御刀さまと花婿たち

 桜が咲いている。
 細かな雨粒に打たれながらも、満開に。
 その花びらは、青と紫が淡くにじんだ不思議な色をしていた。

『……らな……れば……』

 桜の木のかたわらに、青年がたたずむ。
 青年は桜とおなじ色の瞳をしていて、おなじ色の着物をまとっていた。

『……まもらな、ければ…………守らなければ』

 うわごとのようにつぶやいた青年は、立ち込める霧のなかにすがたを消す。
 あとには、一本の桜の木と、止まない雨音がのこされるだけ。

 ──さめざめと、桜が涙しているかのように。