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「やっと帰ってきたか、姉さま~!」
「……葵葉!?」
兎鞠神社へ帰り着くと、住居の玄関前で葵葉が待ちかまえていた。
ひなはまたかとため息をつく。
しっかりと茶は出しておいて最低限のもてなしはしつつ、さっさと夕食の支度に取りかかる。
居間にあがり込んだ葵葉は、鼓御前に抱きついて離れない。
「はぁ~、ひさしぶりの姉さまだ」
「学校で会っているでしょうに」
「昨日は会ってない!」
鼓御前もいまや学生だ。
葵葉はクラスメイト。
登校すれば当然顔を合わせる。
だが土日を挟むとそうはいかない。
しかも最近になって『特別授業』が入った葵葉であるから、なおさらだ。
「なにが楽しくて、立花センセと土日返上で特訓しなきゃいけないんだよ。なんか莇のやつも便乗してるし!」
「昇級試験のための、特訓でしょう?」
いまから二週間ほど前。
葵葉は千菊に呼びだされ、こう告げられたらしい。
「ちょっと二級の昇級試験を受けなさい」
葵葉は覡としては見習いだ。
そこから三級ではなく二級、つまり飛び級しろという無言のお達し。
清々しいほどの無茶ぶりである。
「きみも御刀さまのお付きの覡候補なのですから、がんばれますよね?」
本来脇差である鼓御前の覡としてふさわしい、二級の資格を取得しろ──
千菊の言い分としては、そういうことらしい。
そしてさらに葵葉を悩ませたのは、莇の存在。
ほかのクラスメイトたちが千菊の無茶ぶりに怯えるなか、「わたしもよろしいでしょうか!」と『特別授業』への参加を表明した。
二級昇級への条件のひとつに、『〝慰〟の討伐実績を有する』という項目がある。
これは一年生のなかで、葵葉と莇だけがクリアしている。
『鬼神』による『特別授業』──莇に関しては、純粋な向上心による参加表明だ。
しかしクラスメイトたちは「委員長って……ドMなんだな」と震えあがった、らしい。
「ていうか、寝ても覚めても莇が俺の視界にいるんだけど。もうあの顔見飽きたわ!」
「おれもだよ!」と反論する莇のすがたが目に浮かび、鼓御前は笑ってしまった。
「『喧嘩するほど仲がいい』……ですね。ひなさんが言っていました。葵葉におともだちができて、わたしはうれしいです」
「……むぅ」
葵葉は不服そうではあるが、否定はしない。
それほど、莇には気を許しているということだろう。



