御刀さまと花婿たち

「さてと、俺は日が暮れる前に帰るよ。同室の優等生クンがさびしくて泣いちゃうからなー」

 言いたいことだけを言って、葵葉は寮へ帰っていった。

(葵葉が言っていた『恋』って、なにかしら…………『恋』? そうだわ!)

 悶々とした気持ちで迎えた夕食の時間。
 ふと思いだすことがあり、鼓御前はひなへ問いかけた。

「ひなさん。つかぬことをおうかがいしますが……『恋』って、ごぞんじですか?」

 その瞬間、お茶の間に戦慄が走る。

「…………恋、でございますか?」
「え、えぇ……そうですが?」

 なんだろう。
 いつも夕食のときは和やかに談笑するひなが、急に真顔になった。

(わたし、また変なことを言ってしまったかしら……!?)

 鼓御前が焦りをおぼえるころ。
 静かに箸を置いたひなが、しばしの沈黙を挟み、こう口にする。

「鼓御前さま、このあと、お時間をいただけますか」
「は、はい……大丈夫です、けれど……」
「では、湯浴みが終わりましたら、私の部屋においでください。お話はそのときに」
「わかりました……」

 うなずき返しながら、鼓御前は内心気が気でない。
 思い返すかぎり、あんなに感情という感情をそぎ落としたひなを見たことがない。
 ほんとうにどうしてくれようか。冗談抜きに、まずい発言をしてしまったかもしれない。