【短歌】
好きだった 過去形にして 笑うけど 胸のどこかで 君を待ってる
【短歌をテーマにした物語】
「好き『だった』んだよね?」
友人にそう聞かれて、私は笑った。
「うん。好き『だった』」
大学の講義を終えた昼下がり。
「じゃあ、もう未練ないんだ?」
「ないない」
そう答えながら、私はスマートフォンを確認した。
通知はない。
なぜ確認したのか、自分でも分からなかった。
その日の帰り。
私は駅前のカフェに入った。
窓際の席で就職活動の資料を広げる。
けれど、なかなか集中できない。
時計を見る。
午後六時。
またスマートフォンを手に取る。
何も届いていない。
「……何してるんだろ」
小さく笑った。
別に、誰かから連絡が来る予定なんてない。
それなのに。
夜、自宅で課題をしていると、スマートフォンが震えた。
画面を見る。
知らない番号だった。
『突然ごめん。元気?』
名前はない。
けれど、その文章を見た瞬間、誰なのか分かった気がした。
私はしばらく画面を見つめた。
返信するべきか迷う。
一度スマートフォンを伏せる。
けれど、また手に取った。
『元気だよ。そっちは?』
送信。
既読はつかなかった。
「……違う人だったりして」
そう呟いて笑った。
翌朝。
大学へ向かう電車の中で、スマートフォンを確認する。
やはり何もない。
昨日のメッセージも、送信したまま。
友人が隣から顔を覗き込んだ。
「何見てるの?」
「別に」
「なんか嬉しそう」
「気のせいだよ」
私はスマートフォンをしまった。
でも、口元は少し緩んでいた。
講義が終わった昼休み。
友人が言った。
「そういえば、あの元彼って今どこにいるの?」
「知らない」
「連絡先は?」
「……消したと思う」
そう答えた瞬間。
ポケットの中で、スマートフォンが震えた。
私はすぐには取り出さなかった。
なぜか、怖かった。
それでも、しばらくして画面を見る。
通知には、名前が表示されていた。
昔、登録していた名前。
『久しぶり』
その二文字だけ。
私は息を止めた。
「誰から?」
友人が聞く。
私は画面を伏せた。
「……昔の知り合い」
「へえ」
友人はそれ以上聞かなかった。
私はスマートフォンを握りしめる。
もう一度、画面を開く。
そこには、もう一件メッセージが届いていた。
『今度、会えないかな』
私はしばらく黙っていた。
返信欄を開く。
『うん』
そこまで入力する。
けれど、送信する直前で指を止めた。
消す。
そして、何も返さずに画面を閉じた。
その日の帰り道。
私は駅前のベンチに座った。
春風が吹いている。
桜の花びらが、一枚だけ膝の上に落ちた。
スマートフォンを見る。
新しい通知はない。
それでも私は、何度も画面を確認してしまう。
「……馬鹿みたい」
笑いながら、空を見上げた。
本当に彼からだったのか。
本当に会いたいと思っているのか。
それとも、ただ昔の記憶に心が揺れているだけなのか。
私には、まだ分からない。
ただ――。
スマートフォンを握る手だけは、なぜか離れなかった。
好きだった 過去形にして 笑うけど 胸のどこかで 君を待ってる
【短歌をテーマにした物語】
「好き『だった』んだよね?」
友人にそう聞かれて、私は笑った。
「うん。好き『だった』」
大学の講義を終えた昼下がり。
「じゃあ、もう未練ないんだ?」
「ないない」
そう答えながら、私はスマートフォンを確認した。
通知はない。
なぜ確認したのか、自分でも分からなかった。
その日の帰り。
私は駅前のカフェに入った。
窓際の席で就職活動の資料を広げる。
けれど、なかなか集中できない。
時計を見る。
午後六時。
またスマートフォンを手に取る。
何も届いていない。
「……何してるんだろ」
小さく笑った。
別に、誰かから連絡が来る予定なんてない。
それなのに。
夜、自宅で課題をしていると、スマートフォンが震えた。
画面を見る。
知らない番号だった。
『突然ごめん。元気?』
名前はない。
けれど、その文章を見た瞬間、誰なのか分かった気がした。
私はしばらく画面を見つめた。
返信するべきか迷う。
一度スマートフォンを伏せる。
けれど、また手に取った。
『元気だよ。そっちは?』
送信。
既読はつかなかった。
「……違う人だったりして」
そう呟いて笑った。
翌朝。
大学へ向かう電車の中で、スマートフォンを確認する。
やはり何もない。
昨日のメッセージも、送信したまま。
友人が隣から顔を覗き込んだ。
「何見てるの?」
「別に」
「なんか嬉しそう」
「気のせいだよ」
私はスマートフォンをしまった。
でも、口元は少し緩んでいた。
講義が終わった昼休み。
友人が言った。
「そういえば、あの元彼って今どこにいるの?」
「知らない」
「連絡先は?」
「……消したと思う」
そう答えた瞬間。
ポケットの中で、スマートフォンが震えた。
私はすぐには取り出さなかった。
なぜか、怖かった。
それでも、しばらくして画面を見る。
通知には、名前が表示されていた。
昔、登録していた名前。
『久しぶり』
その二文字だけ。
私は息を止めた。
「誰から?」
友人が聞く。
私は画面を伏せた。
「……昔の知り合い」
「へえ」
友人はそれ以上聞かなかった。
私はスマートフォンを握りしめる。
もう一度、画面を開く。
そこには、もう一件メッセージが届いていた。
『今度、会えないかな』
私はしばらく黙っていた。
返信欄を開く。
『うん』
そこまで入力する。
けれど、送信する直前で指を止めた。
消す。
そして、何も返さずに画面を閉じた。
その日の帰り道。
私は駅前のベンチに座った。
春風が吹いている。
桜の花びらが、一枚だけ膝の上に落ちた。
スマートフォンを見る。
新しい通知はない。
それでも私は、何度も画面を確認してしまう。
「……馬鹿みたい」
笑いながら、空を見上げた。
本当に彼からだったのか。
本当に会いたいと思っているのか。
それとも、ただ昔の記憶に心が揺れているだけなのか。
私には、まだ分からない。
ただ――。
スマートフォンを握る手だけは、なぜか離れなかった。



