「今日、何食べる?」
「うーん……」
「また悩んでる」
「だって、どれもおいしそうなんだもん」
「じゃあ、いつもの店にする?」
「うん」
何度も歩いた道。
何度も入った店。
何度もした会話。
特別なことなんて何もない。
それでも彼は思っていた。
こういう時間を、これからもずっと続けたい。
食事を終えた二人は、夜の街を歩いた。
彼女が空を見上げる。
「今日は星が見えるね」
「ほんとだ」
「最近、忙しかったから。こうやってゆっくり空を見るの久しぶりかも」
「……そうだな」
彼はポケットに入れた手を握った。
その中には、小さな箱がある。
何度も確認した。
ちゃんと入っている。
大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
それでも心臓は落ち着かなかった。
「どうしたの?」
「え?」
「さっきから静かだから」
「……ちょっと考え事」
「珍しいね」
「そうかな」
「うん」
彼女が笑う。
その笑顔を見て、彼は少しだけ勇気をもらった。
しばらく歩いたところで、彼は足を止めた。
「ねえ」
「なに?」
「少しだけ、いい?」
「うん」
彼女が振り返る。
彼はポケットから小さな箱を取り出した。
「これ……」
「え?」
彼女の目が丸くなる。
箱を開く。
中に入っていたのは、小さな指輪だった。
派手ではない。
けれど街灯の光を受けて、静かに輝いている。
「ずっと考えてたんだ」
彼はゆっくり言葉を続けた。
「これから先、どんなことがあるかは分からない」
「……うん」
「楽しいことだけじゃないと思う。忙しくて会えない日もあるかもしれないし、喧嘩することもあると思う」
彼女は黙って聞いている。
「それでも」
彼は指輪を見つめた。
「これから先も、君と一緒にいたい」
少しだけ息を吸う。
「何でもない日に一緒にご飯を食べたり、くだらないことで笑ったり。そんな毎日を、これからも二人で作っていきたい」
彼女の目に、少しずつ涙が浮かぶ。
「だから……」
彼は顔を上げた。
「これからも、俺の隣にいてください」
短い言葉だった。
何度も考えた。
何度も練習した。
それなのに、本番ではそれしか言えなかった。
彼女はしばらく何も言わなかった。
やがて、小さく笑った。
「……ずるいよ」
「え?」
「そんなこと言われたら、断れないじゃん」
「じゃあ……」
「うん」
彼女はうなずいた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
彼はほっと息を吐いた。
肩の力が抜ける。
「よかった……」
「そんなに緊張してたの?」
「ものすごく」
「ふふっ」
二人は顔を見合わせて笑った。
彼女の指に、小さな指輪が光っている。
それは高価なものでも、目立つものでもなかった。
けれど二人にとっては、大切な意味を持つものだった。
これから始まる毎日の約束。
朝の「おはよう」。
帰ってきたときの「ただいま」。
疲れた日の「おつかれさま」。
嬉しい日の笑顔。
何でもない日の会話。
そんな小さな出来事を、ひとつずつ二人で重ねていく。
「ねえ」
「ん?」
「これから、どんな毎日になるかな」
彼女が指輪を見ながら尋ねる。
「分からない」
「なんだ、それ」
「でも……」
彼は笑った。
「君となら、楽しみだと思う」
彼女も笑った。
「私も」
夜の街を、二人は並んで歩いていく。
まだ見たことのない未来へ。
きっと、すべてが幸せな日になるわけではない。
それでも。
嬉しい日も。
悲しい日も。
笑った日も。
泣いた日も。
その一日一日を、二人で大切にしていく。
小さくて 光る指輪に 込めるのは これから続く 君との未来
【短歌をテーマにした物語】
休日の夕方。
駅前の小さな公園で、彼女はベンチに座っていた。
「遅いなあ……」
スマートフォンを眺めながら、彼女が小さくつぶやく。
今日は二人で夕食を食べる約束をしていた。
付き合い始めてから、もう何年になるだろう。
最初の頃は、会うだけで緊張していた。
何を話そうかと悩んだり、帰ったあとに「あのとき、変なこと言わなかったかな」と考えたり。
けれど今では、沈黙さえ心地よかった。
同じ景色を見て、同じことで笑う。
そんな時間が、いつの間にか二人の日常になっていた。
「ごめん、待った?」
息を切らして彼がやってくる。
「ううん。今来たところ」
「絶対嘘だろ」
「ふふ」
彼女が笑う。
彼も笑う。
それだけのことなのに、彼は胸の奥が温かくなるのを感じた。
二人は公園を出て、いつもの道を歩いた。
「今日、何食べる?」
「うーん……」
「また悩んでる」
「だって、どれもおいしそうなんだもん」
「じゃあ、いつもの店にする?」
「うん」
何度も歩いた道。
何度も入った店。
何度もした会話。
特別なことなんて何もない。
それでも彼は思っていた。
こういう時間を、これからもずっと続けたい。
食事を終えた二人は、夜の街を歩いた。
彼女が空を見上げる。
「今日は星が見えるね」
「ほんとだ」
「最近、忙しかったから。こうやってゆっくり空を見るの久しぶりかも」
「……そうだな」
彼はポケットに入れた手を握った。
その中には、小さな箱がある。
何度も確認した。
ちゃんと入っている。
大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
それでも心臓は落ち着かなかった。
「どうしたの?」
「え?」
「さっきから静かだから」
「……ちょっと考え事」
「珍しいね」
「そうかな」
「うん」
彼女が笑う。
その笑顔を見て、彼は少しだけ勇気をもらった。
しばらく歩いたところで、彼は足を止めた。
「ねえ」
「なに?」
「少しだけ、いい?」
「うん」
彼女が振り返る。
彼はポケットから小さな箱を取り出した。
「これ……」
「え?」
彼女の目が丸くなる。
箱を開く。
中に入っていたのは、小さな指輪だった。
派手ではない。
けれど街灯の光を受けて、静かに輝いている。
「ずっと考えてたんだ」
彼はゆっくり言葉を続けた。
「これから先、どんなことがあるかは分からない」
「……うん」
「楽しいことだけじゃないと思う。忙しくて会えない日もあるかもしれないし、喧嘩することもあると思う」
彼女は黙って聞いている。
「それでも」
彼は指輪を見つめた。
「これから先も、君と一緒にいたい」
少しだけ息を吸う。
「何でもない日に一緒にご飯を食べたり、くだらないことで笑ったり。そんな毎日を、これからも二人で作っていきたい」
彼女の目に、少しずつ涙が浮かぶ。
「だから……」
彼は顔を上げた。
「これからも、俺の隣にいてください」
短い言葉だった。
何度も考えた。
何度も練習した。
それなのに、本番ではそれしか言えなかった。
彼女はしばらく何も言わなかった。
やがて、小さく笑った。
「……ずるいよ」
「え?」
「そんなこと言われたら、断れないじゃん」
「じゃあ……」
「うん」
彼女はうなずいた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
彼はほっと息を吐いた。
肩の力が抜ける。
「よかった……」
「そんなに緊張してたの?」
「ものすごく」
「ふふっ」
二人は顔を見合わせて笑った。
彼女の指に、小さな指輪が光っている。
それは高価なものでも、目立つものでもなかった。
けれど二人にとっては、大切な意味を持つものだった。
これから始まる毎日の約束。
朝の「おはよう」。
帰ってきたときの「ただいま」。
疲れた日の「おつかれさま」。
嬉しい日の笑顔。
何でもない日の会話。
そんな小さな出来事を、ひとつずつ二人で重ねていく。
「ねえ」
「ん?」
「これから、どんな毎日になるかな」
彼女が指輪を見ながら尋ねる。
「分からない」
「なんだ、それ」
「でも……」
彼は笑った。
「君となら、楽しみだと思う」
彼女も笑った。
「私も」
夜の街を、二人は並んで歩いていく。
まだ見たことのない未来へ。
きっと、すべてが幸せな日になるわけではない。
それでも。
嬉しい日も。
悲しい日も。
笑った日も。
泣いた日も。
その一日一日を、二人で大切にしていく。



