【短歌】
目を閉じて 忘れたつもり だったのに 君の笑顔が 浮かんで消えぬ
【短歌をテーマにした物語】
「もう、忘れた」
そう思っていた。
仕事を終えた夜、私はベッドに横になり、部屋の明かりを消した。
静かな部屋。
窓の外を走る車の音だけが聞こえる。
私は目を閉じる。
眠ろう。
明日も仕事がある。
そう思った瞬間だった。
君の笑顔が浮かんだ。
「……まただ」
目を開ける。
暗い天井が見える。
私は小さく息を吐いた。
もう何年も経っている。
連絡先だって消した。
写真も処分した。
共通の友人から君の近況を聞くことも、最近はなくなった。
それなのに。
目を閉じると、君がいる。
翌朝。
カーテンを開ける。
朝の光が部屋に入り込む。
私はコーヒーを淹れながら、昨夜のことを思い出していた。
「どうして、今さら……」
自分でも不思議だった。
別れた直後なら分かる。
何度も思い出して、眠れない夜があった。
けれど今は違う。
仕事もある。
休日には友達と出かける。
新しい趣味もできた。
毎日は普通に過ぎている。
君がいなくても、私はちゃんと笑えている。
なのに夜になると、君の笑顔だけが戻ってくる。
その日の昼休み。
会社の窓から外を見る。
青空が広がっていた。
ふと、昔よく聞いた曲が近くの店から流れてくる。
私は立ち止まった。
胸の奥が、少しだけ痛くなる。
君を思い出す。
笑った顔。
話すときの声。
何気なくこちらを見ていた目。
どれも、記憶の中にしかない。
私は窓から目を逸らした。
「もう、終わったこと」
そう呟く。
自分に言い聞かせるように。
夜。
ベッドに入る。
昨日と同じように目を閉じる。
やっぱり、浮かんだ。
君の笑顔。
私は苦笑する。
「本当に、しつこいな」
もちろん、返事はない。
私は枕元のスマートフォンを見る。
君の名前はない。
連絡するつもりもない。
会いたいとも思っていない。
ただ。
あの頃の自分が、まだ心のどこかに残っている。
君と過ごした時間も。
笑ったことも。
泣いたことも。
全部、過ぎ去った日々だ。
忘れたつもりだった。
でも、忘れるというのは、消えてなくなることではないのかもしれない。
休日。
私は一人で近所の公園を歩いた。
ベンチに座り、空を見上げる。
子どもたちの笑い声。
犬を連れて歩く人。
風に揺れる木々。
平凡な景色。
その中に、君はいない。
当然だ。
私は君に会うつもりもない。
これから先も、偶然会うことがあるかどうかさえ分からない。
それでも。
空を見上げていると、ふと思う。
もし今、君がどこかで笑っているなら。
元気でいてくれたらいい。
幸せでいてくれたらいい。
それだけでいい。
私は立ち上がった。
もう、君を追いかける必要はない。
その夜。
布団に入り、目を閉じる。
また君が浮かぶ。
けれど、今日は少し違った。
私は笑った。
「おやすみ」
もちろん、君には届かない。
返事もない。
それでも、なぜか胸が温かくなった。
きっと私は、君を忘れられないのではない。
忘れなくてもいい場所に、君を置いたのだ。
だから明日も、私は自分の毎日を歩いていく。
君のいない道を。
それでも夜になれば、ほんの一瞬だけ。
目を閉じた私の心の中で、君は笑っている。
そして私は、その笑顔に「元気で」と心の中で告げる。
目を開ければ、そこには誰もいない。
けれど、それでいい。
会わなくても。
話さなくても。
君との時間は、確かに私の中に残っている。
目を閉じて 忘れたつもり だったのに 君の笑顔が 浮かんで消えぬ
【短歌をテーマにした物語】
「もう、忘れた」
そう思っていた。
仕事を終えた夜、私はベッドに横になり、部屋の明かりを消した。
静かな部屋。
窓の外を走る車の音だけが聞こえる。
私は目を閉じる。
眠ろう。
明日も仕事がある。
そう思った瞬間だった。
君の笑顔が浮かんだ。
「……まただ」
目を開ける。
暗い天井が見える。
私は小さく息を吐いた。
もう何年も経っている。
連絡先だって消した。
写真も処分した。
共通の友人から君の近況を聞くことも、最近はなくなった。
それなのに。
目を閉じると、君がいる。
翌朝。
カーテンを開ける。
朝の光が部屋に入り込む。
私はコーヒーを淹れながら、昨夜のことを思い出していた。
「どうして、今さら……」
自分でも不思議だった。
別れた直後なら分かる。
何度も思い出して、眠れない夜があった。
けれど今は違う。
仕事もある。
休日には友達と出かける。
新しい趣味もできた。
毎日は普通に過ぎている。
君がいなくても、私はちゃんと笑えている。
なのに夜になると、君の笑顔だけが戻ってくる。
その日の昼休み。
会社の窓から外を見る。
青空が広がっていた。
ふと、昔よく聞いた曲が近くの店から流れてくる。
私は立ち止まった。
胸の奥が、少しだけ痛くなる。
君を思い出す。
笑った顔。
話すときの声。
何気なくこちらを見ていた目。
どれも、記憶の中にしかない。
私は窓から目を逸らした。
「もう、終わったこと」
そう呟く。
自分に言い聞かせるように。
夜。
ベッドに入る。
昨日と同じように目を閉じる。
やっぱり、浮かんだ。
君の笑顔。
私は苦笑する。
「本当に、しつこいな」
もちろん、返事はない。
私は枕元のスマートフォンを見る。
君の名前はない。
連絡するつもりもない。
会いたいとも思っていない。
ただ。
あの頃の自分が、まだ心のどこかに残っている。
君と過ごした時間も。
笑ったことも。
泣いたことも。
全部、過ぎ去った日々だ。
忘れたつもりだった。
でも、忘れるというのは、消えてなくなることではないのかもしれない。
休日。
私は一人で近所の公園を歩いた。
ベンチに座り、空を見上げる。
子どもたちの笑い声。
犬を連れて歩く人。
風に揺れる木々。
平凡な景色。
その中に、君はいない。
当然だ。
私は君に会うつもりもない。
これから先も、偶然会うことがあるかどうかさえ分からない。
それでも。
空を見上げていると、ふと思う。
もし今、君がどこかで笑っているなら。
元気でいてくれたらいい。
幸せでいてくれたらいい。
それだけでいい。
私は立ち上がった。
もう、君を追いかける必要はない。
その夜。
布団に入り、目を閉じる。
また君が浮かぶ。
けれど、今日は少し違った。
私は笑った。
「おやすみ」
もちろん、君には届かない。
返事もない。
それでも、なぜか胸が温かくなった。
きっと私は、君を忘れられないのではない。
忘れなくてもいい場所に、君を置いたのだ。
だから明日も、私は自分の毎日を歩いていく。
君のいない道を。
それでも夜になれば、ほんの一瞬だけ。
目を閉じた私の心の中で、君は笑っている。
そして私は、その笑顔に「元気で」と心の中で告げる。
目を開ければ、そこには誰もいない。
けれど、それでいい。
会わなくても。
話さなくても。
君との時間は、確かに私の中に残っている。



